坂東玉三郎特別舞踊公演2010/06/05 21:02

2010年6月5日 京都四条南座 午後2時開演 2階1列8番

1、地唄 「由縁の月」

幕開き、玉三郎が後ろ向きで立っている。背景は二枚の金屏風で覆われ、舞台には燭台が4本。ろうそくの周りに紙を回してあるので番付の写真とは違う。玉三郎の髪型と着物も写真とは違っていたと思う。背が高くて(それはいつもそうだが)、やけに腰の細い女に見えた。「雪」と同じく私の苦手なゆっくりした動きで、私の好きな玉三郎ではなかった。

2、長唄、義太夫「重恋雪関扉」

幕が引き落とされ、舞台には関兵衛の格好の獅童が座って木の枝を束ねたり片付けたりしていた。去年の藤良会で観た愛之助の関兵衛は酔った様子で杯と土瓶を持って出てきたが、あれとは違うなと思った。
舞踊というより芝居に重点を置いたもののように見えた。記憶の中にある愛之助の関兵衛と比べると獅童はとても頭が小さい。

しばらくして花道から玉三郎が出てきた。自分の席からは、まず玉三郎の頭が見えた。小野小町娘。番付の写真と同じ格好をしている。関兵衛が女を見て「いよーっ」と言う言い方がいかにも女の美しさに驚いたようで、客の笑いを誘っていた。

上手の部屋の簾が上がって、中に少将宗定役の隼人が座っていた。宗定が関兵衛に女を中に通すように言うと、関兵衛は「女とみると通してやれ、通してやれと~」とふざけた口調で言う。獅童は一瞬で客の気持ちをつかんでくれるので、観ていて気持ちが良い。

隼人は台詞はまだ稚拙だが、本格的な歌舞伎風の台詞まわしだ。追々うまくなっていけば良いのだ。玉三郎の目の前で一人で踊ったりして、本当に偉い。もう一生、怖いものなしだろう。獅童と玉三郎が引っ込んだ後、しばらくは隼人一人だけで舞台にいた。怯む様子もなく、きちんとやっていた。良い経験をさせてもらったと思う。鳥が片袖をくわえて飛んで来た。鶏の鳴き声がするとどうしても笑ってしまうのだが、隼人が「合点のいかぬ鶏の声」と言うと、客はもっと笑っていた。

そうこうするうちに、獅童が杯と土瓶を持って出て来て、隼人は上手の部屋に戻って簾が下がった。去年観た「関の扉」はここから始まったわけだ。しかし、この前に玉三郎と獅童が花道で踊ったときに獅童が杖をついた老人のような所作をしていたが、愛之助もあれをやったような記憶がある。

関兵衛がまさかりで上手の部屋の琴を割ると中から片袖が出て来た。

玉三郎の墨染が桜の木の中から出て来たときは、人外のものらしい、少し不気味な雰囲気があった。墨染が「色になってくれ」と言い、ここからが2人が絡んで面白いところなのだが、無念なことに睡魔に襲われて、気づくと獅童はぶっかえって大伴黒主になっていた。

獅童は関兵衛より大伴黒主の方が良いだろうと予想したのだが、意外に関兵衛の方が良かった。獅童はみてくれとと芝居は大変結構なのだが、踊りはどうも下半身が不安定。踊るために必要な筋肉がついていないんだと思う。

大伴黒主がまさかりを立ててその後ろに立っていたとき、獅童も去年の愛之助と同じように顔を描いていたと思うが、まさかりを外しても顔の化粧の違いはあまり明確に認識できなかった。それでも最後には青隈で口の中が赤い顔になって、玉三郎の墨染を追いかけて消えた。