舞の会 ---京阪の座敷舞---2011/11/27 02:35

2011年11月26日 国立劇場小劇場 午後1時開演

「雪」  楳茂都梅英

「ばいえい!」と声が掛かった。個人的に苦手な演目だが、上手、下手の上方に歌詞が出るのは鑑賞の助けになった。藤色の着物で、しっとりと色っぽい舞だった。最後に「大当たり!」と声が掛かったのできょうは掛け声かける人がいるのだと思ったが、この演目のときしかかからなかった。


「名護屋帯」 山村若有子

私は着物の約束事はまったくわからないが、その私の目から見る限り、すばらしい装いだった。赤が基調のモダンな模様の着物で、裏は白い水の模様が入った青。黒地の帯で、前後に舟の先の模様。髪型、帯締め、帯の前に下がっているストラップも含めて全体のバランスがよく、あれでランウェイを歩いてきたら高得点をつけるだろう。スタイリストがいるのだろうか。全部自分で考えるとしたら凄い。
観客に見せることを考えている人で、舞にもその気迫を感じた。


「屋島」 楳茂都扇性

左手を額の上にかざして下手から登場。矢の模様の金地の扇。ねずみ色の着物に、ごく薄いベージュの袴。

思いぞいずる壇ノ浦の、で足を踏み鳴らすと吉野山の忠信を思い出す。途中で、後見の愛一郎が下手から長刀をもって出てきた。長刀を受け取り、扇を口にくわえて、長刀を、時にはバトントワラーのように動かした。左手で扇を右手の方に投げ上げ、それを長刀で払い落とした。飛び上がったり、長刀をいろいろに動かしたりと全体に勇壮だが、静かさのある舞で、愛之助(扇性)は指の先の動きまで丁寧に踊っていた。最後に正座してお辞儀をするのが座敷舞らしいと思った。


「菊」 井上かづ子

お年を召した方だが、踊り始めた瞬間に舞の名手とわかる。短いがきりっとした踊りだった。

「善知鳥(うとう) 」   吉村輝章

最後を締めるにふさわしい大曲で、技術的にも一番上のような気がした。
プログラムによると、鳥を捕りつづけた罪で地獄に落ちた猟師が僧に救いを求める、というのがあらすじだ。衣装も、猟師が着るような衣をはおっている。途中で後見の吉村古ゆうが出てきて、この衣を半分脱がせて後ろで開いて見せるような動きがあった。

前に「紀尾井舞の会」で踊った「綱」は綱が馬に乗って羅生門に行く話で、馬を駆るような動作があったが、この舞も物語性があってパントマイムのような所作が多い。それがこの流派の特性なのか、大柄なこの人の好みなのかはわからない。

最後は、猟師が僧になり、合掌して幕となった。