新春浅草歌舞伎 2013 初日 第2部2013/01/03 15:11

2013年1月2日 浅草公会堂 午後3時開演 1階か列20番

「毛谷村」

はじめてイヤホンガイドを聴きながらこの芝居を観たので、今まで気がつかなかったこともわかった。

幕開き、六助(愛之助)と微塵弾正(亀鶴)が剣道の試合中。

愛之助の六助は、今まで観た六助の中で一番役にはまっている。いつもながら義太夫狂言はうまい。台詞が良いし、顔も動きも綺麗で、文楽のようだ。こういう役は身体に入ってるんだなと感じる。与三郎の時とは正反対。

お園の壱太郎は新妻役が本当によく似合う。華奢で可愛いが、色気がある。踊りの腕もあって、見せ場でしっかり客の目を引き付ける。永楽館で観た「引窓」のお早を思い出した。相手役が愛之助だし、お園の母お幸が吉弥なので、顔ぶれも同じ。

お園が抱えている子供が、お園が六助の話を聞いているうちにだんだん落ちていくシーンなど、面白くて客席も盛り上がっていた。

飯炊きをしようとしているお園を、六助が座敷の隅に立って眺めている姿も、包容力がありそうでなかなか良い。

杣斧右衛門の役が、ごちそうの海老蔵。情けない顔の化粧で、殺された母の敵をとってくれと言う。

斧右衛門の母の死体を見た六助は、微塵弾正が連れていた老女だと気づく。微塵弾正は、老母のために試合に勝たせてくれるように六助に頼み、六助は承知したのだった。
幕開きの剣道の試合の前の幕をやらないので、この辺の事情はわかり難い。

六助がいろんなおもちゃを使って子供をあやす場面はなかった。

「口上」

海老蔵の口上。きょうは睨みもあった。

「勧進帳」

最初に出てくる富樫の愛之助。期待したほど見栄えはしないが、台詞は期待通りうまい。

太刀持音若は部屋子になった市川福太郎。愛之助の本に載っていた千代丸の太刀持音若の写真のように可愛い。番卒は松之助、新十郎、仁三郎。

花道から弁慶一行が出てくる。最初に出てくる義経(孝太郎)。亀井六郎の松也は、この役が一番素の色男に近いかもしれない。片岡八郎の壱太郎は、これが四役目。口上以外全部出ている。顔の化粧が鬼の子供みたいで可愛い。駿河次郎は種之助。小柄だが男らしい。常陸坊海尊は市蔵。

海老蔵の弁慶は顔を見ていると、幸四郎の弁慶と同様に、いけすかない男に見える。勧進帳の読み上げのところもあれで良いのかなとは思うが、美声で華やか。台詞が不明瞭でも目と耳を引き付ける魅力がある。

富樫初役の愛之助は、冷静に自分のペースを守りながら、よく海老蔵の弁慶にくらいついていた。台詞は明瞭。声の高さには幅があり、ちょうど良かった。勧進帳を読んでいるときに弁慶にソロリソロリと近づき、気づいた弁慶がハッとする、スリリングな瞬間もはっきりしていて、客席が盛り上がった。弁慶と四天王、富樫と番卒たちが互いに睨み合ってジリジリと近づいていくところもよく対決感が出ていた。

最後、海老蔵の跳び六方はかっこ良くてスカッとした。

海老蔵が浅草に出るのは14年ぶり。口上のときに、その時の弁慶は緊張したと言っていた。私はあの時の勧進帳を観た。浅草歌舞伎の中ではあの舞台が一番印象に残っている。自分が終始心の中で「ガンバレ」と言いながら観ていたからだ。そういう気持ちで舞台を観ることがあることを、あの時はじめて知った。

きょうは顔の表情がよく見える席だったが、昼夜通して海老蔵は、幡随長兵衛のときに感じたような「人を小ばかにしたような」顔をしていた。眉と目の動かし方で、そう感じた。初めてこの人の舞台を観たのだとしたら、絶対に好感を持たないだろう。
そういう反感と、海老蔵のかっこ良さから来る爽快感が、きょうは同居していて複雑。

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