三月花形歌舞伎 初日 昼の部2013/03/03 17:19

2013年3月2日 新橋演舞場 午前11時開演 1階10列10番

「妹背山婦女庭訓」

鱶七の松緑、橘姫の右近は、ルテアトル銀座で玉三郎がお三輪をやったときの配役と同じだ。

去年の松竹座と同じく、三笠山御殿のみ。階の左右に控える荒巻弥藤次は歌昇、宮越玄蕃は萬太郎。

松緑は相変わらず「~でー」のように語尾が伸びてしまらない。 動きは綺麗なのだが。 床から飛び出してきた二本の槍を交差させて枕にして寝るとき、二本の槍が作る角度のように腕を伸ばして、拳を持ち上げている形とか。

求女の役は亀三郎。女形の笑三郎や新悟より、私には恋人役として受け入れやすかった。「心底読めた」と膝を叩くところは、ややメリハリが不足しているように思う。

苧環を持って、求女を追って来たお三輪役の菊之助が現れると、それまで舞台にいた役者に比べて抜群の安定感があり、舞台が引き締まる。

「この糸が切れくさって」と苧環を叩いても客席に笑いは起きない。去年の九月の七之助のときも同じだった。あの時は前の幕がないせいだと思ったのだが、前の幕があったとしても同じなのかもしれない。苧環を叩く一瞬に「んー、何よ、バカっ」みたいな客の心をくすぐる表情を作れるのは玉三郎だけだ。

豆腐買いのおむらは團蔵がやるような役なのか。被っている着物をとって顔が見えても客席が沸かなくて気の毒。

菊之助はうまいが、憐れさを感じなかった。ニンの問題なのだと思う。基本的にとてもしっかりしている人に見えて、御殿で官女達に「誰じゃ」と言われて「はい~」と答えるときもそんなに心細げには見えない。官女に苛められても、どうにか切り抜ける才覚がありそうに感じる。だから最後に泣き崩れても、まだ苛められ方が足りないと思ってしまう。

奥からおめでとうございますという声が聞こえ、花道のお三輪は「あれをきいては」と髪を振り乱し、「凝着の相」となる。これ以降の方がニンに合っている。

お三輪は、奥から出てきた鱶七に刺されて死ぬ。前の人の頭で上手の菊之助の姿が見えない瞬間があったので気づいたのだが、苦しさにあえいでハァハァいっている息が男のものに聞こえた。台詞の声は女に聞こえるのだが。

「暗闇の丑松」

冒頭、近所の家の窓が開いて、お熊(萬次郎)の家から悲鳴が聞こえる、と人々が囁きあっている。 この芝居は、こんな風に家が立て込んでいる浅草の様子とか、銭湯の釜場の様子が見られるのが面白い。

娘のお米(梅枝)を妾奉公に出そうとしているお熊。萬次郎にうってつけの役だ。

梅枝は浅草の家の二階の場もうまいが、板橋の女郎屋で丑松(松緑)に語りかけるあたりが、すごい。若いのに安定しているとかのレベルを遥かに超えた出来で、苦労した大人の女の情感を出している。

四郎兵衛(團蔵)の女房のお今は、高麗蔵。 高麗蔵はクールビューティーだから、こういう役だと怖い。

丑松役の松緑は全体に台詞が単調。出刃包丁をもって四郎兵衛を追っているときと、四郎兵衛を殺した後、ふらつきながら花道を引っ込むときの動きは良かった。花道に近い席だったので、花道の上を左に寄ったり右に寄ったりしながらふらふら引っ込んでいく足がよく見えた。

女郎屋の中で料理人の祐次(亀寿)に追われて押入れ上段に隠れる熊吉(歌昇)、その友達の八五郎(萬太郎)、四郎兵衛の家の料理人役で廣太郎、廣松など、若い役者がたくさん出ているのは楽しい。

銭湯の釜場で大活躍の番頭役は咲十郎だった。

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