至高の華 道成寺二題2013/08/09 23:01

2013年8月9日 大阪フェスティバルホール 午後6時開演 1階2列21番

「お話 道成寺縁起 絵とき」

道成寺住職の小野俊成さんによると、道成寺の舞台を観るのは仏様に手を合わせるのと同じで、道成寺を舞うのはお経を上げるのと同じだそうだ。きょう、梅若玄祥は大阪での舞い納めで、藤間勘十郎は初めて踊るという。
小野さんが、絵巻物「道成寺縁起」を台に置いて広げ、ときおり紙を巻いて新しい箇所を見せながらお話をしてくれる。雰囲気的には紙芝居のおじさん。小野さんは上手寄りにいて、真ん中のスクリーンに拡大した画が映るが、スクリーンは白黒。絵巻物はカラー。
初めてちゃんとお話を聞けて良かった。日高川が出てきて、ああ、ここから「日高川」という演目ができたのだ、と思った。

「長唄 京鹿子娘道成寺」

下手から種之助が「きいたかきいたか」と言いながら出てくる。「きいたぞきいたぞ」と続くのは米吉、廣松、梅丸。みんな袴姿だ。4人の役は「強力」。勘三郎が踊ったときに勘十郎と2人で作った演出だとプログラムに書いてある。

4人が正面を向いて並んで順に台詞を言う。私の正面あたりに梅丸が立っていた。廣松が綺麗になった。年頃だもんな。

白拍子役の勘十郎は下手から出てくる。着物が藤色で袴は紫と言って良いのか、よくわからないが、両方ともくすんだ地味目の色。

きょうは前過ぎて足先が見えないのが残念だが、繊細な指の動きがよく見えた。やわらかい上半身の動きと女らしい指の動き。決して細く長い指ではないのだが、美しい動きだ。時々聞こえる足拍子が良い。

途中で勘十郎がいなくなって、4人が踊る。4人とも踊りがうまい。

再登場の勘十郎は手ぬぐいを持っていて、恋の手習いを踊る。しなやかな動き。

鈴太鼓の踊りの後、白拍子は上手にある鐘の中に入って姿が見えなくなる。

しばらくして鐘の中から現われたときは白い着物に薄いグレーの袴。打杖を手にしている。

手を合わせた姿の4人の強力と打杖を持った白拍子の立ち回りがある。白拍子を真ん中に、4人が四角形を作るような形で囲むときもある。

最後は、白拍子は鐘の上に上り、打杖を持ち上げ、鱗模様の布を見せて決まる。強力たちはそれぞれ数珠を手にした形で決まる。

素踊りだから華やかさはないが、きびきびして若々しい道成寺だった。

「能 道成寺」

シテ 前シテ 白拍子、後シテ 蛇体 梅若玄祥
ワキ 道成寺の住僧 福王茂十郎、福王知登、喜多雅人
アイ 能力 茂山七五三、茂山逸平

能と歌舞伎の同演目を比較すると、今更ながら歌舞伎は娯楽性が高いものだと感じる。道成寺は三番叟よりも違いが大きい。能の道成寺は、きょう初めに聞いた「道成寺縁起」の娘の執念が終始前面に出ている。

「花のほかには松ばかり」という歌が能にもあるが、シテが自分で歌う。
白拍子が鐘に近づいて最後に烏帽子を外すのは歌舞伎と同じ。ただ歌舞伎のように上にかけるのではなく、下に落としていた。

鐘は、前の演目と同じものが同じ位置に置いてあり、白拍子はその中に姿を消す。梅若玄祥が鐘の下に立ったら後見の人が玄祥の身体を動かして位置を調節していた。面をつけていると正確な位置がわからないのだろう。

アイの逸平は初めから出ていたが、白拍子が隠れたら七五三が出てきた。顔も似ているが、体型が似ているのが印象的な親子だ。

白拍子は蛇体になって鐘の中から現われる。鱗模様の着物に変り、面も変る。打杖を手にしている。

住僧たちは悪霊退散というように、蛇体に向かって両手をすり合わせて数珠を鳴らす。結局、蛇体は力尽きて、橋掛かりに見立てた下手の方に静かに消えていく。蛇体の勝利宣言のように見える歌舞伎の最後とは全然違う。

この能を見て、前の演目の演出は能からとったものとわかった。強力は4人で数は違うが、住僧と同じく、打杖を持った蛇体と戦う。

コメント

_ おめで鯛 ― 2013/08/10 22:43

大阪までお出かけだったんですね。
扁桃腺を腫らした揚句に、蚊取り線香のブリキの線香立てを踏んで、何日か沈没していましたので、うらやましい限りです。

素踊りと能で道成寺とは、なんと素敵な組み合わせなんでしょう!!  同じ日に見られるなんて。
大阪の和泉市に7年ほど住んでいた時、道成寺に行って桜を見たことがあります。「う~~ん、ここが舞台かぁ・・・・・」。もう少し耳が良ければ、長唄が聞こえたでしょうに。

_ 東京ローバ ― 2013/08/11 11:53

おめで鯛さま、こんにちは
夏風邪は直りにくくて大変ですが、もう大丈夫ですか?
私も大阪までは行きましたが、暑すぎてしばらくは外出
したくないです。

素踊りと能で道成寺、本当に素晴らしかったです。あの親子ならでは。
勘十郎さんの道成寺目当てで、あとはわりと付けたしだったんですが、
道成寺縁起のお話をきかしてもらって、素踊り、能と続けて観ると
比較によって物事が立体的に見えてくるというか、個々別々に観る
ときとは感じ方が違います。本当にありがたかったです。

道成寺いらしたんですか。うらやましい。前に歌舞伎関連のセミナーの
ときに、話をされた方が「道成寺行くとおもしろいですよ」と言われたんですが
東京からだと遠すぎる感じがして。でも、ぜひ一度行ってみたい。
そうか、桜の季節がねらい目ですね。

_ おめで鯛 ― 2013/08/13 00:19

お返事を、ありがとうございます。

時蔵さん、三津五郎さんの胡蝶は、もうありえませんねぇ・・・・。

道成寺は、東京からは遠いですね。わざわざ、道成寺だけというのでは行きにくいところです。
近くの由良には、普化宗の本山、興国寺があります。尺八の催しでもあれば行ってみる甲斐があるかも知れませんが。
湯浅の金山寺味噌というのも・・・。本場物は確かに甘すぎず、おいしかったです。
和歌山市内には、ドアが完全には閉まらないようなバラックだけど、抜群にうまいラーメン屋もあります(笑)。牛ではなく、食い物に惹かれて道成寺・・・・なんてね。

9月には、歌舞伎と文楽が待ってます。少しでも涼しくなってくれるよう、祈ってます。

東京ローバさまも、暑い中、ご無理なさらず、ご自愛くださいませ。

_ 東京ローバ ― 2013/08/22 02:21

おめで鯛さま

道成寺は、やっぱり行きにくいところなんでしょうね。

食い意地はかなり張ってますが、食べ物にひかれて
遠出はあんまりしませんねえ。やっぱり、玉三郎が出るとか、
そういうのが一番勢いがつきます。

八月下旬になり、今夜は雨の後かなり気温が下がって、
辛い時期もあともう少しかなと思います。

私も9月の歌舞伎がとても楽しみです。

_ おめで鯛 ― 2014/04/29 18:26

ご無沙汰してます。
NHK教育TVで喜多流の道成寺を見ました。能の道成寺は初めてです。萬斎と弘忠の名前があったので、録画しておきました。
能に萬斎がアイとかで出るというのも、へぇーそうなんだというくらいの知識しかありません。粟谷さんも存じませんでした。
以前、ローバさまがお書きになっていたので、随分違うものだろうとは予想していましたが。蛇体になって引き際に、柱にからむ様子には、ぞぞっときました。生で見てみたいですねえ。
ぐっすり寝てしまったりして(-.-)Zzz・・・・
弘忠さん、凄く破壊的な顔をなさって、怖かった。
萬斎さん、能の舞台では、こんな風なんですね。
生の能は、二度程しか観ていないので、テレビとはいえ、とても良かったです。演目のあとの解説も、28年ぶりの再演のための工夫が語られて、面白かったです。

_ 東京ローバ ― 2014/05/13 04:16

おめで鯛さま、こんにちは

テレビでやっていたんですか。
気がつきませんでした。
一年前に見たものは、自分のブログでも見ないと何も思い出せませんが、能の道成寺は女の情念が前面に出て怖いですよね。
私も能はあまり見る機会がないし歌舞伎より「抽象的」なので、解説の方が面白かったりします。

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