七月大歌舞伎 初日 夜の部2015/07/05 00:07

2015年7月3日 歌舞伎座 午後4時半開演 1階12列7番

きょうは花道のすぐ横で、熊谷の引っ込みも伴蔵の最後の引っ込みもこちらに来る姿がよく見える、良い席だった。

「熊谷陣屋」
これは苦手な演目で、何度も観ているが途中で睡魔に襲われることが多く、話の筋が頭に入ってこない。海老蔵のような、引きこまれて見てしまうような人が演じてくれるのは助かる。今回は相模役の芝雀もよくて芝居に集中できたので、初めて一通りの筋がわかった。

出てきて七三に立った海老蔵の横顔を見たら團十郎に似ている気がした。もっとじっと見ると、ものすごく良い顔立ちなんだということがわかった。
「急所だとしたら悲しいか」などと息子の話をする熊谷と相模のやり取りが、意外に夫婦らしく見える。
海老蔵は敦盛の最期の様子を語るときは目を剥いてばかりで台詞が弱い。最後、出家した姿で舞台から花道に向かうときの足取りが、なんとなく「これは違う」感じがする。しかし、最後の花道での台詞と所作は良くて感動できる。
芝雀は、息子の首を見たときの驚きと悲しみの様子がよくわかり、かつ自然で、いつもながら情の深さを感じる。打掛けの模様の中の青緑の色が綺麗だ。

義経は梅玉。首を差し出す熊谷のハイテンションと、義経の冷めた雰囲気の対比が面白かった。四天王は巳之助、種之助、廣松、梅丸と若手がそろう。最近女形が多い廣松、梅丸の立役の声が新鮮だ。廣松の声は廣太郎に似ているかもしれない。

元薪車の九團次が堤軍次という大役で驚いたが、ちゃんとやっていた。

「牡丹燈篭」

今回は飯島家の話、つまりお露の父の妾お国とその愛人の源次郎が父と腰元を殺し、殺した腰元の妹がお国と同じ店に勤めていた話はカットされていて、お国は伴蔵の浮気相手としてだけ出る。

前回お国役だった吉弥は乳母の役。幽霊になってからが秀逸。お露は玉朗。新三郎は九團次。

玉三郎のお峰はいつも通り。中車の伴蔵は、背も玉三郎より低いし、可愛いので、年下亭主の雰囲気。
伴蔵がお峰に蚊帳を吊ってくれと頼み、お峰がつり始めたら、蚊帳用の紐のうち、客席側のがほどけてしまって、お峰が伴蔵に助けを求めた。中車が背伸びをして必死に直そうとしている様子が面白かった。二人でどうにか直し、伴蔵は「俺がつってんじゃねえか」と捨て台詞を言った。

中車の伴蔵は悪くない。仁左衛門と比べれば下手。これは歌舞伎がどうのという話ではなく、仁左衛門は語りがなにしろうまい。最初に観た「桜姫東文章」の権助の幽霊話もそうだが、この芝居の中でも、上野の山の鐘がゴーンと鳴ると・・・あたりからの語りが、誰と比べる必要もなく滅法うまい。中車の語りは、ゴーン、シーン、カラーンコローンのような擬音語の際立たせ方が足りないと思う。

北村和夫や仁左衛門は、伴蔵が関口屋の旦那になって、笹屋の女たちといっしょに花道から出てくると、ああ、立派になった、と感じた。中車は、前の幕までの伴蔵の衣装が変わっただけにしか見えない。これは単なる役者の持ち味の違いで、北村和夫や仁左衛門はいわゆる「旦那」の方が素に近いのだろう。中車の方が伴蔵らしいとも言える。

関口屋の旦那になってからの伴蔵が最初に登場するのは今回は花道ではなく、その前に笹屋の座敷でお国(春猿)といっしょに出る。この場面は今までの牡丹燈篭にはなく、飯島家の話をカットしたので、必要な部分をお国に語らせるためだろう。

お峰が馬子の久蔵に笹屋のお国の話をきいた後、遅く帰って来た伴蔵にプリプリした態度をとって諍いになるところは、相変わらず面白い。前回は、この幕の後にもう一幕あって、そこで伴蔵がお峰を殺した。今月は、眠っていたお六が乳母の幽霊のようになって出て来た後、お峰がお露の幽霊になり、それを伴蔵が殺す。そして、牡丹燈篭を追いながら中車が花道を引っ込む。膝を折って何回かつまづくような感じで進むのは中車にとっては大変だろうと思うが、頑張ってやっていた。

前回は、前の幕では仲良さそうだったのに次の幕で殺しちゃった、という唐突さがあったが、今月はその疑問はない。悪くない終わり方だと思う。

私の好みでは、もちろん玉三郎の相手は仁左衛門にやってほしいし、お国と源次郎のシーンは幻想的で美しいのでカットしないでほしい。しかし、中車の伴蔵は良いので、また相手を変えてやれば良いと思う。その時は時間があれば飯島家の話も普通にやってほしい。

円朝役の猿之助のしゃべり方は、落語家のしゃべりを模倣しようとしているのかもしれないが、まだ安定しない感じがする。

馬子久蔵役の海老蔵も良かった。海老蔵の汚れ役は何回か見たことがあるが、いつも真面目にやっていて感心する。

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