八月納涼歌舞伎 1部2015/08/07 18:26

2015年8月7日 歌舞伎座 午前11時開演 1階16列39番

「おちくぼ物語」

見ている途中で、何十年も前にテレビで、この芝居の舞台中継を観たことがあるのに気づいた。帯刀(巳之助) が阿漕(新悟)の話をきいて「そこまで見たか」と言う台詞と、三日の餅のときにおちくぼ(七之助)が「よそでたびたび」と言うのを覚えていたからだ。役者が誰だったのか覚えていないが、歌舞伎ではなくて、男女が出ていた。新派の上演でもあったのだろうか。

左近少将役の隼人の貴公子ぶりが素晴らしい。お伽噺のような他愛もないわかりやすい話で、個人的には、左近少将が王子様に見えさえすれば合格。うまくはないが、おちくぼとの会話の雰囲気で、隼人も大人になったなあと感じた。若くてきれいな人を見るのは楽しい。

家来筋の帯刀(巳之助) と阿漕(新悟)がすごくうまいのが、「もとの黙阿弥」とかぶる。

牛飼の童三郎役の国生が「自分は子どもではない」と主張する、実年齢に合った役でなかなか良かった。

「棒しばり」

いろいろ思い出した。昔、勘九郎と八十助で観た棒しばり。一昨年の納涼での三津五郎と勘九郎。

一昨年は三津五郎が次郎冠者だったが、今年は勘九郎が次郎冠者。巳之助との組み合わせでは当然だし、三津五郎との組み合わせでも勘九郎が次郎冠者の方が楽しかったろうと思う。

酒を飲んだ後、太郎冠者に促されて踊り出す最初のときはおどけた動きで、勘三郎の丸みを帯びた愛嬌が目に浮かんできて辛い。その後、また促されて踊る二回目の方が勘九郎に合っていて見ていて楽しい。腕を棒に縛り付けたままでくるくる回るような動きは手足の長い勘九郎の方が勘三郎より見映えがするかもしれない。開いた扇を放って受けとるのに成功し、ほっとするのか、その後の踊りが生き生きとする。

巳之助は頑張っていた。縛られたままで踊る見せ場は去年の壮絶にうまかった勘九郎とは比べようもないが、よく踊っている。主人(弥十郎)が帰って来たときに「全然酔ってません」と言う台詞は三津五郎より好きだ。三津五郎の太郎冠者はたった一度しか観たことがないが、最後に主人を蹴ろうとする格好がとても印象に残っている。巳之助も蹴る格好はするが、ビシッと決まってなくて印象が弱い。