歌舞伎座 四月大歌舞伎 夜の部 ― 2006/04/16 23:17
2006年4月16日(日) 午後四時半 開演 一階7列37番
「井伊大老」
たぶん桜田門外の変の前日の話。井伊大老(吉右衛門)は娘の命日なので母である側室お静(魁春)の家を訪れる。線香をあげる井伊の背中にうるっとするのは吉右衛門の演技力が原因ではなくただ娘をなくした父親が気の毒だと思うからだろう。雛飾りが美しく、もっと近くの席で見たかった。
お静は「かわいい女」という設定だが、一人娘を亡くした後でもあいかわらず正室に対して嫉妬してる女は男からはかわいいのかもしれないが女から見ると共感できない。
「口上」
歌右衛門追善の口上。菊五郎の、「『音羽屋』と言われたのでまた何か叱られるのかと思ったら、『という風に大向こうがかかるようにやるんだよ』と言われた」という声色をまじえた口上が粋だった。
「時雨西行」
感想なし。わからなかった。
「伊勢音頭恋寝刃」
浪花花形とは違い「油屋」「奥庭」の場だけ。 お岸の勘太郎は女形の声が優しく、姿が綺麗だ。特に後姿が綺麗。万野の福助は、声がしただけで近くの席にいた人が笑った。かなり老けた作りで、声もかなり年配の女風にしていたが、いつもの福助の年齢のままで十分な役なのではないかと疑問に思う。不思議なことに、台詞の内容を考えずただ貢と万野を見ていると、貢が万野の話を「ふんふん」と聞いてやっているようにも見える。役者の実際の姿が反映してしまっているのか。福助の万野は下品だ何だと批判はあるが、そんなにひどいとは思わない。まあおもしろいし、つまらないと感じさせる人よりは批判はあってもいろいろやって見せてくれる人の方が将来性があるのではないかとも思う。
お鹿の東蔵は、浪花花形のときの翫雀ように顔を作っていなくて、むしろ自分の素顔で勝負しているようだった。懐紙を丸めてポーン、はやらなかった。お紺の時蔵は何しろ綺麗。出てきたときの台詞「貢さん、きつーう、派手なことなあ」の「きつーう」を浪花の孝太郎は言わなかったが時蔵は言っていた。浪花のときは席が中央でお紺の表情はあまり見えなかったが、今回は上手の端の方の席だったので貢がお鹿やお紺とやり取りしている間、お紺の表情をずっと見ることができた。油屋でナンバーワンの女郎お紺で貢の恋人、であることが十分納得できる美貌。話の内容に応じて表情も微妙に曇る。
仁左衛門は、いつもの貢、という感じ。そっくりさんの愛之助を見た後なので、ああ、これが本物なんだと思いながら見た。話自体が特に好きではないので、仁左衛門が出るからと言って感動するわけではない。
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