東京国際映画祭 「Beauty うつくしいもの」2007/10/22 22:23

2007年10月22日 午後6時50分開始 TOHOシネマズ六本木ヒルズ5 F列23番

(映画のあらすじ) 昭和10年、伊那谷で木地屋の祖父(井川比佐志)と暮らす半次(高橋平)は雪夫(大島空良)が村歌舞伎の舞台に立つのを見る。雪夫は半次も歌舞伎をやれと言って扇をくれる。梅川役の歌子の急病のため、半次は雪夫の相手役として女形をやることになる。二人は村歌舞伎で「新口村」を演じる。そのまま毎年二人で踊って七年後になる。半次(片岡孝太郎)、雪夫(片岡愛之助)、歌子(麻生久美子)の3人は仲良しで、雪夫と歌子は好き合っている。そんなある日、半次と雪夫に召集令状が来る。生きて帰れるかどうかわからないので、雪夫は歌子に愛を告白するのをためらう。出征前のおなごり公演で、半次、雪夫、まさお(嘉島典俊)は絵本太閤記を演じるが、客席の家族たちから「死ぬな」と声を掛けられてまさおが泣き出し、幕がしまる。化粧はそのまま軍服に着替えた3人が舞台の上で観客に敬礼する。

戦後、シベリアに抑留された3人のうち、まさおは肺炎で死ぬ。雪夫も伝染病のため酷い咳で起き上がれなくなる。雪夫は、隔離のために連れ出される前に密かに書いた遺書を、半次に手渡す。橇で運ばれていく雪夫を半次は収容所の門で見送る。雪夫は、家族に伝える言葉を半次に託す。何日か経って、半次は収容所の仲間から雪夫が墓地に埋葬されたと聞く。やがて日本に帰れる日が来たが、同郷の友二人を失った半次の内心は複雑だった。

村へ帰った半次は、祖父が既に亡くなったことを知る。やって来た歌子に、半次は雪夫を連れて帰れなかったことを詫びる。歌子は雪夫が好きだったと言い、半次は雪夫も歌子を愛していたという。これからは2人で3人をやろうと約束する。半次は、上着に縫いこんで隠し持ってきた雪夫の遺書を持って雪夫の家に行き、遺書を渡し、家族の一人一人に雪夫からの言葉を伝える。

木工所で働くようになった半次は立役としてまた村歌舞伎に出るようになる。女形のかわりに歌子が相手役をやる。ある日、村人が食堂で雪夫に似た男を見かける。半次は、盲目の役者がいて、その役者が半次の村に伝わる歌舞伎を演じるという噂を聞く。実は雪夫はシベリアから生きて帰ってきていた。満州時代に上官の命令で満蒙開拓団に投げた手榴弾のために目が傷つき、そのために盲目となった。雪夫がそっと様子を伺いに来た村歌舞伎では、「袖萩祭文」をやっていた。歌子が袖萩、半次が兼杖を演じていた。半次は雪夫に会いに行くが、雪夫は人違いだと言う。雪夫は実は病のため余命いくばくも無い体だった。半次は、村歌舞伎の演目を「新口村」に変更し、自分は久しぶりに女形の梅川をやることにし、雪夫に忠兵衛の役を頼む。雪夫は断ったが、最後まで待っていた半次のもとに現れ、2人で久々に梅川忠兵衛を演じる。芝居の最後に雪夫が倒れる。

40年後、村歌舞伎では半次の引退興行が行われる。演目は、かつて雪夫が踊った「天竜恋飛沫」。この日のために衣装を新調したにもかかわらず、半次は雪夫が着た衣装で踊ると言い張る。今や足元もおぼつかない半次は、大きすぎる雪夫の衣装で踊りの途中で袴が脱げてしまうが、そのまま踊り続ける。

(舞台挨拶)

上映後の舞台挨拶に出たのは監督の後藤俊夫、孝太郎、嘉島典俊、子役3人、それに雪夫の妹役の女優。順番に話した後、下手に並んでプレス向けの写真を撮っていた。

半次の子供時代の高橋平君はキリリとして美少年で気に入ったので、舞台挨拶で生を見られてとても嬉しかった。タイラ君が「女形は立役より背が高くてはいけないので膝を折らないといけない」というと孝太郎がウンウンと頷いていた。「そうやって歩くのが大変だった」というと、隣のソラ君がひじでつついた。雪夫の子供時代の大島空良君がすごかった。「どこの事務所にも属してない、素人」というのがまず驚き。そして、「僕にはたくさんのアレルギーがあります。食べ物アレルギーと子役アレルギー」なんてことを言うのだ。次に歌子の子供時代の女の子が「皆さんに感謝しています」と言ったら「どういたしまして」と受けていた。ソラ君は撮影途中で入院したらしい。それでも使い続けた理由がわかる。

(感想)

美しい伊那谷の四季をとった映画なのだが、ハイビジョンを見慣れた目で見ると、画面がややぼやけて見えて、「風林火山」の景色の方が綺麗だと感じてしまうのが残念だ。自分にとって、この映画の最初の魅力は高橋平君の美少年ぶり。愛之助の少年時代かと思ったら違っていた。雪夫の少年時代を演じた大島空良君は、顔は個性派だが演技を買われたのかと思ったので、舞台挨拶で全くの未経験ときいて驚いたのだ。少年の半次が女形になったとき、「さらばわが愛」の京劇の女形の少年を思い出した。あれはプロだが、少年が女の役をやるときの気持ちはどんなものなのだろうか。この2人の「新口村」をもう少し長く見ていたかった。

少年時代と大人になってからが、顔の連続性もないが性格的にも逆になったように感じる。少年時代は雪夫の方が積極的。大人になると雪夫が大人しくなり、特に戦後は暗くなる。

二時間足らずの映画なので、満蒙開拓団のエピソードは入れないで、もう少し村芝居自体の戦後の苦労を掘り下げたほうが面白かったと思う。主役の半次の役はわかり易い。一方、監督が新たに詰め込みたくなったテーマを一手に引き受けたのが大人になってからの雪夫の役のような気がする。そのせいもあってか、愛之助は歌舞伎のシーンは良いが普通のシーンがあまり良くない。孝太郎はとてもうまい。

最後の半次の踊りが素晴らしかった。

コメント

_ yamato です ― 2008/05/13 22:10

突然の書き込みですみません
長野の地元民ですが先行ロードショーで観ました
確かにもっとすっきりさせた方がいいところもありましたが
半次を演じられた考太郎さんの老いてからの演技がすばらしかったです・・特に引退興行で踊られた『天竜恋飛沫』は凄かった
観劇しました・・
先行ロードショーと言うことでプログラムに監督のサインを戴きまして、友人ともどもラッキーな一日でした

_ wonwon50 ― 2008/05/17 21:23

yamatoさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
半年前に見た映画なのになかなか語り合える人がいなかったんですが、先行ロードショーもあり、この映画を見た人が増えてきて嬉しいです。
『天竜恋飛沫』は迫力ありましたね!孝太郎さんは素晴らしかったと思います。
監督さんのサインいただけてラッキーでしたね。
私が行ったときも監督さんの挨拶はありましたがサインもらうチャンスはなかったんですよ。

_ magudo ― 2009/03/20 03:08

銀座で見ました 愛之助様の舞台挨拶を拝見できてラッキーでした♪

戦争と平和 過去の清算 非常に考えなければいけない内容だと思う反面 成長する過程の描写がかなり省かれていたような気がします

主役さんたちの 少年時代
子役さんの描写がもっとあれば・・・共感できるような

でも、愛之助さんの子役を演じた少年

菅健太さんに似ていたように思うのは

私だけ??

突然の書き込み失礼しました

_ wonwon50 ― 2009/03/22 03:31

magudoさん、こんにちは。私も愛之助さんの舞台挨拶見ました。映画も見たかったんですが歌舞伎座の昼の部のチケットを買ってあったので、歌舞伎座の方に移動してしまいました。

愛之助さんの子役時代のソラ君は個性的でしたね。

私も、戦後の話を少し短くして、少年時代の村芝居の稽古風景をもっと見せてほしかったです。

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