通し狂言 義経千本桜2010/09/14 23:59

2010年9月13日 南座 午前11時開演 2階1列10番

「鳥居前」

海老蔵は予想通り良い。弁慶より強そうだ。「くれめぇーかぁー」というような台詞に、団十郎の名残があるが、美声で、コントロールさえできるようになれば素晴らしいだろうと思う。


静御前の壱太郎は可愛くてとてもお姫様風。白拍子でも、お芝居ではお姫様風なのね。

「渡海屋大物浦」

典侍局の玉三郎を見るのは2回目だ。今回は洗濯のしゃべりがなかった。いよいよ銀平が知盛の姿で出てくる時に、あれ、今回はないのか、と驚いた。

海老蔵の知盛は、前回の歌舞伎座では失望したが、今回はあの時ほど力まかせではなく、良くなっていた。しかし、銀平が相模五郎と入江丹蔵を捕まえて言い聞かせるところは、仁左衛門や獅童ほどはかっこ良さを感じない。

相模五郎の亀三郎と入江丹蔵の亀寿の兄弟は、2人とも口跡が良い。いっしょに出てくると体型が似ているのがわかる。亀三郎は、ご注進で踊るところはやや不安定だったが、魚づくしは口跡の良さが生きていた。亀寿は、最後に敵もろとも自分の腹を射して海に飛び込むところが、上から観たせいか、決まっていなかった。


「吉野山」

歌舞伎座で観たとき、寿命が延びる心地がした。

静が花道ではなくて、舞台奥から出てくるのが気に入っている。舞台上の桜の木の大きな描き割りが二つに分かれて、吉野山の美しい風景が広がった。舞台後方から前に歩み出てくる静の玉三郎も綺麗。真ん中に立ったのを見ると、六十歳でも本当に綺麗だと思う。


すっぽんから現れる忠信の海老蔵も綺麗。海老蔵は、踊りは勘太郎の足元にも及ばないが、やっぱり顔が綺麗。玉三郎といっしょに踊り出すと舞台は実に華やかになる。

今回は、狐の人形を遣うのが薪車だった。薪車は最近観る機会が滅多になく、最後に観たのは去年の永楽館で、次に観るのも永楽館かと思っていた。