セルリアンタワー能楽堂 平成二十四年 正月公演2012/01/02 00:53

2012年1月1日 正午開演

ここ数年、元旦はこの公演に行くのが恒例になった。

「祭り囃子」
傳次郎の太鼓、笛の人、それに中太鼓、鉦担当の人の4人で何曲かメドレー

長唄「連獅子」

小鼓の傳左衛門、太鼓の傳次郎。大鼓は広忠ではないが、元旦から「それ青陵山の~」という長唄と、獅子の咆哮が聞けて嬉しい。イヨーッ、オーッ、という掛け声と、傳左衛門が鼓の紐をギュッと絞って出すギリギリという音も。

舞踊「老松」

この公演を観るようになってから、春猿は、新年最初に見る歌舞伎役者になった。また明日の浅草で見る予定。

いつもは着物の色が華やか目だが、今年は黒。他の人たちと同じだ。
「老松」は、この公演を最初に観た年にも観た。おめでたい舞踊らしい。観ていて楽しかった。

舞踊の後、一度橋掛かりを歩いて引っ込んでから再登場し、挨拶をした。この公演に出るようになって十年目だそうだ。昨年は震災があったが、舞台人は舞台に出て観客の気持ちを癒すことが務め、というような話だった。

最後の手打ちのために傳左衛門、傳次郎が出てきた。傳左衛門は年男だそうだ。(四十八歳ではありません、と傳次郎) 今月、春猿は浅草公会堂、傳左衛門は平成中村座、ルテアトル銀座、演舞場と三座掛け持ち、傳次郎は松竹座だそうだ。

2012 新春浅草歌舞伎 初日の鏡開きと第一部2012/01/02 21:24

2012年1月2日 浅草公会堂


鏡開き

10分くらい前に着いた。すでに人がいっぱいだった。9時半をちょっと過ぎた頃、
出演者が出てきた。今年は多い。真ん中に亀治郎と愛之助がいて、その左右に竹三郎、春猿、壱太郎、男女蔵、米吉、歌昇、亀鶴、巳之助、種之助、隼人、薪車が立つ。亀次郎、愛之助、の順で挨拶した。

人数が多くて覚え切れないので覚えてるだけ。大体の感じを記す。

亀治郎 今年襲名する。亀治郎としての浅草出演は最後。今年は若い人がたくさん入ったので、今後はこの人たちをよろしく頼みます。今年は平均年齢が下がったと思ったら、竹三郎さんが入った。

愛之助 昼を見た人は夜も見てください。平成中村座も、演舞場、ルテアトル銀座、国立も。大阪松竹座もやってますので観てください。

男女蔵 (オメッティと声が掛かって) ありがとうございます。10年連続で出てましたが去年は出ませんでした。今年は挨拶には出ませんが、どこにオメッティが出てるか探してください。

亀鶴 亀鶴です。ファンレターでも鶴亀(つるかめ)さんと書いてあったりします。

巳之助 4年ぶり、2回目です。身体の成長は止まりましたが芸の成長
は止まりません。

壱太郎 初出演です。寒いのでこれくらいで。

歌昇 (播磨屋!と声が掛かった) 播磨屋です。出演できて嬉しい。

種之助 あけましておはようございます(と言ってしまって笑われた)。出演できて嬉しい。

米吉 (はっきりした記憶がないが、すごくしっかりした印象を受けた。初出演なので、上の2人と同じような内容だったと思う)

隼人 高校3年です。高校生は七之助さん以来だそうです。

春猿 今までは亀次郎さんにすがって出演してましたが、来年からは若い方たちにすがります。

薪車 華やかだよと噂は聞いていましたがやっと出られました。新人です。

竹三郎 子供や孫達を保護するようなつもりで出演します。


第一部 午前11時開演 1階お列8番

花外の席の前の方は、花道で舞台が見えなくなるのを防ぐためか、普通の座席の上にクッションがついている。深く腰掛けると足が着かなくなるくらい厚い。 この席のおかげで、竹三郎の足袋の裏や歌昇の生足、目の前のトンボなどを堪能できた。

年始挨拶は亀治郎。今年で浅草は一応卒業。自分は浅草に育てられたと思う。今年入ってきた若い役者たちを見ると自分はもう若くないと感じ、こうやって年老いて死んでいくのかと思う。これからは若い人たちを応援してほしい。これを僕の遺言とします。

「南総里見八犬伝」

発端。浅黄幕があって、花道から「きいたかきいたか」「きいたぞきいたぞ」と所化が2人出てくる(澤五郎、千蔵)。浅黄幕が落ちると伏姫と八房がいる。八房が、歌舞伎によく出てくるタイプの犬だったのでイメージが狂った。八房は、伏姫を乗せて走れるような大きな犬だと思い描いていた。

伏姫は、何をしたというわけではないけれども八房の子を身ごもったので、八房を殺し自分も死のうとしている。そこに、花道から猟師が出てくる。男女蔵。鉄砲を持っている。撃った弾が八房だけでなく伏姫にも命中し、伏姫は死ぬ間際に腹を裂いて八つの玉を飛ばす。

空中を飛んでいる玉に見えるのは、2人の黒子がもった4本ずつの差し金の先についている丸い電球だった。一字ずつ漢字が書いてある。

序幕、大塚村蟇六内の場では、八犬士のうち、犬塚信乃(歌昇)と犬川荘助(薪車)が出る。信乃は庄屋の養女の浜路(壱太郎)と恋仲である。壱太郎はとても可愛い。台詞がうまくなった。次の演目で夕霧もやるし、第一部では大活躍。信乃が旅立つ前に2人で名残を惜しもうと奥の部屋に入ったりするが、まだ若すぎるラブシーン。というか、歌昇が固い。

浜路に横恋慕する左母二郎役の亀鶴は、歌昇と比較するとさすがに大人。

庄屋夫婦(亀治郎、竹三郎)が花道から出てくる。この2人が滅法うまい。亀次郎は老け役だが、段四郎がやっているようだった。2人がとてもしっくり合っていて、四十も年齢差があるとは信じられない。この夫婦は、浜路を代官に縁づかせて、持参金をもらおうとしている。下女役が愛一郎。庄屋は、この縁組を浜路が承諾しなければ死ぬ、と脅して無理に承諾させる。

代官は、男女蔵の二役。結局、浜路は逃げてしまうので、庄屋と代官たちの間で追いかけっこがある。世話ダンマリというのだそうだ。加賀鳶でやるダンマリに似ている。

二幕目、円塚山の場では、亀治郎は犬山道節の役。こちらは猿之助に似た声で演じる。この場の最後に八犬士が全員そろってダンマリになる。

下手には犬田小文吾(種之助)、中央、上手に目をやると、かっこいい犬江親兵衛(隼人)、女の子のような可愛い犬坂毛野(米吉)、上手の方でよく見えない犬飼現八(愛之助)、それに犬塚信乃(歌昇)と犬川荘助(薪車)。 一人ずつ玉を持って見せたが、「義」が書いてある薪車の玉だけ、電気が切れていた。振り返って玉を見せる前に、愛之助が薪車に何か言ったように見えた。

舞台の幕が閉まって、犬山道節役の亀治郎の幕外の引っ込みになった。飛び六方。

種之助、米吉、隼人の若手は、一日のうちで、このダンマリのシーンしか出番がなかった。来年からはもっと出るよ、という予告編のようなものか。


「廓文章」

この演目は何度も観たが、幕外の角度から観るのは初めてだ。

伊左衛門役の愛之助は前後を面明かりを持った黒衣にはさまれて、花道を歩いてきた。前の黒衣はベールを通して顔を見ると愛一郎。近くに来たとき、笠の下の伊左衛門の顔がのぞけた。

門松が飾ってある玄関前の様子や、繭玉が飾ってある座敷が華やかで、正月気分が盛り上がる演目だ。

若い者、仲居たちはイチョウ柄の着物を着ている。

愛之助の伊左衛門は、顔が地味すぎるように感じた。喜左衛門(竹三郎)、おきさ(春猿)がそろって派手な顔立ちなので、とくにそう感じたのかもしれない。こんなときこそ、もっと仁左衛門に似せた化粧をすれば良いのではないかと思った。見た目からくる説得力がないので、あまり動きがないときが伊左衛門らしくなくて辛い。喜左衛門が貸してくれた羽織を脱いで活動しはじめてからは、表情もいろいろ動くので、顔は気にならなくなった。

「なんじゃいなーおまえらは~」とか「ちょともおもしろいことあらへん」という台詞のときは、同じ調子でもやっぱり言う人によって雰囲気が違ってしまうのは感じた。吉田屋に入ろうとするとき、背中を斜めにひねる形で仁左衛門を思い出した。足の白粉がついてお尻のところが白くなるのも仁左衛門と同じ。

壱太郎の夕霧は、瑞々しく美しくて、嫌味でない色っぽさがある。いつもの通り所作が美しい。
二年も恋人と別れていて、必死に生きてきたみたいな強さも感じた。今まで観た夕霧の中で一番リアル夕霧に近いだろう。

竹三郎は、毅然としていて、情がある喜左衛門にぴったりだった。羽織を、渡すのではなく、着せ掛けてやるのが、この喜左衛門に似合っていた。公会堂の中が寒かったので、羽織を脱いで竹三郎は寒くないだろうかと思った。

春猿は、こういう役だと凄くうまく感じる。伊左衛門が花道で「それいぬ・・・・それいぬ」とやっているとき、後ろで同じ格好をしているときの顔が可愛かった。

吉太朗は顔は悪いが演技はうまかった。