坂東玉三郎初春特別公演2012/01/12 00:15

2012年1月9日 ルテアトル銀座 午後2時開演 21列20番

「口上」
三日とは内容が違っていた。

今月は演目が妹背山だから、お芝居の中で新年のご挨拶をするわけにもいきませんので。

松緑さんのお祖父様の松緑さんには可愛がっていただいた。十五歳のとき、薄雪姫をやらせていただき、21のとき丑松のお米をやらせていただいた。お正月に国立で公演をやっていたとき、公演の後、紀尾井町のおうちで皆でごちそうになった。私は女形で化粧を落とすのに時間がかかって行くのが遅くなったが、必ず松緑さんの隣りを空けておいてくださった。辰之助兄さんもいたけど私の方が隣り・・・・。

「妹背山婦女庭訓」

三日に観たときは途中で眠ったりしたので、きょうはリベンジのつもり。イヤホンガイドを借りた。おかげで話がよくわかった。

道行恋苧環

藤原鎌足の息子淡海(笑三郎)は、入鹿討伐のため、烏帽子折の求女に身を窶している。杉酒屋の娘お三輪は求女に惚れ、深い仲になる。求女のところには、橘姫(右近)が毎夜通ってくるが、まだ男女の仲にはなっていない。実は橘姫は入鹿の妹である。

ある夜、求女は、帰る橘姫の後を追う。追いついた求女が名を尋ねるが、橘姫は名を明かさない。橘姫のくどきで右近が踊る。橘姫が袖で顔をおおい隠す所作をするが、これは、袖を几帳に見立てて袖几帳というそうだ。初めて聞いた言葉だ。

橘姫と求女が2人でいるところにお三輪が来て、持っていた苧環を2人に間に投げ、引き離そうとする。お三輪の着物は萌葱色の地に「十六むさし」の柄。「十六むさし」というのは江戸時代のボードゲームだそうだ。

お三輪は橘姫に、「ひとの男をとっていいと思ってるの? そんなことしちゃいけないって、女庭訓にちゃんと書いてあるでしょ。読んだことないの?」と責める。そうか、だから妹背山女庭訓なのか、と納得。橘姫も負けてないで言い返す。

橘姫は夜明けまでに帰らないと行けないので先を急ぐ。求女は、彼女の正体を知るため、持っていた苧環の赤い糸を彼女の着物に結び付けて後をつける。お三輪は、苧環の白い糸を求女の着物に結び付けて後を追おうとするが途中で転び、糸が切れてしまう。切れたと知って苧環を叩く仕草がかわいい。


三笠山御殿

入鹿の御殿に、漁師の鱶七(松緑)が鎌足からの届け物の酒を持ってくる。鱶七は、どてらの上に長裃。この長裃は弁慶縞の木綿の浴衣地を仕立てたものである。

鱶七が鎌足のことを「鎌どん」というのが面白い。
長袴は見ていて歩きにくそうなのがわかる。裾さばきが難しいのだそうだ。松緑はうまく裾をさばいて、階の上で決まった。

毒味で酒を飲んだ鱶七は酔いがまわって寝ようとするが、御殿の床下から槍が突き出る。その槍を交差させて枕にし、その上で寝る。寝ていると官女たちがやってくる。鱶七は官女たちを追い返すが、入鹿の家来の玄蕃(弘太郎)と矢藤次(猿四郎)がやってきて鱶七を連れ去る。

人がいなくなった舞台に、帰ってきた橘姫が出てくる。そして、赤い糸を追ってきた求女。求女は、橘姫が入鹿の妹であることを知る。橘姫も求女が藤原淡海であると知る。素性を知られた淡海が橘姫を手にかけようとすると、橘姫は覚悟して手を合わせる。
その姿を見た淡海は「心底読めた!」と膝を叩き、刀をしまう。橘姫は入鹿のスパイとして自分を探るために近づいたのではないと確信した淡海は、橘姫が入鹿が盗んだ宝剣を取り戻せば夫婦になる、と言う。
橘姫はそれを承知して別れる。

2人がいなくなった舞台に、花道から出てきたのが、求女の後を追って、やっとたどり着いたお三輪。通りかかった豆腐買いのおむら(猿弥)に求女のことを尋ねると、それはきっとお姫様の婚礼の相手だと言われ、御殿に上がっていく。

中から官女が出てきて、一人一人、お三輪とすれ違う。つけまわし、というのだそうだ。官女は「誰じゃ」と言い、お三輪はその度に「はーい」と答える。

婚礼を覗かせてほしいと頼むと、官女達が酌の仕方を教える。最初に出てきて持ち方を教えるこわい官女は功一。次は辰緑。馬子唄を歌ってみせるのは松次郎。野太い声で、最後に「はい~はい」と歌って。他の官女に、「あなた、お上手ですね」と褒められる。お三輪は馬子唄がうまく歌えずに泣き伏し、官女たちは奥に引き上げてしまう。ここで、嫉妬に狂ったお三輪が髪を振り乱して「「凝着の相」となり、奥へ押し入ろうとするところに鱶七が戻ってきて、お三輪を刺す。鱶七は実は淡海に仕える金輪五郎だった。どてらを脱いで、金襴の四天姿になる。

五郎は、お三輪が追っている求女が実は藤原淡海であり、爪黒の鹿の血と凝着の相の女の血を混ぜて笛に注げば入鹿を成敗できるのだからとお三輪に告げ、お三輪は納得して死ぬ。