四代目市川猿之助襲名 七月大歌舞伎 夜の部2012/07/18 12:33

2012,年7月14日 新橋演舞場 午後4時45分開演 1階6列31番

「将軍江戸を去る」

彰義隊の隊士たちが集まってしゃべっているところに来る山岡鉄太郎。山岡役の中車は声が嗄れている。しかし台詞ははっきりと聞き取れた。舞台後方から現れる高橋伊勢守役の海老蔵は、顔も声も別世界の人のように美しい。

書院の場に出てくる慶喜役の團十郎は、頭脳明晰な人に見えない。中車との共演シーンは良かった。中車の台詞まわしは時おり、歌舞伎というには中途半端で普通の劇としては不自然と感じることもあった。 しかし、その必死さが山岡の必死さと重なって胸に迫った。

「上様、おなごりおしゅうございます」と人々が言う千住大橋の場は好きだ。

「口上」

口上の少し前に、福山雅治の祝い幕が引かれる。こんな近くで見たのは初めてだ。3階から観たときに感じたが、幕が動くにつれて顔の表情が微妙に変化して面白い。

今月の口上は5人。真ん中が新猿之助。下手側に中車親子、上手に團十郎親子。

團十郎が口火を切り、かつて猿翁と共演したこと、新猿之助とパリオペラ座の公演にいっしょに行って、自分はフランス語はわけもわからずカタカナを覚えて口上を述べただけだが、猿之助はオペラ座の怪人の話もしていたという話、中車との共演は初めて、團子は自分の娘のぼたんに5歳のときから日本舞踊をならっている、おじいさんより立派な役者になりたいと大それたことを言ったようだが・・・という話をした。

海老蔵は少しくだけた内容。猿翁は、憧れ。猿之助とはパリだけでなく、ロンドン、アムステルダムでもいっしょに公演した。累などをやって大変勉強になった。(この2人の累は好きだ。) ライオンキングに誘われ、断る理由もなかったのでいっしょに行った。猿之助はもう二十数回観てるはずなのに、初めて観たように喜んでいた。「芸術は爆発だ」という本を3冊もらった。中車とは「出口のない海」で共演したときから歌舞伎俳優になりたいという話をきいていた。

おもだか屋の方は、先月の口上と大体同じ。團子の口上は「おじいさまのように立派な役者に~」にトーンダウンしたが、最後の「よろしくお願いもうしあげます」のところに抑揚がつき、それが一部裏声になったりするので笑いを誘っていた。

「黒塚」

黒塚は暗くて地味な演目だと思い込んでいて、先代の猿之助でも観たことはなく、今回が初見。意外に派手な演目で面白かったので、先代でも観ておけばよかったと思った。

祐慶の役の團十郎は、大和坊(門之助)と讃岐坊(右近)を従えていると勧進帳の弁慶を思い出す。位の高さが自然に感じられて良かった。

猿之助の岩手の踊りは良かった。手の綺麗さを見て、そういえば最近、猿之助の女形を観ていなかったなと思った。小さなことだが、杖の投げ捨て方がかっこいい。腰の落とし方とか技巧的にも高度。
鬼女になってからは派手な動き。花道七三で、平らな場所ではあるが義賢ばりにまっすぐバッタリ倒れ。一瞬ライトが落ちる。直後に立ち上がり向き直ってまた戦う。舞台の方へ後ろ向きにジャンプして行くのが凄い。こんな動きは初めて観た。

猿弥の強力も活躍で、海老反りまで見せてくれた。最後に花道を逃げ去っていくのも良かった。


「楼門五三桐」

弥十郎を先頭に門之助と門弟たちが家臣の役で花道に登場。久吉(猿翁)が8年ぶりに出てくる、ような台詞があって客席が沸く。

南禅寺山門の上の、五右衛門役の海老蔵は、派手さがこの演目にぴったり。

やがて、久吉(猿翁)がせり上がって来ると、万来の拍手。歌舞伎を見始めた頃はずいぶん楽しませてもらったのに、一通り観た後は熱が冷め、その間に猿翁が倒れてしまったので、最後に見た演目が何だったか確かな記憶もないまま別れるのが心残りだった。今回、以前のような元気な姿ではなくても、舞台上の姿を見られたのが本当に嬉しい。

家臣たちのほか、利家役の段四郎と、侍女役の笑也、笑三郎、春猿が出てきた。

猿翁は「石川や浜の真砂は~」の歌は所々発音がおかしいが、最後の「さらば 五右衛門」はおかしくない。発音のしやすさが音によって違うのだろうか。

猿翁を後ろで支えていた黒衣が中車。カーテンコールのときに、顔の前の布を持ち上げて、顔を出して挨拶した。最後には頭巾を全部とって頭を下げた。