三月大歌舞伎 初日 昼の部2015/03/04 22:14

2015年3月3日 歌舞伎座 午前11時開演 1階5列9番

「加茂堤」

菊之助は桜丸にぴったりの雰囲気。桜丸の女房の八重は梅枝。八重に手を引かれて花道を出てくる苅屋姫の壱太郎も、役にぴったりの雰囲気。
牛車の中から出てくる斎世親王(萬太郎)と苅屋姫は恋人同士で、桜丸夫婦が二人が逢えるようにしたのだ。十代の恋人達を牛車の中に入らせるのが、歌舞伎的天真爛漫エロス。

二人が逃げて空っぽになった牛車を夫の着物を羽織って引いて行く八重の姿が綺麗だった。

「筆法伝授」

園生の前は魁春。目のまわりが赤いので出てくるとすぐわかる。

花道の上に敷いたゴザをこするかすかな音がして、源蔵(染五郎)と戸浪(梅枝)の夫婦が出てくる。二人とも裸足で、七三のところで二人でお辞儀をする。染五郎の寺子屋の源蔵は良かったなあと思い出しながら観た。これは寺子屋よりも前の話で、職場恋愛という「不義」を犯した二人は勘当され、今は貧乏暮らしをしている。

源蔵は菅丞相に筆法を伝授されるが勘当は解けない。菅丞相は藤原時平の讒言により流罪となる。源蔵は梅王丸に菅丞相の若君の菅秀才を預かると申し出て連れて帰る。菅秀才を背負った戸浪と源蔵が花道を引っ込むのが最後。

これが「寺子屋」につながるわけだ。

「道明寺」

苅屋姫の壱太郎、立田の前の芝雀がいるところに覚寿役の秀太郎が出てくると、役の身に着き方の違いを感じる。秀太郎は、位のある老人の役がとてもいい。「瞼の母」の母役のようなときは台詞が聞きづらいことがあるが、覚寿の台詞はしっかりしている。

立田の前の夫、宿禰太郎役の彌十郎はすごく大きくて、相撲取りの役かと思った。キャラが立っていて、なかなか良い。これが妻の立田の前を殺し、「誰が殺したかわかった」と言った覚寿が宿禰太郎に刀を借り、別の人を刺すと見せかけて宿禰太郎を刺すところは見応えがある。

立田の前の死体を引き上げる奴宅内は愛之助。奴林平みたいなかっこいい奴ではなく、逸見藤太的な滑稽な役。最後に褌姿になる。愛之助の太腿やがっちりした体を拝むのは久々だ。

菅丞相は奥の部屋にいる。木像のときは、座っているときに60度くらいずついっぺんに体の向きを変えていかにも人形らしい動きをする。歩く姿も人形だ。初めて観たときは、人形のような美貌が生きるはまり役だと思ったが、今は人形というには老けすぎた。
しかし、最後の苅屋姫との別れは、今まで観た中で最高。青っぽい衣装の大きな仁左衛門の裾のあたりに小さくかわいい壱太郎が、何も言わないが「置いてかないで~」のような風情で動いている。二人の姿を見ると、悲しむ人を見てもらい泣きするときのように感情が伝わってきて、涙が出そうになった。これは歌舞伎の美しいシーンの一つで、その中でもこの二人の組み合わせは最高だと思う。

青っぽい衣装になってからの仁左衛門は圧倒的に美しかった。顔に涙が光る花道の横顔を見て、年寄りだけど本当に骨格のきれいな人だと思った。

菅丞相を送って最後に花道に残る判官代輝国は菊之助。

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