四月大歌舞伎2019/05/17 23:54

2019年4月16日 歌舞伎座 午後4時半開演 3階2列2番

「実盛物語」
仁左衛門の実盛を見るのは二度目。前回は太郎吉役が千之助だった。今回は真秀。真秀はかわいくて、仁左衛門に頭なでなでしてもらう姿がかわいい。

「黒塚」
きょうの目当てはこれ。猿之助は安定のうまさ。山伏に種之助、鷹之資がそろっているが、特に踊りの見せ場があるわけではない。
猿之助の踊りは見ていて普通に楽しいが、やっぱり老女が鬼女になる、何度もジャンプするあたりから舞台が盛り上がる。花道七三で仏倒れで倒れてすぐに向き直るところは、今回は一瞬暗転した。

「二人夕霧」
寄せ集めのメンバーで、みんなバラバラに演技していてまとまりがない。吉田屋のパロディなのだが、伊左衛門役の雁治郎に主役感がなくて、背が高い弥十郎ばかり目立つ。孝太郎はうまかった。

5月文楽公演「妹背山婦女庭訓」第二部2019/05/26 01:25

2019年5月25日 国立劇場小劇場 午後3時45分開演 15列21番

5時間座っていて、さすがにお尻が痛くなった。文楽は長丁場だ。
「杉酒屋の段」以外は歌舞伎で観たことがある。いつもながら、字幕が出るからわかりやすい。
最初の「妹山背山の段」は歌舞伎の「吉野川」。これも「妹背山婦女庭訓」の一部だったのだ。雛鳥が入鹿に見初められた、という話が出てきて、筋がつながる。
真ん中の川で下手上手が分かれているが、大夫と三味線も下手上手に分かれる。大夫と三味線の一人一人の名を舞台の黒衣が言って、そのたびに客先が拍手するのも歌舞伎と違うところ。
すごい話だから、最後の拍手も大きかった。

25分休みのときは、出遅れて中の席がとれなかったので外に出てベンチに座って食事をした。気候が良いときはこれでいい。

休みの後は、「杉酒屋の段」。求馬と橘姫が会っていたり、お三輪が出てきて、苧環も出てきたりして、「道行恋苧環」に続く。

求馬、橘姫、お三輪の踊りは綺麗だった。文楽で踊り、と聞いたときは想像し難かったが、人形には肉体がない分、肉体の限界、束縛もなく自由に美を追求できるのかもしれない。

次の段は鱶七。歌舞伎と同じ格好をしている。

最後の「金殿の段」には豆腐買いの女が出る。お三輪と官女たちが御殿の廊下を歩くとき、歌舞伎ではすれ違っていくが、文楽では人形同士がいちいちぶつかるのが面白い。

官女たちがお三輪をからかう場面は、一番感動した。身近にありそうな話なのでどちらの気持ちも想像できる。歌舞伎で何度か見たが、文楽は人形が演じるから役者のキャラを通さずに直接に話が心に伝わってくる。

鱶七が再登場してお三輪の最期となるが、この辺りの話は忘れていたので良い復習になった。

坂東玉三郎 世界のうた2019/05/28 23:14

2019年5月28日 日生劇場 午後2時開演 GC階B列39番

幕が開くと紫の布が左右を覆っていて、真ん中の玉三郎が右側の布に巻かれて立っていた。そして、幕は左右に動いて、玉三郎の全身が現れる。始めから玉三郎の魔法にかかって気持ちが高揚した。
ここは良い席。玉三郎の全身が目に入って、世界に唯二人のような気持ちにさせてくれる。「はるかなはるかな見知らぬ国へ」と歌いだした。
「つめたい部屋の世界地図」と「少年時代」。玉三郎の声に愛撫されているようだ。玉三郎の歌のコンサートが始まった頃はよく声が出ていて、名曲を表現力豊かに歌えている、と思ったが、きょうの冒頭の2曲を聴いて、玉三郎に余裕が出てきて、玉三郎の踊りでいつも感じるような、観客の心をくすぐる芸術性が出てきたと思った。

傳左衛門が、どこかの地方公演のときに玉三郎といっしょにカラオケに行って、玉三郎は「少年時代」を歌った、と言っていたから、聞きたいと思っていた。

2曲の後、玉三郎が少ししゃべった。「かくもにぎにぎしく」と歌舞伎の口上のようなことを言ったのが面白かった。2日続くコンサートの最初なので緊張しているらしい。緊張している、と終始口にしていた。

続けて「5月の別れ」「誰もいない海」「夜明けのうた」。
岩谷時子の還暦パーティのとき玉三郎が「夜明けのうた」を歌うことになって、岸洋子は「あたしの心の」と歌ってたけど、「ぼくの心の、歌ってもいい?」と聞いたら、岩谷時子は、「元々の歌詞は、ぼくの、だった」と言ったそうだ。そうなんだろう。私が最初のこの歌を聴いたのはテレビドラマで長谷川明男の歌だったから、「ぼくの」と歌っていた。

「夜明けのうた」の最後に下手に引っ込んだ。次は「18歳の彼」だから女になって出てくるのかと思ったが、キラキラする生地の服になった。
「18歳の彼」はNHKホールのコンサートのときにも聴いた。

「そして今は」はジルベール・ベコーがブリジット・バルトーと別れたときの歌だそうだ。これと「パダムパダム」はNHKホールのときは別の人が歌った。

「待ちましょう」は私もたぶん淡谷のり子の歌で聞いた。戦争へ行った恋人を待つ歌だそうだ。

前半の最後は「人生は歌だけ」と「水に流して」。「水に流して」は前のコンサートでも聴いた。

後半の最初は「虹の彼方に」。「スマイル」の後、「マック・ザ・ナイフ」。
「マック・ザ・ナイフ」と言えば映画「悪の教典」で使われて歌詞の意味に感銘を受けた。玉三郎は、ブレヒト、クルト・ヴァイルに言及し、訳詞はぶっとんでるのでいいんじゃないかと思ってそうしたようなことを言った。バラードが多くなるので少し変わったものを、と思ってこの曲を入れたそうだ。歌いだすと、客席から手拍子が沸いた。細身のスーツで動きながらの歌はなかなか良かった。

「センドインザクラウン」は歌もミュージカルも知らなかった。
「ある恋の物語」は曲をよく知っている。フィギュアスケートとかによく使われているからだろうか。ザピーナッツが「わたしの恋のお話」と歌った、と玉三郎は言ったが、私にははっきりした記憶がない。作曲家の弟の奥さんが亡くなったときに作った曲、というのが萌えだった。名曲なので歌はない方が良い。どうせなら踊ってほしかった。

「サムウェア」はウエストサイドストーリーの中の歌だそうだが、印象に残ってない。「星に願いを」は昔のテレビのディズニーアワーのテーマソングだそうだ。おとぎの国、冒険の国、あと二つ何かの国があるウォルトディズニーの番組は私も大好きだった。

「すべての山に登れ」は最初のコンサートでも歌ってくれて、嬉しかった曲だ。
最後は「アンフォゲッタブル」。

アンコールは前と同じ「ラストワルツ」だった。引っ込んだ後、もう一度出てきてお辞儀をした。

世界を歌う、というタイトルだが、シャンソンやミュージカルよりもニューミュージックの方がうまいのが同世代の日本人らしくて好き。