七月大歌舞伎 夜の部2006/07/10 20:50

歌舞伎座 2006年7月10日(月) 夜の部 午後4時半開演 1階8列34番

睡眠不足を避けるために夜の部だが一日休みをとって万全を期したつもりだったが、ワールドカップの決勝戦が延長になって床に就いたのが朝の6時。12時すぎには起きたので結局睡眠不足になり、上演中たまにウトウトした。

今月は泉鏡花特集。

「山吹」

あやつり人形遣いの男が酒を飲んでいる。男がひっこんだところへ女が来る。その後、マント姿の男が来て、女は「先生」と読んで話を始める。「先生」の方は女を知らないが、話しているうちに女は嫁入り前から「先生」を知っていたことがわかる。女の名前は縫という。女が人形遣いと家の後ろの道にいるのを見て、馬子が「不気味だ」と言って逃げる。人形遣いは女に、傘で自分を思い切り叩くように言う。叩いた後、毎日女に叩かれるために二人は結婚することになる。偶々とおりかかった村人の群れを先導していた子供二人を立会人にして二人は結婚する。女は、腐った鯉の肉を食べて「この男といっしょに行くならこのくらいのものが食べられなくては」という。男も食べる。 二人は花道を去り、先生は「自分には仕事がある」と残る。

難解な話だった。縫の役は笑三郎。背が高い女形で、うまい。人形遣いの男は歌六。二人が花道に立ったのを見て、そういえば二年前の桜姫の舞台で残月と長浦だったと思い出した。「先生」は段治郎。

馬子がどうして不気味がっているのかわからなかった。最後の先生の台詞で客が笑うのも腑に落ちなかった。

友達の話によると、原作では白山吹らしいのだが、舞台では山吹色の山吹だった。

「天守物語」

二十年以上前に真田広之の図書之助で見たのが最初で、海老蔵で見るのは二回目。演目自体は三回目。

玉三郎はプライベートも揚巻であり、桜姫であり、雲絶間姫であり・・・・と思うのだが、この富姫こそ正に彼の姿そのものであろう。

幕開き、舞台手前で侍女たちが花を釣っていて、後ろで子供達が「とおりゃんせ」を歌っていて、大きな柱が二本あり、獅子頭が置いてある舞台装置が美しい。「とおりゃんせ」を「とおしゃせぬ」ではなく「とおしません」と歌うのが気になった。

最初に打ち掛けを着て現れたのは上村吉弥。富姫は雲に乗って帰ってくる。バックの画像が動く。富姫は蓑を肩にかけた姿で現れる。 しばらくして客人の亀姫が来る。今回の春猿は二人とも同じ穴の狢なせいか、「おにくらしい」「おかわいい」「さしあげません」などの滑稽な台詞が場面によくなじむ。

前回は美しく生真面目そうな若者の海老蔵と玉三郎で「耽美」な舞台だったが、今回は海老蔵が成長して玉三郎の相手役としてがっしり受け止められるほどになったので、ラブシーンに興奮した。この二人の共演の演目としては最高なのではないか。助六と揚巻は一人一人は良いが二人の絡みは少ない。「帰したくなくなった」をはじめ図書之助に言い寄るときの玉三郎の迫力が凄い。玉三郎が海老蔵をほしいなら落としてしまえ。あるいは、現在の大スターの次代のスターに対する意地か。いずれにしろ、頑張れ、玉三郎! 海老蔵はあんたの好きにしていいぞ!

いつものことながら、見るのは三回目でも最後にどうなったのか覚えていないのだった。前回、前々回も獅子頭は獅子になって戦ったのだろうが、覚えていない。