愛之助の「鏡獅子」2007/07/30 23:00

2007年7月29日 「一の会」 先斗町歌舞練場 午前10時開演

10時前に会場前に到着した時は長い列ができていて、ようやく最後列の席が確保できた。娘道成寺の前の休憩時間に戻るのが遅れてしばらく通路に立って見ていたら、舞台も花道もよく見通せることが分かったので、最後の「鏡獅子」の前に座席を人に譲り、後ろの真ん中に立って、上様になったつもりで弥生を真正面から迎えることにした。いまだかつてあんな良い位置から鏡獅子を観たことはない。忘れがたい舞台になった。

愛之助は六役をこなした今月の松竹座の楽日から2日をおいただけで疲れているかと思いきや、ますます身体がよく動いて気力も充実しているように見えた。肩から下の動きが柔らかく、動きにメリハリもある。女らしい弥生だった。日舞をやっている知人から、弥生はずっと一人で踊っているから大変なのだと聞いたが、愛之助は獅子頭に引っ張られて揚幕に消えるまで、集中力が途切れることもなく踊っていた。個人的に不満といえば不満なのは顔立ちと首が骨太でごついのでオカマっぽく見えることだ。もっと思い切った化粧をして華やかな顔をつくったらどうだろう。扇を2つ合わせてクルクル回しているとき、俯いた顔が仁左衛門の女形の時の顔に似ていると思った。それではいけない。

弥生が引っ込んで、胡蝶の役は千壽郎とりき弥。大人の、色っぽい胡蝶もなかなか良いものだった。

間奏曲の間に千志郎と松之が獅子の乗る台と花を用意する。

先斗町歌舞練場の花道は下手の一段高い席の横にくっついている。獅子の愛之助が一度出てきて後ろ向きに引っ込むとき、揚幕が真後ろでなく斜め横の位置にあるので最後に少し曲がらなければならない。

三響会は赤獅子だったが、今回は白獅子。綺麗な鬣だった。花道で頭を振る時は下手の来賓席にかからないように振っていた。三響会の時の毛振りは下手だと思ったが、今回は良かったのではないか。最後の方は速いスピードで頭を振っていた。飛び上がって舞台に座り込む所作も力強い。満場の拍手を浴びて幕が閉まった。