風林火山2008/04/13 02:55

2008年4月12日(土) 日生劇場 午前11時半開演 GC階A列21番

GC階には前にも座ったことがあるが、今回は正面下手寄りで、花道も舞台も見易かった。開幕前にロビーを歩いていると大河ドラマの「風林火山」のテーマソングが聞こえた。

オープニングで弟達と家臣2人が横に並んで順番に語る。こんな形式はヤマトタケルにもあったような気がしてスーパー歌舞伎風の演出なのかと思った。一通り語りが済んだ後、「たけきこと風の如く」・・・と風林火山を一行ずつ順に言ったが「しんりゃくすること火の如く」はテレビと違い「おかしかすむること火の如く」という読み方だった。最後の「動かざること山の如し」が亀治郎の声になって、クレーンの上に乗った亀治郎が後ろから登場した。旗が数本、客席の上を紐に引かれて飛んで行ったのが綺麗だった。同時に、旗をもった武者達が通路を歩いて舞台に上がり、勢揃いした。この辺はライオンキングのオープニングのようだった。

簡略化された舞台装置で、どのシーンもターンテーブルのような回る盆の上で演じられる。

三条夫人役の尾上紫は、獅子虎傳阿吽堂で見た尾上青楓の姉だ。弟と似たタイプで、きれいな顔立ちで小柄。小柄な亀治郎よりはっきりと小さい。大河の三条夫人より公家の姫としてのプライドが高い。それについている中将役の段之が滑稽。

婚礼の席にカブキ者のような衣装で面をつけて晴信(信玄)役の亀治郎が現れる。面をとったときに、海老蔵だったら客席からジワが来るのだろうが亀治郎はちょっとオーラ不足。

大河ドラマの時には、父の信虎を息子達と重臣がそろって城門の外で追い払った追放シーンが印象的だったが、舞台では城門も馬もなく、クーデターは代表取締役解任のシーンのような感じだった。

追放後、晴信が弟の信繁に言う台詞が安っぽい。信繁役の嘉島典俊の演技がしっかりしているので、安っぽいメロドラマにならずに済んでいた。

山本勘助は花道から出てくる。歌舞伎風に台詞を言うのが亀治郎だけのせいか、信玄と勘助は声やしゃべり方を変えても同じ人が台詞を言っているようにしか聞こえない。勘助を主役にして、信玄を誰か別の人がやったほうが亀治郎の資質が生きたと思う。勘助が物陰に消えて後ろ向きで出てきて、少し後に信玄役に変わった亀治郎が姿を現す、という早替わりがあった。私は早替わりがあんまり好きではないし、物陰に消えた人が後ろ向きで出てきたら替え玉、というお約束なので感動しなかった。

能のシーンで使われていたお囃子が、亀井家の三兄弟が録音したと演奏だろう。 舞っているのは亀治郎だろうと思ったらやっぱりそうだった。一幕目の最後に信玄、三条夫人、由布姫が連れ舞をするが、それも嬉しい。由布姫役も三津五郎の長女でみんな日舞がうまい。そこに、嘉島典俊も混じって踊っていたので驚いた。映画のBeautyで村歌舞伎の役者の一人で出ていたが、日舞の基礎があったわけか。

二幕目の最初は、信玄と由布姫の間に男の子が生まれた、と出てくる重臣役の橋本じゅんが客に向かって信玄餅の宣伝をしたり拍手の練習をしたりする。4月13日は信玄の命日と言っていた。

最後に亀治郎が白馬に乗った宙乗りをするのだが、その前が退屈で宙乗りを見る気持ちが盛り上がらなかった。二幕目で一番見応えがあったのは信玄と村上義清との一騎打ち。薙刀で戦う村上義清はかっこいい。信虎と義清は二役なのだ。新国劇の笠原章という役者。

替え玉の勘助と、息子を抱いた信玄が後ろ向きになって、信玄役の亀治郎が勘助の台詞を言う、という袖萩祭文のときのようなことをやっていたが、録音は使わないという約束事の中でやっている歌舞伎と違う 芝居の中でやることにどれだけの価値があるのか疑問。

千葉真一の板垣の討死を聞いた後の信玄(晴信)の嘆きが全然胸に迫って来ない。今回は晴信と板垣の関係が中心だそうだが、それが一番つまらなかった。