祝祭音楽劇 トゥーランドット2008/04/27 18:09

2008年4月25日 赤坂ACTシアター 午後7時開演 2階G列17番

赤坂ミュージカル劇場は階段を上った高台の上にあったけど、あの丘は何処へ行ったのだろう、と思いながら劇場に入った。

2階G列は前が通路だが、座席の前に手すりがあるので出入りには少し気をつかう。舞台の上枠と目の高さが同じくらい。舞台の手前で演技されると見づらい。

初めに幕の前で少し芝居があった後、幕が少し開いて中が見える。そして、舞台全体が開くと階段が、正面と左右に向き合ったのが出てきて、役者はその階段を上ったり降りたりしながら芝居をする。役者は大変だろうが、この階段は役者が見やすいし見た目も良い優れものだ。衣装も良かった。音楽的には弱いと思う。芝居が中心で、踊りと歌の比率は少ないのでミュージカル好きの人には期待はずれだったのではないだろうか。私は最後まで、「誰も寝てはならぬ」を聞けるものとばかり思っていて、その点は期待はずれだった。

私の目当ては獅童だったので、芝居中心なのは幸いだった。初めて聞いたが獅童は歌は下手だ。しかし、トゥーランドット姫がカラフに2回目のチャンスを与えてカラフが正しい回答をしているときに、ワン将軍が茶番だと言って文句をつけ、トゥーランドットに剣を向けるところから、「トゥーランドット、地獄で待ってるぜ」と自刃するまではかっこよく、この芝居全体を通じて一番面白い部分だった。

トゥーランドット姫役のアーメイは結構気に入った。台湾の人で日本語がたどたどしいため、自然に普通の人とは違う感じがした。歌は、台湾の人ということで、ちょっとテレサテンを思い出した。

カラフが最初に「3つの質問」に回答して、本当は全問正解だったにもかかわらず間違いと言われ殺されることになった後、トゥーランドットがカラフの答えは本当は全部正解だったのではないかと考えるあたりの話は好きだ。

ワン将軍がトゥーランドットに剣を向けて「お前は自分の父親が邪魔だから殺してくれるように俺に頼んだ」と言うのは面白い展開だったが、ここでミン役の早乙女太一が将軍と姫の間に立ちふさがって将軍を止め、刺されて死ぬ。これを機にワン将軍が劣勢になり、自刃することになる。その後はトゥーランドットとカラフが互いに愛の告白をするような甘い展開になるのが気にいらない。私の気持ちとしては、「獅童がせっかくあんな面白い話にしてくれてるのに、なんでみんな空気読めないのおーーーー?」

ワン将軍が、カラフへの質問の途中で茶番だと怒り始めたのは純粋に権力闘争のためなのか、姫に対する恋情が混じったものなのかがわからない。そのときの獅童の演技を見ている限りでは純粋に権力闘争のように見えるが、それより前のシーンに、ワン将軍はトゥーランドット姫を愛していたので占領された国を取り戻して王位につけた、という台詞もあったような気がする。この辺のところを確認するために、再演があったらもう一度見たい。

最後は、数年後にトゥーランドットが王位を退いて政治を国民の手にゆだねることにし、カラフが戻って来て姫と会う、というつまらない話で終る。

カラフ役の岸谷五郎は演技だけでなく歌もうまい。 リュー役の安倍なつみはちょこまかと走り回るアニメの少女役のようだったが、芝居も歌も悪くはなかった。 宦官役の早乙女太一は上半身裸で縛られて鞭打たれる場面もあり、カーテンコールでは安倍なつみより大きな歓声で迎えられていた。