秀山祭九月大歌舞伎 昼の部2008/09/24 00:18

2008年9月23日 歌舞伎座 午前11時開演 1階9列10番

「竜馬がゆく 風雲篇」

去年の秀山祭の続き。最初に建物が出てきたので寺田屋か、と思ったら池田屋だった。染五郎が手紙を読みながら現れたときに後ろにおいてあったライトを見るとなんとなく染模様を思い出す。

第三場で、おりょう役の亀治郎が出てくる。従来のおりょうのイメージと亀治郎も合うが、「軍艦に乗りたい」と語るこの芝居の中のおりょうは更に亀治郎に合っている。松緑とも染五郎とも慣れているせいなのかよく合っていて、亀治郎は個性的なわりにはいろんな役者と良いコンビネーションを作れる役者なのかもしれないと思った。

第二幕に出る西郷役の錦之助は、あまり小技のきかない、多少不器用に感じる普段の欠点が、巧まずして西郷らしさを出す役に立っていた。

寺田屋お登勢で吉弥が出てきたので驚いたが、華やかな女丈夫で役にピッタリだった。ほんの彩り程度にしか出ないのがもったいない。

「ひらかな盛衰記 逆櫓」

歌舞伎は子供が死ぬ話が多いが、この芝居も、見えないところで一人死んでいるにしても、客が見ている子供の命が助かるのはやはり後味が良い。

権四郎役の歌六は、孫の槌松の回向をしろと言われて「本当はそうしたかった」と泣くあたりが泣かせる。

「日本振袖始」

この演目は是非もう一度見たかった。10年前に見たときの日記に次のような感想が書いてあるのだが、内容を全く覚えていなくて、自分は何を見てこんなことを書いたのか知りたかったからである。

「日本振袖始は玉三郎がヤマタノオロチの役をやった。振袖で踊っている時から、背景となる茶色の風景と赤い振袖とが地獄のおもむきをかもし出して、珍しい感じだった。玉三郎と同じ衣装を着た人が7人出て、たまに赤い口をあけたりするヤマタノオロチの踊りも面白かった。芸術的には高度なものを日常的に消費してしまってもったいないような気がする」

10年前の舞台装置と今回が同じなのかどうかわからない。たとえ同じでも、前回は2階から観たので見え方は違うはずだ。今回は1階から見たので、壷がたくさん並んでいる、というのが最初の印象だった。確かに舞台装置は珍しい感じがした。今、あらためて筋書きの写真を見てみると、玉三郎と同じ衣装を着た人7人と玉三郎がヤマタノオロチを形作っているが、最初にあの格好で出てきたときは「紅葉狩」の鬼女を思い出してちょっと嫌な気持ちになってしまった。その後は、染五郎がやった一角仙人と同じ角をつけているな、と細かいことに目が行ってしまって、あの8人がヤマタノオロチの踊りを踊っていると認識できなかった。2階から見たほうが綺麗な演目だったかもしれない。