解脱衣楓累(げだつのきぬもみじがさね)2008/10/20 22:33

2008年10月19日 前進座劇場 午前11時半開演 1階12列12番

はじめて前進座の芝居を見た。吉祥寺から井の頭通り沿いに歩いて10分くらい。特に遠いわけではないが、はじめて行くと方向を間違っていないか少し不安になる。吉祥寺南コミュニティセンターの隣なのだ。

パンフレットは800円。

座席は花道から二つ目の席で、芝居中に頭の上を差し金の先の蝶が飛んで行った。

(発端 鎌倉放山の場)

念願かなって「前進座の孝夫」嵐圭史を見られた。僧・空月の役だ。 河原崎國太郎はお吉の役のときはあまりうまくないと思った。 空月が心中しようとして相手を殺したところで自分が死ぬのを思いとどまるところは十六夜清心を思わせる。

古鉄買いの勘七役の嵐広也は若手で良い感じ。幕間にパンフレットを読んだら國太郎の弟だそうだ。

(口上) 藤川矢之輔の口上があった。この演目は前進座が24年前に復活した狂言だそうだ。

(第一幕 江戸池ノ端茶見世の場)

先月、上野で見た不忍池と弁天堂が背景の書割になっていた。

河原崎國太郎は、この幕からは発端で死んだお吉の妹、累(かさね)の役で出てくる。

茶見世で働く小三(生島喜五郎)は、呉服屋の番頭の磯兵衛(津田恵一)に身請けされたが、お吉の弟の金五郎(瀬川菊之丞)と駆け落ちした。

通りかかった僧・空月はお吉に似た累を見てくどく。この辺は桜姫の清玄を思い出す。

(第二幕第一場 下総国羽生村西瓜畑の場)

西瓜を盗んだ磯兵衛が頭に西瓜の皮をのせて、今だったらスイカですいすいと言ったり歌を歌ったりして、それを声を出して笑って面白がっている人もいたのだが私には全く面白くなかった。

びっこになった累が出てきた。累は、自分の足を不自由にした短刀を、勘七の売る鏡と交換する。

(第二幕第二場 下総国飯沼草庵の場)

庵主の空月は、累に短刀を取り戻しに行かせる、その後、赤ん坊を連れた小三と金五郎が来て、赤ん坊は死んだお吉の腹から生まれた子だと言う。

(第三幕 羽生村与右衛門内の場) (大詰 絹川堤の場)

与右衛門(藤川矢之輔)は、舞踊の累では色男だが、この芝居では二枚目ではなく、実直な男に見える。それはそれで面白かったのだが、大詰めでは舞踊の累になだれ込むような感じになり、赤ん坊も殺してしまう。

あまり気を入れてあらすじを書く気になれない。休憩中の客席から「長い間上演しなかった理由がわかるような気がする。台詞で筋を説明しちゃってる」と言っている声が聞こえた。私も、面白い芝居だと思えなかった。舞踊の累に収束した物語のアイディアをその最後にたどり着く前に見せられたような感じ。