2008 芸術祭十月大歌舞伎 夜の部2008/10/26 14:11

2008年10月25日 歌舞伎座 午後4時半開演 1階11列12番

「本朝廿四孝」 十種香・狐火

前回観たときは体調が悪かったのか忙しくて寝不足だったのか途中でウツラウツラしていて、最後の玉三郎の引っ込みは記憶にあるが話はわからなかった。

下手から福助、菊之助、玉三郎、と綺麗どころが三人揃った。濡衣の福助は黒地の着物、八重垣姫の玉三郎は赤地の着物。ずっと後姿を見せていた玉三郎は最後に動き出して、もったいぶったようにゆっくりと客席に顔を向ける。義太夫に乗った動きは人形が動いているように可愛げがあって美しい。立ち上がって、中央の、勝頼がいる座敷に行って言い寄ると色っぽい。立って後ずさりすると、背が高いので頭が鴨居にぶつからないかと不安にもなるが玉三郎はそんなヘマはしないのだ。

松緑は白須賀六郎役には合った顔だ。出ている時間は短いがソツのない動きだった。

狐火の最初は、人形遣いの尾上右近が狐の人形を持っていろいろ動かす。後足が顔を掻いたりする。 右近が姿を消すと、玉三郎が下手の木戸を開けて入ってくる。薄紫の地色の着物で、灯りを持って。私の持っているテレフォンカードの一枚と同じ姿だ。

ブルームーンを背にしたこの幕の玉三郎の所作も綺麗だった。時々狐の手になる。兜を抱え、一度引き抜きで衣装を変えて、花道を引っ込んだ。

今日は玉三郎を堪能できて本当に良かった。

「雪暮夜入谷畦道」

直次郎と魚宗は私の中では菊五郎が一番。きょうも蕎麦屋のシーンは田之助の按摩も良くてレベルが高かったが、菊之助の三千歳が出てくると綺麗なだけで恋人同士の情の通い合いが感じられなくてつまらなかった。菊之助は大女というわけではないが、それでも菊五郎が一回り小さい感じでラブシーンがさまにならない。「三千歳、もうこの世じゃあ、逢わねえよ」という別れの台詞が好きなのだが、この二人では空しく響く。

「英執着獅子」

先月、時蔵のを見たばかりだ。 出てくるとき、左右に後見さんの持つ差し金の蝶が飛んでいる。その片方が芝のぶ。福助の踊りはうまくて色気もあって良かった。女形ではない方の後見さんが差し金を両手に持って蝶を動かし、福助がその間で踊る時があった。女が男の腕の中で動いているようで、なかなか色っぽい構図だと思った。

獅子になる前に花道を引っ込むとき、すっぽんで反り返りながら身体を回したので客席から盛大な拍手が来た。

獅子の赤い鬣が福助に似合う。時蔵は禿を二人連れたお母さんライオンのようだったが、福助は一人で踊って、4人の力者が絡む。若いメスライオン風で福助らしかった。

最後は何度も頭を回していた。