海外公演座談会と舞踊のひととき2008/11/26 22:17

2008年11月26日 歌舞伎座 午後1時開演 2階1列36番

幕が上がると、ユネスコ国際演劇協会会長(だと初めて知った。元NHKアナウンサーまたは解説委員という認識しかなかった)の永井多恵子さんが出てきて、ユネスコと国際演劇協会の説明を少しした。前任の会長は、500円のプログラムに「永山武臣会長三回忌追悼」と書いてある永山武臣氏だそうだが、永井さんは永山氏の名前がさっと出てこなかった。

下手に勘三郎の団七の写真パネル、上手に玉三郎の牡丹亭の写真パネルが下がっていた。玉三郎と勘三郎が羽織袴で現れて着席。玉三郎が長身で綺麗。

二人は洋装だと予想してたが当たらなかった。座談会の内容も、予想と微妙にズレて、玉三郎の中国での公演の話と、勘三郎のニューヨーク、ベルリンその他の公演の話だった。最近のことを考えれば全く不思議ではないのだが何故か私の脳みそは海外公演というと孝夫と玉三郎のパリ公演あたりが深く刻み込まれていて最近の動向にはついていけてない。

初めは、永井さんによると「長幼の序」(本当はレディファースト?)で、玉三郎が、なぜ中国で昆劇の公演を行ったか、昔に遡って話した。玉三郎が子供の頃、養父に、将来はどんな役をやりたいかと問われて「楊貴妃みたいな役」と答えたという話が玉三郎らしくて面白かった。20何年か前に「玄宗と楊貴妃」の舞台を観たが、あれはある意味玉三郎の夢の実現だったわけか。 「牡丹亭」は南座で先にやれてよかった、練習ができて、中国語の発音がとても難しい、という話をしていた。昆劇は蘇州語だが「北京の人は蘇州語がわからないから良かったんですよね」。

玉三郎の話は、ファンとしては内容は興味深いが、用意してきたものを話す感じでしゃべりはあまり流暢ではない。 玉三郎がしゃべっている間じっと黙って聞いていた勘三郎は、一度しゃべり出すとすごくうまい。英語で歌舞伎やったのは自分が初めてではないんですよと、パネルにした写真二つをスタッフ二人に持ってこさせ、これが六代目菊五郎で、と説明し、その隣りに立っている役者が「うちの祖父」と玉三郎が言ったりしていた。 スタッフが写真を持って引っ込むときに、背景に下がっていた大きな写真にぶつかったら、玉三郎が「あっ」と声を上げた。その後は写真が揺れているのが気になって話しに集中できなかったようで、とうとう立ち上がって揺れてるのを止めに行った。勘三郎も立ち上がって、いっしょに揺れていた玉三郎の写真の方を直していた。玉三郎につきあう勘三郎、偉い!

永井さんが、中国で得たものは何ですか、と聞き、玉三郎は「エネルギーですかね」。玉三郎の言葉をまとめて「それはクリエイティブということですか」と永井さん。玉三郎は「クリエイティブとかコラボとか、そういう辞書に載っている言葉じゃなくて・・・・」。

最後に第二部の舞踊を紹介したが、勘三郎が、「二長町で芝居見たって人、いらっしゃいます?」と客席に問い、いないと観て「ああ、みんな向こう行っちゃったんだね」

二十分休憩があって、第二部は舞踊。

最初が勘太郎と七之助の三社祭。 勘太郎、最高。 勘太郎の踊りは、基礎を完璧に身につけた人が長い手足を得て更に華麗に踊れるようになった、とでも言うべきか。振りの一々のレベルが凄く高くて、私はどちらかというと七之助の方のファンなのだが、こと踊りに関しては「弟もがんばれ」程度のことではとても追いつけないのではないかと思う。

次は勘三郎の「二長町」。昔、劇場があった場所だそうで、「音羽屋よ」「あら、私は播磨屋よ」みたいな台詞を散りばめた観劇風景のような踊り。動きは激しくないが応用問題というか、超上級者で演技力もないと踊れなさそう。こういうタイプの勘三郎の踊りは初めて見た。太鼓が雨の音を出し、 扇子を傘に見立てて踊る、という獅子虎傳で見たのをやっていた。この踊りの間に、陰囃子の傳左衛門の「いよー」という独特の声が聞こえた。

最後が玉三郎の「鐘ヶ岬」。これは昔見たことがあると思うが、忘れていた。娘道成寺にちなんだような綺麗な踊りだった。日本人形が動いてるような完璧な美しさ。

それぞれみんな自分に合ったものを踊っていて、とても満足できるミニ舞踊会だった。

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