セルリアンタワー能楽堂 正月公演 元日 ― 2010/01/01 21:38
2010年1月1日 セルリアンタワー能楽堂 正午開演
元旦に渋谷に行くのも3年目。去年は歌舞伎の初日が3日だったので2日にも行って広忠の大鼓が聴けたが、今年は2日は歌舞伎なので行けない。残念。
「祭り囃子」
小鼓は傳次郎。他に中太鼓(?)と笛。
長唄「寿三番叟」
ここから小鼓の傳左衛門が参加で、傳次郎は太鼓に。
舞踊「七福神」
立方 市川春猿
派手な振りの舞踊だった。
舞踊の後、一度引っ込んだ後再登場して、春猿が挨拶をした。
新春浅草歌舞伎 初日 第1部 ― 2010/01/03 01:01
2010年1月2日 浅草公会堂 午前 11 時開演 1階え列17番
お年玉ご挨拶は七之助。
「正札附根元草摺」
出演者のインタビューを聞くために借りたイヤホンガイドだが、こういう演目のときに説明を聞いていると、自分が知らない名詞が次から次へと出る。「市松模様の油障子」だの力紙だのカマヒゲだの。五郎と朝比奈の衣装の説明に使われている用語はほとんど全部知らない。「草摺」が、鎧の下部のヒラヒラした部分、というのも初めて知った。
鳴物は、真正面に昨日に続いて顔を見る傳次郎。五郎と朝比奈がせり上がってきたとき、五郎の方を勘太郎かと思って、結婚して少し太ったのかと思ったら、五郎は亀治郎だった。
朝比奈の踊りが期待以上に良かった。
「元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿」
愛之助の綱豊は、初め、いつもの愛之助が殿様の格好をしているだけだった。台詞が仁左衛門よりもこってりしていて私の好みからすると重すぎる。それは、思い入れたっぷりの「討たせたいのう」で頂点に達したが、その後しつこさが抜けて、高笑いでこの幕が終わるまですっきりしていた。
この重すぎる綱豊は、亀治郎のけたたましい助右衛門を受け止めるのにちょうど良かったようだ。質感は違っても「過度」なところがある両者はよく合い、完全に亀治郎の作品になっていた「かさね」のときと違って、2人が互角に渡り合っている感じがした。
今月に限らずこの演目は助右衛門が出てくるまでは退屈なのだが、亀治郎はどの助右衛門よりも笑いをとっていた。おかしなことをするわけではなく、台詞の調子で滑稽さを演出している。
愛之助は、羽織を脱いで白い着物だけになった時の方が顔が綺麗に見える。助右衛門と論争しながら時折助右衛門に向ける皮肉っぽい切れ長の目が魅力的だった。助右衛門との台詞の応酬が白熱してくると、歌い上げるような調子になってくる。やっぱり義太夫狂言に向いている人なのかもしれない。
「忍夜恋曲者」
去年の亀治郎の会で亀治郎がやった滝夜叉姫を七之助が、段四郎がやった光圀の役を勘太郎がやった。
舞台装置は一見亀治郎の会の時と同じなのだが、後ろに建っている屋敷は真ん中に折れ目がなくて、畳んでつぶれるようには見えなかった。浅草の屋台崩しは屋敷がせり下がった。
滝夜叉姫はすっぽんから出てくるのではなく、下手から出てきて、面灯りを持った黒衣2人がついた。
蝦蟇は出てきたが、宙のりはなかった。
演出は亀治郎の会の時より地味だったが、光圀の踊りは勘太郎の方がずっとうまかった。
新春浅草歌舞伎 初日 第2部 ― 2010/01/03 04:06
2010年1月2日 浅草公会堂 午後3時半開演 1階い列28番
お年玉ご挨拶は亀治郎。新年の挨拶から、プログラムには袖萩の人物相関図が載っていてよくわかる、イヤホンガイドを借りればさらによくわかる、という営業トーク、最後には、舞台が静かな時ほど携帯が鳴るのでもう一度ご確認を、と神経が行き届いた挨拶だった。
「奥州安達原 袖萩祭文」
亀治郎の会と巡業で、2種類の演出を観たが、これは、また別の演出だ。
亀治郎がやった二役の袖萩と貞任を今月は勘太郎がやる。しかし、二役と言っても、貞任の登場前に袖萩は死んでしまうので、亀治郎の時のように客席に背中を向けた貞任が袖萩の台詞を言ったり、袖萩の替え玉が出たり、ということはない。
最初の方で花道から出てきた袖萩と娘のおきみが、木戸の外で雪に降られ、おきみが自分の着物を脱いで母に着せかけたりするのだが、亀治郎の時と違って雪後見が帯を解くのを手伝ったりするせいか、子役 のけなげさの印象が薄い。涙を誘うのは孫を思う祖母浜夕の台詞である。
勘太郎は袖萩も良いが、背が高いので貞任が立派。ぶっかえりの時に衣装が映える。最後に黒い袖をくるくるっと巻いて決まるのがかっこ良かった。
義家(七之助)は、あまり動きがないのは同じだが、亀治郎主役のときのように上手にずっと動かないでいるような印象ではない。
観るのは数回目だが、イヤホンガイドの説明を聞いていると知らなかったことがたくさんある。桂中納言の格好をした貞任が現れると、プログラムを確認する観客が多い。亀治郎は、春秋座のポストトークの時に、中納言が突然現れると観客が理解しにくいので、中納言の入りからやる、と言った。そして、亀治郎の会の時は最初に中納言が出てきた。しかし巡業の時はそうではなかった。私は、中納言が突然現れて、観客に一瞬誰だかわからないのはかまわないと思う。すぐ後の種明かしでわかるのだから。
実際に書く場面を出すかイヤホンガイドの説明がなければわからないのではないかと思ったのは、源氏の白旗に書いた赤字の和歌。亀治郎主役の時は宗任が口に何か加えて旗の上に字を書く場面があったが、今月はない。
宗任役の愛之助は安定した演技。今月は太い声の役が多い。最後の貞任、義家と三人の渡り台詞もみんな口跡が良くて見事だった。
貞任役の勘太郎は、最後に赤旗を出すときに客席の方に放り投げたので、客の頭の上に赤旗をかぶせる思い切った演出かと驚いたが、放り投げた旗をうまく舞台の方に回収していた。 亀治郎が主役のときとの演出の違いにいろいろ思うところはあったが、最後は綺麗で盛り上がって、良い芝居だった。
「悪太郎」
はじめて観た。亀治郎の挨拶の時の言葉によると、段四郎が演じて以来二十年ぶりにやるそうだ。
大酒飲みで酒乱だが憎めない、という悪太郎のキャラは、段四郎がやった方がかわいいのではないかと思った。亀治郎は顔はよく似ているがキャラが違う。
悪太郎の伯父役の愛之助と、太郎冠者の男女蔵は、役が逆の方が良かったのではないか。
そういう細かいキャラの違いは別として、話も踊りも面白くなかった。狂言からとった話だが、腕白の悪太郎をこらしめるのを見てもカタルシスはない。踊りの振付が特に面白いわけでもない。
猿翁十種ということだが、猿翁が演じたときはどういう条件で客に受けたのだろうか。今月は亀治郎以外は踊りの腕はそれほどでもないからつまらないのだろうか。
新春浅草歌舞伎 第1部 2回目 ― 2010/01/16 22:59
2010年1月16日 浅草公会堂 午前11時開演 1階せ列
お年玉ご挨拶は、また七之助。今回は、昔は客席がガラガラだったという話はなくて、替わりにパンフとイヤホンガイドの宣伝が入った。
「正札附根元草摺」
初日に「せりあがってきた」と書いたが、それは記憶違いで、本当は五郎と朝比奈はお囃子の壇が二つに割れて、後ろから押しだされて来たのだった。
きょうのように遠くから観ると、亀治郎の体格が分かるので勘太郎と間違えたりはしない。亀治郎は顔も体格も力強さが足りない。勘太郎の踊りはきょうも良かった。
「御浜御殿」
亀治郎が少し静かになったような気がする。
愛之助の綱豊は助右衛門が出てくるまで客の気持ちを舞台に引きつけておくのはちょっと苦しい。仁左衛門でも梅玉でも眠ったことがあるから、なかなか難しいだろう。もう少し年をとって、台詞が心から言えるようになればと思うが、今はまだ中身がチンピラなので仕方ないか。愛之助の、綱豊の笑い声が気に入っているので、今後に期待している。
「忍夜恋曲者」
初日はちょうどこの演目の時に睡魔に襲われて、まともに観られなかったが、きょうはこれが一番良かった。
七之助の滝夜叉姫が下手から出て来るときに、七之助の後ろと花道から面明りを持った黒衣が出てきて左右につく。その蝋燭の明かりに照らし出される滝夜叉姫に古風な味があって良い。そして、きょうの席からは、下手側の壁に映る影が影絵のように美しく見えた。誰かあの影も入れた写真を撮ってくれないだろうか。
勘太郎の光圀の長い踊りは素晴らしいから、終わったとき思いっきり拍手したいのに、ここで拍手することにはなっていないようだ。1人で拍手するのも変だから我慢したが、拍手させてくれたら観てる方の気持ちがもっと盛り上がるのにと、残念に思う。
2010年 新春浅草歌舞伎 千秋楽 ― 2010/01/26 22:24
2010年1月26日(火) 浅草公会堂 第1部 午前11時開演 い列、第2部 午後3時半開演 あ列
第1部は3回目、第2部は2回目。きょう楽しみだったのは勘太郎の踊りと、袖萩祭文の最後に赤旗が翻るのを下から見上げること。
第1部の挨拶は愛之助だった。かしこまった新年の挨拶の後、立ちあがると雰囲気が一瞬で緩む。客席からの質問で降りて来た。きょうは自分の近くまで来たせいか、足袋のまま降りてきていることに今さらながら初めて気づいた。「綱豊役はどうですか」という質問に、まだ叔父の足元にも及びません、のような回答だった。 舞台に戻った後、拍手の練習ということで、「○階の皆さん、拍手~」というのをやった。確か、前は獅童がやっていた。
愛之助が、笑いたいときは笑ってください、拍手したいときはしてください、他の人が拍手しないから、と遠慮しなくて良いんですよ、と言ったので、きょうは勘太郎の光圀の踊りの最後で自分1人でも拍手しようと決心していたが、きょうは何故か光圀の踊りの途中でも最後でも、みんな拍手していた。思い切り拍手できて気持ち良かった。
第2部の挨拶は亀治郎。きょうは新年の挨拶の後、羽子板のプレゼントの抽選があった。最後に残っていた男女蔵の羽子板。黒衣さんが、チケットの半券の入った箱を持ってきて、亀治郎が引いた。当たったのは男性だった。
その後、また袖萩祭文の解説。初日と同じところもあったが違うところもあった。そもそも袖萩がなぜ、実家を訪ねて来たのか、初めて知った。自分でもあきれるほど基本がわかっていない。それと、宗任が白旗に赤い文字を書いたときに口にくわえていたのは矢じりだったことも初めて知った。阿部一族を滅ぼした矢じりを義家が見せ、宗任はそれで自分の身体を傷つけて血文字で歌を書いた。「いにしえの梅の花とは見ゆれども~」を現代語訳すると「あなたは私の兄さんですか」ということです、という説明が笑えた。
貞任役の勘太郎が赤旗を客席に向かって放り投げたとき、下から見ると赤旗ははるか上で翻り、すぐに舞台の勘太郎の手に戻った。
悪太郎は初日に観たときよりは面白かった。特に亀治郎の踊りが良くなって、面白いところも意識的に作っているような気がした。男女蔵と愛之助の踊りがもっとうまければ、もう少し見応えのある作品になるだろうに。
悪太郎の幕が下りて、観客がカーテンコールを待っていると、しばらくして幕が上がった。悪太郎に出ていた亀治郎、愛之助、亀鶴、男女蔵が並んでいて、男女蔵は、太郎冠者の衣装に、袖萩の時のケンジョウ役の鬘をかぶっていた。亀治郎と愛之助がさかんに下手の方においでおいでをして呼び、スーツ姿の勘太郎と七之助が出て来た。みんな揃ったところで客席にお辞儀をし、それだけで幕が下りた。今年のカーテンコールはこれで終わり。
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