取り立てや お春2010/11/08 21:09

2010年11月3日 明治座 午後5時開演

隼人目当てに観に行った、黒木瞳主演の舞台。隼人を十分に楽しめて満足。

落語で聞いたことがあるような話をエピソードとしてちりばめたコメディ。お春の黒木瞳は、前半の、取り立てやとしての要素が強いところは、、少し前だったら浜木綿子で観たかったと思う役柄。後半は、花魁姿になったりして綺麗なシーンが多くて、こちらの方が黒木瞳には合う感じだ。

隼人は、黒木瞳の登場より早く、芝居が始まって間もなく、父の役の錦織一清といっしょに出てくる。息子の松之丞は、廓で遊ぶことに批判的で、「父上は、不潔です!」と言ったりする。話が進むにつれ、この親子が大石内蔵助と、元服したばかりの主税だということがわかってくる。進行中の話とは関係なくても、誰かと追いかけっこをして舞台を駆け抜けたり、隼人が出ている時間は長い。

廓に二十両の借金を作って居残りになっている弥七が石黒賢で、準主役。 石黒賢は頭が良さそうな人だと思って、最近気に入っている。 お春は、贔屓役者の襲名のために二十両という金を作ろうとし、弥七から二十両を取り立てようとする。そのために、心中の相方とか、弥七に来る変な仕事を片っぱしから引き受けて稼がそうとする。

その、心中の相方を頼んできた花魁のおそめ役は嘉島典俊。他にも三役やる。芸達者。

弥七に持ち込まれる仕事の1つが、一番の売れっ子の花魁を相手に、主税の「筆おろし」をさせてくれというもの。お春が一番の売れっ子に化ける。主税とお春が寝所に入り、初めは主税は何もしないで一晩過ごそうと言うのだが、いろいろあって、最後は2人のキスシーンで舞台が回る。生十六歳にこんな役をやらせて良いのか、と思うような、観る側にはワクワクドキドキの展開。

翌朝、父にいろいろ聞かれても「知りません」と言っている主税だが、廓を去るときには「相手もいたく喜んでおりました」「父上とは、若さ、が違いますから」と言う。

廓の女将役で波乃久里子も出ていて、ブログラムには勘三郎からのメッセージもある。亭主役は渋谷天外。

本編が終った後、「フィナーレ」がある。宝塚の習慣なのか?出演者がみんな登場して、赤いタスキと赤いハチマキで、黒木瞳の歌に合わせて踊る。隼人がすごく楽しそうに、歌も口ずさみながら踊っていた。ちょっと女形が入ってるようだった。

永楽館大歌舞伎 2010年2010/11/09 23:07

2010年11月7日 永楽館 午前11時開演 ほ-10


去年は城崎温泉に泊ったが、今年は、その隣りの駅の竹野に泊った。一駅だから大して変わらないと考えたのが浅はかで、竹野は電車が一時間一本くらいしか来ないので、城崎温泉のときより、移動の自由度がかなり低くなった。電車とバスの連絡が悪くて、出石のバス停に開演55分前に着くか、2分前に着くかの選択で、バス停から永楽館まで2分ではいけないので、55分前に着くのを選択するほかなかった。 「休暇村 竹野海岸」は、景色も料理も素晴らしかったが。

出石は去年より人が多く、観劇後に入ったおそば屋さんも、私が出た時は入り口に行列ができていた。去年は、涼しかったけれども8月だったので観光客が少なく、今年は秋なので、人がたくさん来ていたということだろう。 これも休日だからで、永楽館で役者の口上を聞いたら、平日はあまり人がいないようだ。

永楽館は、去年は演目と出演者が書いてある小さい団扇をくれたが、今年はなかった。

「近頃河原の達引」

初めて観た。数年前に歌舞伎座でやったときは仁左衛門が出ないから観なかったのだが、観ておけばよかった。 主役の与次郎役を愛之助は我當に教わったそうで、たしかに我當がやったら良いだろうな、と思う人情味あふれる役だ。

お俊役の吉弥は、老け役が多いが、あでやかな女の役が似合う。与次郎が愛之助がだと「えっ、いもうと~?」と驚くような貫録だ。

与次郎が自分と妹の布団を敷くが、与次郎には敷布団しかない。あれだったら、真ん中で折って中に挟まって寝れば良いか、と見ていたら、与次郎は布団といっしょにぐるりと回り、ロールケーキのようになった。

与次郎とお俊が寝た後、お俊の恋人の伝兵衛役の薪車が花道から登場して、戸口でお俊を呼ぶ。お俊が伝兵衛を中に入れると与次郎が気づいて起き上がり、伝兵衛を追い出そうとして間違えて妹の方を外に出してしまう。この辺は喜劇。

薪車は祝言のときの留袖がよく似合う。

愛之助は、2人の祝言のために猿回しをしながら歌うところは、うまい。芝居全体としては、形だけという印象が強い。年代的に貧乏な生活を見たことがないだろうし、役が身体に馴染んでくるには、もっと人生経験が必要かな、と思う。


「口上」

去年は口上はなかった。出演者が少ないので、一人一人が長くしゃべる。いたって真面目にしゃべっていると思えた竹三郎が最後に「私は愛之助さんより二つほど上なので」としれっと言うので、みんな爆笑。吉弥が噛んだり、薪車が「~です、はい」と言ったりで、場内大受けだった。 薪車の口上をはじめて聞いた。スラスラしゃべれる人だ。

前の演目の猿の人形は操り人形なので、プロが天井にいて動かしているのかと思っていたが、吉弥が口上で、自分も動かしたことがあると言っていたので、役者がやっているのかと驚いた。

「吉野山」

今回、はじめてスッポンを使ったそうだ。人力で持ち上げるので、愛之助の忠信がスッポンから現れてもすーっと上がってこないで、つっかえながら上がってきて、最後のもう一息で少しつかえていて、やっと最後まで持ち上がってほっとする、みたいな感じだった。最後は、私が観るのは南座の勘三郎以来の、狐にぶっかえって、狐六法で引っ込む型だった。

吉例顔見世大歌舞伎 昼の部 「天衣紛上野初花」2010/11/28 22:52

2010年11月20日 新橋演舞場 午前11時開演  1階10列27番

筋書きに写真が入ったか、早いな、と思ったが、もう20日なのだ。

河内山宗俊の出る芝居と直侍の出る芝居を観たことはあるが
「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)」の通しを観るのは初めてだ。

幸四郎の現代性が、河内山の役にプラスに作用している。オレンジ色の絽の羽織も、役のいかがわしさを増す小道具のように着ている。


松江の殿様役の錦之助が、実に良かった。品のある二枚目役が生きている。若いときは顔が孝夫ばりなだけの役者だったが、50過ぎて、味が出てきた。苦悩を顔に滲ませながら河内山の話をじっと聞いている様子がとても良かった。

極め付けの菊五郎の直次郎。蕎麦を食べるシーンはあっさりしている。直次郎と三千歳の綺麗な見せ場で睡魔に襲われた。

「もうこの世じゃあ逢わねえぜ」の後の幕が立ち回りだったこともあるように記憶しているが、今月は河内山妾宅の場になり、「御用だ、御用だ」で幕切れだった。