亀鶴の和尚吉三2011/01/13 16:01

2011年1月13日 浅草公会堂 午前11時開演 2階つ列26番


新春浅草歌舞伎の第一部を観に行ったら愛之助が休演で、写真のようなお知らせが入り口に出ていた。愛之助の休演は残念だが、おかげでレア物が見られて得をした。

お年玉ごあいさつは、きょうは亀鶴の予定だったが、代わりに笑三郎。和尚吉三の代役の前に、いつものあんなことやっていられないだろうなあ。笑三郎のあいさつは初めてなので嬉しい。

笑三郎が愛之助の休演を告げたら場内がどよめいた。和尚吉三の代役は亀鶴で、亀鶴がやっていた十三郎の役は(國矢と初め言ったので、そーか、舞台番の役もやるのかなと思っていたら、次に言うときに言い直して) 國久。「私は十三の役をやったことがあるので、ひょっとして代役が来るかと思ってたんですが、あなたはご挨拶だけで良い、ということで・・・・」と笑わせた。

「三人吉三巴白浪」

2階から観ると、役者の背丈の差がよくわかる。最初に花道に出るおとせの新悟とお嬢の七之助は2人とも長身。おとせの影が後ろの壁に映っているのを見て、去年の滝夜叉姫を思い出した。舞台が開いたときに、正面の波布の下の一部が四角く抜けているので何だろうと思っていたら、そこはおとせが落ちる場所だった。

和尚吉三は花道から出て来る。初日に観たときは姿を現すより先に花道奥から声がしたような記憶があるが、きょうは聞こえなかった。私の記憶違いかもしれないが。

代役の亀鶴は、プロンプターはついていたようだが、私の席からはほとんど聞こえなかった。たまに、プロンプターの声を聞いているのか、間をとっているのか、判断がつきかねる個所もあった。暗記しているかどうかを別にすると、台詞はとても良かった。特に、弟妹を殺した後の、「いや、無慈悲じゃあねえ」以降の台詞が際立って良かった。

台詞に比べると動きの方は、やや手探り感があったかもしれないが、二つの首を抱えて花道を引っ込む姿は立派だった。いつ代役が決まったのか知らないが、一日やそこらでうまくできるような役ではないだろう。
愛之助よりニンに合っている気もする。

十三郎の役は演舞場の花形歌舞伎のときは松也がやっていたから、普段は女形をやっている國久がやる方が亀鶴より普通なのかもしれない。台詞はうまいが、プロンプターの声がずっと聞こえていたし、ごく一部だが台詞が言えなくなったり笑われたりして気の毒だった。あの役は亀治郎が早替りでやった方が良かったんじゃないかと思ったほどだ。

お坊と和尚2人の場面は、万一亀鶴が台詞を言えなくなっても亀治郎がどうにかするだろうと安心していられたが、和尚とその弟妹3人の場面は、代役2人と若い新悟だけなので、ちょっと不安だった。しかし、舞台はおおむね無事に進行した。皆さん、お疲れ様でした。

私は浅草で役者が日替わりで役を取り替えてやっていた時代を知らないし、今みたいにチケットが売れるようになったら、もうやらないだろうが、同じ演目を日によって違う配役で観るのは面白い。

「独楽」

あと2回観る予定だが、2階で観るのはきょうだけなので、踊りを観るにはきょうがベストの席だったかもしれない。亀治郎の踊りを気持よく観た。後ろに投げた扇子を段之がはっしと受け止める、ノールックパスも素敵。引き抜きがあるが、引き抜きの用意をしながら独楽の曲芸を見せて客の目を逸らせる工夫がすごい。