2011年 セルリアンタワー能楽堂 正月公演2011/01/01 18:47

2011年1月1日 セルリアンタワー能楽堂 正午開演 

自由席三千円のこの正月公演を2008年から観るようになった。

今年は中正面の後方、正面よりに座ったら、春猿が踊るときに、柱がかなり邪魔になった。

最初は「祭り囃子」。新年に聴くお囃子は清々しい。チケットには傳左衛門の名前が入っているが、この演目の時はいなかったような気がする。

少し休憩があって、その後に長唄「鶴亀」。傳左衛門と傳次郎は橋懸りから出てきた。傳左衛門の「イヨオ」という声は良い。三味線は苦手だが、長唄には心ひかれた。

間に休憩はなくて、舞踊「島の千歳」。これには傳次郎はいなかった。春猿は黒い着物。春猿は先週南座で観て、明日は浅草で観る予定。初めは柱の陰になって顔が見えなかったが、少し動くと顔が見えた。男には見えない優雅な顔。特にうまいのではないが、華やいだ踊りだった。


踊りが終わって一度引っ込んだ後、すぐに出てきて、傳左衛門と傳次郎も続いた。春猿のあいさつの後、最後は傳左衛門の音頭で一本締めをした。

2011年 新春浅草歌舞伎 鏡開き2011/01/02 22:45

2011年1月2日 午前9時半

3年ぶりの鏡開きだ。去年は早起きする気力がなかったが、今年は、春猿、笑三郎、新悟という新顔が加わるので見てみたかった。

10分前に着いたが、もうとても混んでいた。

誰が何を言ったか全部は覚えていないので、断片的に。

亀治郎 今年は勘太郎さんは・・・どこだっけ・・・(と七之助に聞いて、)池袋

愛之助 今年は亀治郎さんの2012年に地球が滅亡するという話がなくて良かった

亀鶴 今年の抱負は忍耐、感謝、向上心

七之助 前に壺坂霊験記に出たときは観音様の役でしたが、お里の役ができることになりました。

笑三郎 浅草は15、6年ぶり。僕は台東区民です。

春猿 私も浅草は15、6年ぶり。亀治郎さんと久しぶりに共演ができてうれしい。

新悟 7年前に初めて出て、2回目です。

2011年 新春浅草歌舞伎 初日 昼の部2011/01/02 23:19

2011年1月2日 第1部 午前11時開演 1階け列26番

お年玉ごあいさつの最初は亀鶴。舞台の上でかしこまって新年のあいさつをした後、よしっとマイクを持って客席に降りた。今年は七之助のあいさつがなくて七之助ファンは残念だろうと、ファンに挙手を求めた後、その一人に七之助に関する、○×で答える三つの質問をした。「七之助は五代目である」「×」「正解。二代目です」「七之助が子供の頃、勘太郎といっしょに作った芝居は「地獄の沙汰も金次第」である。」「×」「正解。作ったのは「地獄めぐり」」「七之助は焼き肉が好き」「×」「微妙ですが、正解。好きなのは生肉です。でも生肉を差し入れるのはやめてください」 ということで、七之助のサイン入り手ぬぐいをもらっていた。

「三人吉三巴白浪」

私は今までずっと「さんにんきちざ」と言ってきたが、鏡開きのときの役者のあいさつイヤホンガイドでは「さんにんきちさ」と言っている。Googleで調べたら、「きちざ」もかなりヒットするが、「きちさ」が正しいようだ。知らなかった。

大川端の場、最初に新悟のおとせが花道から出てくる。それに続いて、七之助のお嬢。新悟のおとせは前にも観たことがある。

七之助のお嬢は台詞がはっきり聞こえて声もよくとおって良かった。最近見たのは玉三郎と菊之助だが、七之助がベストのお嬢だ。

お坊の亀治郎は、声が少しこもって七之助に比べると台詞がやや不明瞭。しかし、亀治郎の野良犬風の顔が浪人役に合っていると思う。お坊の正しいイメージというのがどうもわからないのだが、亀治郎のお坊は、ひょっとすると近いイメージなのかもしれない。男にしては身体が華奢すぎる気もするが、昔の人はこのくらい華奢だったのかもしれないとも思った。

和尚の愛之助も、七之助ほど台詞がクリアに聞こえない。太い声を出すときの常で、音量が足りないように感じる。
兄貴としての貫録はない。

大川端の場の後、和尚が父親に金を持って行って断られるところなどが省略されて、吉祥院の場になる。それで、大川端の場が幕になると舞台番役の澤村國矢が花道七三で、省略した部分のあらすじを語る。プログラムには人物相関図が載っているのでそれを観ればわかるが、それがないと「デンキチが~」と出てこない人物がしたことを語られても頭に入らない。國矢も最後には和尚とおとせと十三郎が兄弟だということさえ頭に入っていれば、後はいいです、みたいなことを言っていた。

裏手墓地でおとせと十三郎を手にかけた和尚が、2人の首を抱えて花道を引っ込むところは、「すしや」の権太のようだった。

大詰の本郷火の見櫓の場は、雪が降って、お坊が花道から、お嬢は上手から登場し、綺麗だった。

「独楽」

亀治郎が舞踊に徹していて、とても良かった。同じ猿翁十種の内でも、去年の悪太郎はたぶん亀治郎に合わなかったのでつまらなかった。

後半に引き抜きがあって、独楽のような柄の着物に変わり、その姿で亀治郎がくるくる回る。最後は、大きな日本刀の上でくるくる回って幕になる。


イヤホンガイドで休憩中に流していた、ファンからの亀治郎に対する質問と回答の中に印象的なものが二つあった。「龍馬伝」に出たときの話で、亀治郎と香川照之の初共演が画面に映ったのを見て、福山雅治が「どっちがどっちかわからない」と言った。もう一つは、子役の時にやったいろいろな役で印象に残っているものとか失敗談、という質問で、印象に残っているのは初舞台の安徳天皇と、「雙生隅田川」の松若丸、梅若丸で、早替りをやり、宙乗りもやったという答え。

私は、「雙生隅田川」を観た。早変わりは覚えていないが、猿之助と菊五郎の間にぶら下がって宙乗りした姿を覚えている。

2011年 新春浅草歌舞伎 初日 夜の部2011/01/03 01:07

、第2部 午後3時開演 1階え列20番

この席はお年玉ごあいさつの亀治郎の顔が真正面から見られてなかなか良かった。亀治郎は横顔より正面の顔が良い。最後は、亀ちゃん、にらみもやっちゃうか?みたいな勢いだった。

「壺坂霊験記」

去年、福助と三津五郎でやったのを観たが、仏教の布教目的とかならともかく、大人が真面目に観る話ではないと思った。話自体の感想は今回も変わらない。

愛之助の沢市は、関西弁はさすがにうまい。しかし盲目のときに悲しんでいる姿に真実味を感じない。教わったという我當の名残はあるが、愛之助には我當から感じる生真面目さがないのでうそっぽい。目が開いて喜ぶ姿はかわいくて良いと思う。


「黒手組曲輪達引」

これは、前に菊五郎で観たときより面白かった。亀治郎が助六、というのはガラでもないと思ったが、パロディというのがはっきりして、かえって良いかもしれない。

序幕、番頭権九郎(亀治郎)が白玉(春猿)の腕をつかんで花道を出てきた姿は、中年のさえない親父が綺麗な若い女と駆け落ちしてきたというアンバランスさを、絵としてよく示していた。亀治郎と春猿が立役と女形で恋人風に絡んだのを観たのは初めてだ。

権九郎が小屋の中に入り、やがて牛若伝次といっしょに出てくる。この時、亀治郎は牛若伝次に早変わりしている。私の席からは、亀治郎が中に入って奥に消え、別の権九郎とすりかわるのが見えてしまった。

序幕の最後に、亀治郎は「顔の同じ従兄に福山雅治を紹介してもらってバックコーラスにでもなろうか」と言い、花のついたスタンドマイクを持ち出して、福山の歌を流して口パクした。菊五郎がやった時もお笑いがあった幕だが、今月の方が私の好みだった。

イヤホンガイドによると、序幕と次の幕以降は話として続いてないのだそうだ。

大詰めに水入りがあった。 本物の助六が喧嘩に負けて謹慎してる間に水入りまでやっちゃう? 去年の演舞場の助六と同じで最後は舞台中央の梯子の上で幕になったが、亀治郎の細い足が水に濡れて光っていた。

今年は、事前の予想通り、亀治郎中心だった。「独楽」も「黒手組」も亀治郎の芸を見せられる演目なので、よく選んだと思う。「黒手組」には色物感はあるのだが、それでも亀治郎の芸がしっかりしていることはわかる。

海老蔵の怪我による休演は歌舞伎界にいろいろな結果を生んだ。笑三郎の役が三浦屋女房だけなのは少しさびしいが、春猿、笑三郎と亀治郎が思いもかけずまた共演することになって、これからどうなって行くのだろう。

ル テアトル銀座 坂東玉三郎特別公演2011/01/03 19:18

2011年1月3日 午後2時開演 17列13番

天井に飾り付けたまゆ玉でロビーが正月らしく華やいでいる。この公演自体が、要約すると「玉三郎といい男を楽しもう」みたいな、私の1年の始まりにふさわしいもので、最高。

玉三郎と獅童の過去の公演の写真を売っていたので、開演前に急いで買った。

17列13番はずいぶん後ろだと買ったときに思ったが、傾斜があるので前の人の頭に邪魔されることはなく、真ん中で全体が見渡せる良い席だった。ほぼ中央なので、獅童はずっと真正面に座っていたし、玉三郎の口上も真正面に見られた。

「阿古屋」

最初に舞台中央の襖が開いて重忠役の獅童が出てきた。獅童を見るのは四谷怪談以来だ。衣装が似合ってかっこいい。こんなにかっこいいんだから、もっと頻繁に東京で歌舞伎に出てほしい。

人形振りの岩永役は猿弥。阿古屋をすでに何回もやっている玉三郎はともかく、獅童と猿弥は突然のことで稽古が大変だったろう。

玉三郎は下手の扉から仮設の花道を通って出てくる。獅童が階段に片足を下して立った姿が美しい。その下に玉三郎が身体を投げ出すと、綺麗な玉三郎と綺麗な獅童で絵になる。獅童は台詞も悪くなかった。正月に獅童の歌舞伎が観られて良かった。

榛沢六郎は最初気がつかなかったが、台詞を聞いて弘太郎だと気付いた。

この演目に限らず、コンサートでも睡魔に襲われるのが私の癖で、楽器の演奏の間は何度となく寝たり覚めたりを繰り返した。

最後、玉三郎が「うんっ」と合図したような感じで全員のポーズが決まり、幕になった。とても綺麗だった。

「女伊達」

最初に花道に出てきたのは男伊達、イケメンの功一。次にもう一人の男伊達、松次郎。この2人は、前に歌舞伎座で阿古屋をやったときは捕手だったと思う。続いて玉三郎が現れて、三人の立ち回りがある。松次郎はしょっちゅう駕籠かきをやっているせいか、玉三郎の相手としては少し無骨。功一の方が当然のことながら玉三郎の色に染まっていて優雅。傘についている紋は松次郎は松嶋屋の紋。功一は大和屋の紋。

三人の立ち回りの後、玉三郎が中央にすわり、その後ろの下手、上手に功一と松次郎が座って、玉三郎の口上があった。
あけましておめでとうございます、の後、元日の歌舞伎本公演は関西ではあるらしいが東京では昭和21年以来という話、ルテアトル銀座がセゾン劇場だった頃から玉三郎は何回も出ているという話などをした。懐かしいバリシニコフとの公演についても触れてくれて嬉しかった。この劇場には提灯もなくて、しつらえました、ということで、今は提灯が飾ってある。海老蔵公演のために用意したものなのだろう。玉三郎が、これからも歌舞伎をよろしく、ということで観客は拍手した。

その後、しばらく玉三郎一人で踊った。それが色っぽくて玉三郎ならではで、ファンとしてはこたえられない。

その後は、若い者たちとの絡みになった。やまとやと書いた傘を全員が広げて決まったりしたが、玉三郎ともう一人が並んで身を屈めている上を飛び越えるとんぼがすごかった。2人を飛び越えること自体は珍しくないが、シンの役者がああいう風に屈んで上を飛ばせるのは初めて観た。

最後にまた男伊達2人が戻ってきて立ち回りになる。功一は膝から下が長くて綺麗だ。

幕になった後、カーテンコールがあるとみんな知っているので拍手をしていたら、幕が開いて、玉三郎が三方にお辞儀をし、その後は男伊達、若い者も加わって、お囃子も鳴って終わりになった。

プログラムには、観に行けなかった八千代座の「羽衣」と「吉野山」の写真もあってラッキーだった。

亀鶴の和尚吉三2011/01/13 16:01

2011年1月13日 浅草公会堂 午前11時開演 2階つ列26番


新春浅草歌舞伎の第一部を観に行ったら愛之助が休演で、写真のようなお知らせが入り口に出ていた。愛之助の休演は残念だが、おかげでレア物が見られて得をした。

お年玉ごあいさつは、きょうは亀鶴の予定だったが、代わりに笑三郎。和尚吉三の代役の前に、いつものあんなことやっていられないだろうなあ。笑三郎のあいさつは初めてなので嬉しい。

笑三郎が愛之助の休演を告げたら場内がどよめいた。和尚吉三の代役は亀鶴で、亀鶴がやっていた十三郎の役は(國矢と初め言ったので、そーか、舞台番の役もやるのかなと思っていたら、次に言うときに言い直して) 國久。「私は十三の役をやったことがあるので、ひょっとして代役が来るかと思ってたんですが、あなたはご挨拶だけで良い、ということで・・・・」と笑わせた。

「三人吉三巴白浪」

2階から観ると、役者の背丈の差がよくわかる。最初に花道に出るおとせの新悟とお嬢の七之助は2人とも長身。おとせの影が後ろの壁に映っているのを見て、去年の滝夜叉姫を思い出した。舞台が開いたときに、正面の波布の下の一部が四角く抜けているので何だろうと思っていたら、そこはおとせが落ちる場所だった。

和尚吉三は花道から出て来る。初日に観たときは姿を現すより先に花道奥から声がしたような記憶があるが、きょうは聞こえなかった。私の記憶違いかもしれないが。

代役の亀鶴は、プロンプターはついていたようだが、私の席からはほとんど聞こえなかった。たまに、プロンプターの声を聞いているのか、間をとっているのか、判断がつきかねる個所もあった。暗記しているかどうかを別にすると、台詞はとても良かった。特に、弟妹を殺した後の、「いや、無慈悲じゃあねえ」以降の台詞が際立って良かった。

台詞に比べると動きの方は、やや手探り感があったかもしれないが、二つの首を抱えて花道を引っ込む姿は立派だった。いつ代役が決まったのか知らないが、一日やそこらでうまくできるような役ではないだろう。
愛之助よりニンに合っている気もする。

十三郎の役は演舞場の花形歌舞伎のときは松也がやっていたから、普段は女形をやっている國久がやる方が亀鶴より普通なのかもしれない。台詞はうまいが、プロンプターの声がずっと聞こえていたし、ごく一部だが台詞が言えなくなったり笑われたりして気の毒だった。あの役は亀治郎が早替りでやった方が良かったんじゃないかと思ったほどだ。

お坊と和尚2人の場面は、万一亀鶴が台詞を言えなくなっても亀治郎がどうにかするだろうと安心していられたが、和尚とその弟妹3人の場面は、代役2人と若い新悟だけなので、ちょっと不安だった。しかし、舞台はおおむね無事に進行した。皆さん、お疲れ様でした。

私は浅草で役者が日替わりで役を取り替えてやっていた時代を知らないし、今みたいにチケットが売れるようになったら、もうやらないだろうが、同じ演目を日によって違う配役で観るのは面白い。

「独楽」

あと2回観る予定だが、2階で観るのはきょうだけなので、踊りを観るにはきょうがベストの席だったかもしれない。亀治郎の踊りを気持よく観た。後ろに投げた扇子を段之がはっしと受け止める、ノールックパスも素敵。引き抜きがあるが、引き抜きの用意をしながら独楽の曲芸を見せて客の目を逸らせる工夫がすごい。

愛之助の和尚吉三2011/01/23 18:26

2011年1月22日 浅草公会堂 午前11時開演 1階え列17番

きょうの年始ごあいさつは愛之助。絶妙のタイミングで「松嶋屋」の掛け声がかかった。舞台で正座してあいさつした後、立ちあがって花道に行き、きょうの演目について簡単な説明をし、また舞台に戻って、拍手の練習をした。客席に降りて質問を受けるコーナーはなかった。

「三人吉三巴白浪」

イヤホンガイドを聞きながら、あのかぶり方は「吹き流し」というのかと、おとせ役の新悟を見た。続いて出てきたお嬢役の七之助の衣装についても詳しい説明が入る。この席は花道七三にいる役者がよく見える。

和尚吉三が花道から出てくるとき、先に奥から声がしたような気がしたのは私の記憶違いだった。花道の奥から声が聞こえるのは独楽の亀治郎だ。

愛之助の和尚吉三は初日に観た時にパッとしないと感じたので、13日には亀鶴の和尚で嬉しかったのだが、きょう観たらとても良かった。和尚吉三というのが良い役なのだということを初めて実感できたし、今月は省略された場も別のときに是非、愛之助の和尚で観たいと思った。

大川端でお嬢とお坊を止めに入ったときの台詞は耳に快く響く。外郎売の言い立てのときに感じたのと同じく、口跡が良いと同時に台詞の抑揚がうまい。

もっと良かったのは吉祥院本堂の場。大川端の場の、少し毛が伸びた坊主のかつらより、この場のつるっとした坊主のかつらの方が似合うし、着てるものも似合う。おとせと十三郎から話を聞いているときの感情表現が細かく、かつ無理がない。2人を殺す決心をして墓場に行かせ、源次坊の持っていた包丁を取って口に咥えるあたりは殺気が漂う。

あいさつの時は気付かなかったが、愛之助は頬の肉が落ちて初日より精悍な顔になっている。大川端の時に目つきが精悍だったから、ああやって兄貴の貫録を出そうとしてるのかと思ったが、吉祥院の場で出てきたときに、顔が細くなっているのに気付いた。これなら、来月の三五郎も期待できるかも。

前に玉三郎、団十郎、仁左衛門で三人吉三を観たとき、お坊の仁左衛門の演技が平凡だったので、それ以来、この話自体がつまらないのだと思って来た。しかし、きょうの愛之助の和尚を見て、うまい役者が和尚をやれば面白い話なのだと考えを改めた。仁左衛門の和尚が見たくなった。

「独楽」

初日にもイヤホンガイドを借りたが、独楽のときは聞いていなかったようで、初めて聞く話ばかりだった。亀治郎が出てきたときの着物の模様は括り猿というのだそうだ。

予想したことだが、この席だと亀治郎が舞台の真中に来ると足が見えない。
踊りを見るときはやっぱり2階が良い。

2011年 新春浅草歌舞伎 千秋楽2011/01/26 23:30

2011年1月26日 浅草公会堂

今年の浅草歌舞伎も千秋楽を迎えた。

第一部 午前十一時開演 一階え列20番

お年玉ごあいさつは愛之助。きょうの席からは真正面に見える。22日に観たときと基本的に同じだが、拍手の練習をきょうは一階、二階、三階に分けてやった。獅童を思い出した。獅童のごあいさつは好きだった。戻ってきてほしい。愛之助はまだ喉が本調子でないのか、、最後に「御願いあ~げたてまつります」の声が妙に高くなって女形のようだった。お坊役の亀治郎も気のせいか鼻声のようだった。


4回目なので、今まで書けなかった雑感を書く。

「三人吉三巴白浪」

おとせ役の新悟はやさしそう。

和尚の台詞をじっと聞いていた。「もっそう飯も食ってきた」の「食ってきた」は kuttekita は kuttkita のような発音だ。「て」の母音が欠落している。愛之助は江戸弁は外国語みたいと言っているが、本当に、東京育ちの人間でも外国語のように音声を聞きながらでないと台詞は覚えられないだろう。

おとせと十三郎は双子の役だ。演舞場のときの梅枝と松也は年も近いし似たタイプで双子向きだった。新悟と亀鶴は違いすぎる。

七之助のお嬢は、吉祥院で欄間から降りてくる時に最後ポーンと跳び下りるところや、最後に火の見櫓の梯子を上っていくところが、手足の長い若い男の子らしくて良い。吉祥院の場のお嬢お坊の「会いたかったぜ」「会いたかったよ」と手を握るところは、2人ともボーイズラブ風に見えることを意識してやっているようで、客も沸く。

和尚が源次坊から包丁を受け取って、「ここは俺がかたしとく」と言った。「かたす」というのは川口の小学校にいた頃、周りの子が使っていて、あの辺の方言だと思っていたが、江戸方言だったのか。

墓場で和尚がおとせと十三郎を殺すとき、最後におとせと十三郎が和尚の腿にすがりつく。演舞場の松緑は少し腰を落とし気味にして膝を曲げ、2本の脚と床が5角形を作っていたが、愛之助の脚と床はほとんど三角形に見えた。

源次坊役の山左衛門はうまい。

本郷火の見櫓の場で、お嬢は梯子を上るのに邪魔にするので長い袖の先を縛って、首の後ろにひっかける。それでも様になる。着物は素晴らしい。

「独楽」

引き抜きのとき、亀治郎が足を上げてまわる度に段之が着物の裾から糸を引き抜いていた。

一部の後、外に出たら、花が飾ってある手形があり、見たら喜味こいしだった。

第二部 午後三時開演 一階え列33番

ごあいさつは亀治郎。

「壺坂霊験記」

上手の席なので、谷に飛び込むところがよく見えた。あの下がどうなっているのか見たい。夜の部も、一度上から見ればよかった。

この話は人形がやると良い、人間が演じると素直に受け入れるのが難しい、というのはわかる。人間でも、もっとずっと若い役者だっから本気でやってるように思えて、もっと共感するかもしれない。今月の2人の場合、七之助には終始共感できる。愛之助は、いかにも分別盛りの大人で、身を投げるところまでは、どうも本気と思えない。

目が開いてからは2人とも可愛くて、観ているこちらも楽しくなる。2人で手をとって喜び合うところなど、文句なく可愛い。愛之助をよく知らない人が第一部と第二部を通して観たら、同じ坊主でも和尚と沢市が同じ役者とは思えないだろう。


「黒手組曲輪達引」

最初のおふざけの場が一番好きで、一番しっかり観た。初日にも思ったが、この場の亀治郎はふざけているようでいて、腰と脚の動きが凄い。
きょうは、福山の口パクをやって最後に合格の鐘が鳴った。「二五回目でやっと合格」と言った。


どこかで昨日のサッカーネタ使うだろうと思っていたが、股くぐりの最後の人が、足を開いて立っている亀治郎を指して、「きのうのゴールキーパーの川島みたい」と言った。

最後は、助六が梯子から降りてきて、揚巻の七之助と2人で舞台に座って、亀治郎が「まず当月はこれぎりー」と言って終わりになった。客席は緞帳が下りた後もカーテンコールを期待して拍手して待っていたが、終わりのアナウンスが入ったので、みんなあきらめて席を立った。

帰りに、ロビーで、安くなっていたお菓子を買って帰った。売っていた人が「どうぞ来年も浅草に」と言ってくれたので、強くうなずいた。