四月大歌舞伎 ― 2019/05/17 23:54
2019年4月16日 歌舞伎座 午後4時半開演 3階2列2番
「実盛物語」
仁左衛門の実盛を見るのは二度目。前回は太郎吉役が千之助だった。今回は真秀。真秀はかわいくて、仁左衛門に頭なでなでしてもらう姿がかわいい。
「黒塚」
きょうの目当てはこれ。猿之助は安定のうまさ。山伏に種之助、鷹之資がそろっているが、特に踊りの見せ場があるわけではない。
猿之助の踊りは見ていて普通に楽しいが、やっぱり老女が鬼女になる、何度もジャンプするあたりから舞台が盛り上がる。花道七三で仏倒れで倒れてすぐに向き直るところは、今回は一瞬暗転した。
「二人夕霧」
寄せ集めのメンバーで、みんなバラバラに演技していてまとまりがない。吉田屋のパロディなのだが、伊左衛門役の雁治郎に主役感がなくて、背が高い弥十郎ばかり目立つ。孝太郎はうまかった。
「実盛物語」
仁左衛門の実盛を見るのは二度目。前回は太郎吉役が千之助だった。今回は真秀。真秀はかわいくて、仁左衛門に頭なでなでしてもらう姿がかわいい。
「黒塚」
きょうの目当てはこれ。猿之助は安定のうまさ。山伏に種之助、鷹之資がそろっているが、特に踊りの見せ場があるわけではない。
猿之助の踊りは見ていて普通に楽しいが、やっぱり老女が鬼女になる、何度もジャンプするあたりから舞台が盛り上がる。花道七三で仏倒れで倒れてすぐに向き直るところは、今回は一瞬暗転した。
「二人夕霧」
寄せ集めのメンバーで、みんなバラバラに演技していてまとまりがない。吉田屋のパロディなのだが、伊左衛門役の雁治郎に主役感がなくて、背が高い弥十郎ばかり目立つ。孝太郎はうまかった。
萬狂言 春公演 ― 2019/04/14 23:10
2019年4月14日 国立能楽堂 午後2時半開演 中8列15番
解説
「まん狂言」だとばかり思っていたら、「よろず狂言」だった。能村晶人の解説はわかりやすかった。各演目の解説があって、出演者も若い人が多いと浅草歌舞伎のようで楽しい。
「棒縛」
狂言の「棒しばり」は初めて観る。主は万禄、太郎冠者は拳之介、次郎冠者は真之介。太郎冠者はいかにも若いが、次郎冠者は年齢を考えたらうまいかも。棒に縛られる次郎冠者の方が難しい役なのは歌舞伎と同じだ。基本的なストーリーは歌舞伎と同じ。二人で酒の匂いを嗅いだり、酒を飲むときに声で音を作ったりするのが歌舞伎とは違う。歌舞伎の踊りの見せ場は、狂言では一人が謡い、もう一人が動く。主が帰って来たとき、歌舞伎のようにベロベロに酔いながら「酔ってません」と言うところはない。
「八句連歌」
金を借りている貧者が萬、貸し手が万蔵。互いに「萬」「万蔵」と呼び合うのが面白い。萬は今年89歳になるが、声はしっかり出ていて、よぼよぼしたところがない。よぼよぼの役者の芸を「至芸」と呼ぶのは嫌いなのだが、これは正に至芸。万蔵は髪が黒くて頭の部分は現代人なのに対し、萬は髪の白さもあって、全体が「貧者」になっている。
神々しい舞台だった。
休憩の後、素囃子「早舞」と「朝比奈」。後半は前半ほど面白くはなかった。
解説
「まん狂言」だとばかり思っていたら、「よろず狂言」だった。能村晶人の解説はわかりやすかった。各演目の解説があって、出演者も若い人が多いと浅草歌舞伎のようで楽しい。
「棒縛」
狂言の「棒しばり」は初めて観る。主は万禄、太郎冠者は拳之介、次郎冠者は真之介。太郎冠者はいかにも若いが、次郎冠者は年齢を考えたらうまいかも。棒に縛られる次郎冠者の方が難しい役なのは歌舞伎と同じだ。基本的なストーリーは歌舞伎と同じ。二人で酒の匂いを嗅いだり、酒を飲むときに声で音を作ったりするのが歌舞伎とは違う。歌舞伎の踊りの見せ場は、狂言では一人が謡い、もう一人が動く。主が帰って来たとき、歌舞伎のようにベロベロに酔いながら「酔ってません」と言うところはない。
「八句連歌」
金を借りている貧者が萬、貸し手が万蔵。互いに「萬」「万蔵」と呼び合うのが面白い。萬は今年89歳になるが、声はしっかり出ていて、よぼよぼしたところがない。よぼよぼの役者の芸を「至芸」と呼ぶのは嫌いなのだが、これは正に至芸。万蔵は髪が黒くて頭の部分は現代人なのに対し、萬は髪の白さもあって、全体が「貧者」になっている。
神々しい舞台だった。
休憩の後、素囃子「早舞」と「朝比奈」。後半は前半ほど面白くはなかった。
国立劇場 3月 歌舞伎公演 元禄忠臣蔵 ― 2019/04/11 13:08
2019年3月20日 国立劇場小劇場 12時開演 17列2番
「御浜御殿」
歌昇の助右衛門が観たくてチケットを買った。歌昇は今まで観た誰よりも助右衛門ぴったりの風貌だった。熱血系の演技が役に合う。
扇雀の綱豊は期待していたが、今一つだった。最後の幕で助右衛門を諭す息の長い台詞が胸に迫ってこない。
「積恋雪関扉」
菊之助の関兵衛は役のイメージよりずいぶん綺麗だったが、悪くはなかった。墨染の梅枝も良かった。
二人ともとても良かったのだが、観ている間ずっと睡魔に襲われ続けてまともな感想が書けない。
「御浜御殿」
歌昇の助右衛門が観たくてチケットを買った。歌昇は今まで観た誰よりも助右衛門ぴったりの風貌だった。熱血系の演技が役に合う。
扇雀の綱豊は期待していたが、今一つだった。最後の幕で助右衛門を諭す息の長い台詞が胸に迫ってこない。
「積恋雪関扉」
菊之助の関兵衛は役のイメージよりずいぶん綺麗だったが、悪くはなかった。墨染の梅枝も良かった。
二人ともとても良かったのだが、観ている間ずっと睡魔に襲われ続けてまともな感想が書けない。
三月大歌舞伎 夜の部 ― 2019/03/06 23:59
2019年3月6日 歌舞伎座 午後4時半開演 1階1列41番
「盛綱陣屋」
小四郎役の勘太郎はよくやっていた。特に、腹を切ってからの台詞が人を泣かせるような声としゃべり方で、客席からすすり泣きが聞こえた。高綱の首を前にした盛綱(仁左衛門)と、腹を切った小四郎とが顔を見合わせて無言で意思疎通するところが一番の見もの。首をふる小四郎を見て一瞬怪訝な表情をした盛綱。その後しばらく考えをめぐらし、はっと悟る。その辺の仁左衛門の表情がきょうの席からはよく見えた。
その後には仁左衛門の素晴らしい台詞が聞けて、すごく良い演目だと思った。熊谷陣屋よりも、こっちをもっと頻繁にやってほしい。
小三郎役の寺嶋真秀は初めて見た。ほとんど後ろ姿しか見えなかったが、鎧姿と声が可愛い。
微妙役の秀太郎が良かった。秀太郎は位の高い女の役のときの方が良い声だし、台詞がよく聞こえる。
小四郎の母役の雀右衛門は、こういう愛情を感じる役にぴったり。
和田兵衛秀盛の左團次はいつも立派。私が歌舞伎を観始めた頃からほとんど毎月観て来たような気がする。
錦之助の信楽太郎は元気そうで華やかで良い。
時政の四天王は廣太郎、種之助、米吉、千之助。声が聞こえて初めて、種之助の顔が見えていたことに気づいた。
「雷船頭」
船頭役は染五郎、雷は鷹之資。
染五郎は踊りはそこそこだが、きれいな男が動いているのを見るのは目の保養。
鷹之資の雷は楽しい。大人になって、「踊らされる」のではなく、自分で踊り出したようで、今後が楽しみだ。
「弁天娘女男白浪」
猿之助の弁天小僧は亀治郎時代に巡業で観た。当時は、菊之助、七之助のような女形を主たる役とする人が演じる女形寄りの弁天という印象だった。当時よりぐっと線が太くなって、台詞もこってりしている。
お前は男だ、と言われて「えっ」と言う声が男で、笑いをとる。「尻尾を見せちまうぜ」の前に、「おい、兄ぃ」ではなく「おい、南郷」と言う。
舞台に5人並んでの台詞も、猿之助が一番うまくて、大きな拍手を誘う力があった。
南郷の幸四郎は、この弁天の隣りにいるにしては、少し弱い。猿之助と幸四郎は仲良しのようだが、幸四郎といっしょだと猿之助が可愛く見えるとか、そういうことはない。仁左衛門と玉三郎とは違う。
浜松屋の若旦那の宗之助役は鷹之資だった。鷹之資と千之助は「趣向の華」の公演の頃は子供だったが、大人の役をやるようになった。
「盛綱陣屋」
小四郎役の勘太郎はよくやっていた。特に、腹を切ってからの台詞が人を泣かせるような声としゃべり方で、客席からすすり泣きが聞こえた。高綱の首を前にした盛綱(仁左衛門)と、腹を切った小四郎とが顔を見合わせて無言で意思疎通するところが一番の見もの。首をふる小四郎を見て一瞬怪訝な表情をした盛綱。その後しばらく考えをめぐらし、はっと悟る。その辺の仁左衛門の表情がきょうの席からはよく見えた。
その後には仁左衛門の素晴らしい台詞が聞けて、すごく良い演目だと思った。熊谷陣屋よりも、こっちをもっと頻繁にやってほしい。
小三郎役の寺嶋真秀は初めて見た。ほとんど後ろ姿しか見えなかったが、鎧姿と声が可愛い。
微妙役の秀太郎が良かった。秀太郎は位の高い女の役のときの方が良い声だし、台詞がよく聞こえる。
小四郎の母役の雀右衛門は、こういう愛情を感じる役にぴったり。
和田兵衛秀盛の左團次はいつも立派。私が歌舞伎を観始めた頃からほとんど毎月観て来たような気がする。
錦之助の信楽太郎は元気そうで華やかで良い。
時政の四天王は廣太郎、種之助、米吉、千之助。声が聞こえて初めて、種之助の顔が見えていたことに気づいた。
「雷船頭」
船頭役は染五郎、雷は鷹之資。
染五郎は踊りはそこそこだが、きれいな男が動いているのを見るのは目の保養。
鷹之資の雷は楽しい。大人になって、「踊らされる」のではなく、自分で踊り出したようで、今後が楽しみだ。
「弁天娘女男白浪」
猿之助の弁天小僧は亀治郎時代に巡業で観た。当時は、菊之助、七之助のような女形を主たる役とする人が演じる女形寄りの弁天という印象だった。当時よりぐっと線が太くなって、台詞もこってりしている。
お前は男だ、と言われて「えっ」と言う声が男で、笑いをとる。「尻尾を見せちまうぜ」の前に、「おい、兄ぃ」ではなく「おい、南郷」と言う。
舞台に5人並んでの台詞も、猿之助が一番うまくて、大きな拍手を誘う力があった。
南郷の幸四郎は、この弁天の隣りにいるにしては、少し弱い。猿之助と幸四郎は仲良しのようだが、幸四郎といっしょだと猿之助が可愛く見えるとか、そういうことはない。仁左衛門と玉三郎とは違う。
浜松屋の若旦那の宗之助役は鷹之資だった。鷹之資と千之助は「趣向の華」の公演の頃は子供だったが、大人の役をやるようになった。
二月大歌舞伎 夜の部 ― 2019/02/08 00:38
2019年2月6日 歌舞伎座 午後4時半開演 3階4列1番
「熊谷陣屋」
食傷気味の「熊谷陣屋」で漫然と観ていたが、菊之助の義経が出てきて後半になるにつれ、芝居の質の高さに感動した。国立で「岡崎」を観たときのように、全員がニンに合った役をやっている感じがした。菊之助は風邪を引いたようでやや鼻声だったが、それを忘れさせるほどの力があった。
「當年祝春駒」
梅丸は先月に続いて化粧坂少将。今月は舞踊で動くのが嬉しい。
曽我五郎役の左近の踊りを期待していたが、凡庸なのでがっかり。
「名月八幡祭」
新助が出て来る前に、三次(仁左衛門)が美代吉(玉三郎)に金を無心するシーンがある。玉三郎の美代吉は昭和の御代に観たがその時の三次は橋之助で、孝夫の三次は観たことがない。雰囲気的に桜姫の権助とか、三五大切の三五のような、私が一番観たいタイプの孝夫の役だ。5両になるという簪を頭にさして出て行く、色っぽい仁左衛門。
新助役の松緑は、口調は丁寧だが身体全体に「腰が低い」雰囲気が足りないと思った。
美代吉は我儘な女だがそれが許せてしまう玉三郎、そして、その恋人であるのが当然な仁左衛門。この二人に対すると、新助は気の毒だが美代吉をものにすることは「ありえない」ことに見える。
美代吉を刺す前に狂っているときは、追いつめられて狂ってしまった、というより、初めからそういう精神的傾向があった人なのかもしれない、と思えてしまう。
最後は吉右衛門のときと同じく、祭りの若い衆に担ぎ上げられて花道を去った。
「熊谷陣屋」
食傷気味の「熊谷陣屋」で漫然と観ていたが、菊之助の義経が出てきて後半になるにつれ、芝居の質の高さに感動した。国立で「岡崎」を観たときのように、全員がニンに合った役をやっている感じがした。菊之助は風邪を引いたようでやや鼻声だったが、それを忘れさせるほどの力があった。
「當年祝春駒」
梅丸は先月に続いて化粧坂少将。今月は舞踊で動くのが嬉しい。
曽我五郎役の左近の踊りを期待していたが、凡庸なのでがっかり。
「名月八幡祭」
新助が出て来る前に、三次(仁左衛門)が美代吉(玉三郎)に金を無心するシーンがある。玉三郎の美代吉は昭和の御代に観たがその時の三次は橋之助で、孝夫の三次は観たことがない。雰囲気的に桜姫の権助とか、三五大切の三五のような、私が一番観たいタイプの孝夫の役だ。5両になるという簪を頭にさして出て行く、色っぽい仁左衛門。
新助役の松緑は、口調は丁寧だが身体全体に「腰が低い」雰囲気が足りないと思った。
美代吉は我儘な女だがそれが許せてしまう玉三郎、そして、その恋人であるのが当然な仁左衛門。この二人に対すると、新助は気の毒だが美代吉をものにすることは「ありえない」ことに見える。
美代吉を刺す前に狂っているときは、追いつめられて狂ってしまった、というより、初めからそういう精神的傾向があった人なのかもしれない、と思えてしまう。
最後は吉右衛門のときと同じく、祭りの若い衆に担ぎ上げられて花道を去った。
二月大歌舞伎 昼の部 初日 ― 2019/02/07 00:10
2018年2月2日 歌舞伎座 午前11時開演 1階12列2番
「すし屋」
松緑は権太が柄に合って、すし桶を抱えて花道に出たあたり等、所作が綺麗で見応えがあった。
「暗闇の丑松」
観るのはたぶん三度目だが、はじめて全体がつながって頭に入った。救いようのない暗い話、というネガティブな受け止め方でなく、暗いストーリーを歌舞伎の観客に描き出して見せた話なんだな、と好意的な受け止め方ができた。
菊五郎は走る場面などは完全に老人の動きだが、女郎になったお米(時蔵)に腹を立てているのがわかるとっくりの動かし方とか、三吉(片岡亀蔵)に酒を飲ませながら四郎兵衛がお米にしたことを聞き出して顔を曇らせて行くところとかで、この話の要である丑松の気持ちを観客に十分わからせてくれた。
「団子売」
芝翫と孝太郎の夫婦の団子売。花道で、観客に愛想よくお辞儀をする。二人ともそこそこ踊りがうまく、楽しい演目だった。
「すし屋」
松緑は権太が柄に合って、すし桶を抱えて花道に出たあたり等、所作が綺麗で見応えがあった。
「暗闇の丑松」
観るのはたぶん三度目だが、はじめて全体がつながって頭に入った。救いようのない暗い話、というネガティブな受け止め方でなく、暗いストーリーを歌舞伎の観客に描き出して見せた話なんだな、と好意的な受け止め方ができた。
菊五郎は走る場面などは完全に老人の動きだが、女郎になったお米(時蔵)に腹を立てているのがわかるとっくりの動かし方とか、三吉(片岡亀蔵)に酒を飲ませながら四郎兵衛がお米にしたことを聞き出して顔を曇らせて行くところとかで、この話の要である丑松の気持ちを観客に十分わからせてくれた。
「団子売」
芝翫と孝太郎の夫婦の団子売。花道で、観客に愛想よくお辞儀をする。二人ともそこそこ踊りがうまく、楽しい演目だった。
新春浅草歌舞伎 2019 第2部 ― 2019/01/05 01:55
2019年1月4日 浅草公会堂 午後3時開演 1階け列3番
挨拶は橋之助。今年は年男だそうだ。年齢より落ち着いた雰囲気だ。30くらいになったら雰囲気に年齢が追いつきそう。
「寿曽我対面」
昨日、「曽我五郎役の橋之助がうまかった」と書いたが、あれは松也の間違いだった。うまくて当たり前だわ。ずっと橋之助だと思って観ていて、なんてうまいんだろうと思って、「今の浅草メンバーにはいない、力強い正統派のうまさを感じる。」なんて書いてしまって、申し訳ありません。
「番町皿屋敷」
山王下の場で、橋之助は、青山播磨に喧嘩をふっかける放駒四郎兵衛の役。これがうまくて、青山播磨役の隼人がしゃべり始めると、「やっぱり隼人って下手」と思った。
ところが、次の青山家の場では、隼人の青山播磨にすっかり魅了されてしまった。今まで3回くらい観たが、初めて、青山播磨がお菊を手打ちにした気持ちが理解できた。それは隼人が青山播磨の気持ちを完全に理解して、その世界を観客に提示できたからだと思う。だから、手打ちを止めようとする奴に向かって「そちにはわからん」と叫ぶのを聞くと、そうだそうだ、と思う。
お菊役の種之助は、朋輩の腰元お仙(鶴松)の後ろについて出てきたとき、むっつりした表情で、十太夫と話すのは主にお仙の方で終始無愛想で色気がないので大丈夫かと心配したが、台詞が多くなったらしっかりしていて、所作は元々綺麗なので、最終的には良いお菊だった。
名古屋で観た壱太郎・梅丸コンビは、壱太郎のお菊は男を知ってる女、お仙の方はまだ男を知らない生真面目な腰元、というように見えた。種之助のお菊は端正だが、そこまでの色気はなかった。壱太郎のお菊は青山播磨の気持ちを知って、皿を割るときも殺されるときも喜びでうっとりした中で死んだようにも見えたが、種之助のお菊は、皿を割られているときは明らかに怯えていて、「この人、あぶない人だったんだ」と思っているように見えた。
鶴松のお仙はお菊より少しお姉さんのように見えるので、皿を割ったことを十太夫に告げたのが少し意地悪のようにも思えてしまう。
今年の浅草で一番注目していた演目で感動できて幸せだ。隼人の青山播磨はもちろん見た目はすごく良くて、この役ではそれも重要なのだが、特に書く必要を感じないほど演技が良かった。おそらく原作の意図を正しく観客に伝えてくれた。
「乗合船恵方萬歳」
役者が一人ずつ踊るので、好きな演目だ。
今年の浅草は例年になく踊りが多い。
ここでやっと、芸者役の鶴松の踊りが観られて嬉しかった。才造役の種之助の踊りも堪能した。
挨拶は橋之助。今年は年男だそうだ。年齢より落ち着いた雰囲気だ。30くらいになったら雰囲気に年齢が追いつきそう。
「寿曽我対面」
昨日、「曽我五郎役の橋之助がうまかった」と書いたが、あれは松也の間違いだった。うまくて当たり前だわ。ずっと橋之助だと思って観ていて、なんてうまいんだろうと思って、「今の浅草メンバーにはいない、力強い正統派のうまさを感じる。」なんて書いてしまって、申し訳ありません。
「番町皿屋敷」
山王下の場で、橋之助は、青山播磨に喧嘩をふっかける放駒四郎兵衛の役。これがうまくて、青山播磨役の隼人がしゃべり始めると、「やっぱり隼人って下手」と思った。
ところが、次の青山家の場では、隼人の青山播磨にすっかり魅了されてしまった。今まで3回くらい観たが、初めて、青山播磨がお菊を手打ちにした気持ちが理解できた。それは隼人が青山播磨の気持ちを完全に理解して、その世界を観客に提示できたからだと思う。だから、手打ちを止めようとする奴に向かって「そちにはわからん」と叫ぶのを聞くと、そうだそうだ、と思う。
お菊役の種之助は、朋輩の腰元お仙(鶴松)の後ろについて出てきたとき、むっつりした表情で、十太夫と話すのは主にお仙の方で終始無愛想で色気がないので大丈夫かと心配したが、台詞が多くなったらしっかりしていて、所作は元々綺麗なので、最終的には良いお菊だった。
名古屋で観た壱太郎・梅丸コンビは、壱太郎のお菊は男を知ってる女、お仙の方はまだ男を知らない生真面目な腰元、というように見えた。種之助のお菊は端正だが、そこまでの色気はなかった。壱太郎のお菊は青山播磨の気持ちを知って、皿を割るときも殺されるときも喜びでうっとりした中で死んだようにも見えたが、種之助のお菊は、皿を割られているときは明らかに怯えていて、「この人、あぶない人だったんだ」と思っているように見えた。
鶴松のお仙はお菊より少しお姉さんのように見えるので、皿を割ったことを十太夫に告げたのが少し意地悪のようにも思えてしまう。
今年の浅草で一番注目していた演目で感動できて幸せだ。隼人の青山播磨はもちろん見た目はすごく良くて、この役ではそれも重要なのだが、特に書く必要を感じないほど演技が良かった。おそらく原作の意図を正しく観客に伝えてくれた。
「乗合船恵方萬歳」
役者が一人ずつ踊るので、好きな演目だ。
今年の浅草は例年になく踊りが多い。
ここでやっと、芸者役の鶴松の踊りが観られて嬉しかった。才造役の種之助の踊りも堪能した。
新春浅草歌舞伎 2019 第1部 ― 2019/01/04 23:42
2019年1月4日 浅草公会堂 午前11時開演 2階ぬ列32番
11時5分前くらいに公会堂に着いたら「年始ご挨拶がもうすぐ始まります」と案内の人たちが叫んでいた。席に着くとすぐ新悟の挨拶が始まった。計算ミスがあって予定の時間通りに終われなくなるから、例年のように演目の簡単な説明とかはできないのでイヤホンガイドとプログラムを買ってください、ということだった。
「戻駕色相肩」
浪花の次郎作(歌昇)、吾妻の与四郎(種之助)、禿たより(梅丸)の、舞踊劇。
歌昇もうまいが種之助の踊りが特に良かった。うまさが目立つ踊りなのかもしれないが、自信を感じた。梅丸は綺麗。役のせいか、声がいつもより高い。
歌昇と種之助が大きな羽織を二人で着て、紐の先を三味線のバチのように動かしたり、振付が面白かった。
「義賢最期」
葵御前は鶴松。落ち着いていて声がおばさんぽいので、もっと年配の役者のように感じる。梅丸の待宵姫は前にも観たことがある、はまり役。折平は隼人。小万は新悟。
義賢役の松也は長身で迫力がある。前半も、後半のケレンも無難にこなした。
「芋掘長者」
緑御前(新悟)の婿を決めるため、舞の宴を催して、最も優れた者を婿に迎えることにする。
連れ立ってやってきた舞の名手二人(歌昇、松也)が花道にいるときが柔らかいムードで可愛い。
緑御前に惚れて舞の名手と偽って宴に来る芋掘(巳之助)と、その連れ(橋之助)。
腰元が鶴松。踊りの演目なのに鶴松が踊らないのが残念。
橋之助の踊りはうまかった。衝立の向こうの橋之助が教えながら巳之助が真似をする趣向が面白い。
結局、緑御前は芋堀の踊りを気に入って芋掘を婿に決める。それを聞いて「えっ」と言う歌昇と松也が面白かった。
11時5分前くらいに公会堂に着いたら「年始ご挨拶がもうすぐ始まります」と案内の人たちが叫んでいた。席に着くとすぐ新悟の挨拶が始まった。計算ミスがあって予定の時間通りに終われなくなるから、例年のように演目の簡単な説明とかはできないのでイヤホンガイドとプログラムを買ってください、ということだった。
「戻駕色相肩」
浪花の次郎作(歌昇)、吾妻の与四郎(種之助)、禿たより(梅丸)の、舞踊劇。
歌昇もうまいが種之助の踊りが特に良かった。うまさが目立つ踊りなのかもしれないが、自信を感じた。梅丸は綺麗。役のせいか、声がいつもより高い。
歌昇と種之助が大きな羽織を二人で着て、紐の先を三味線のバチのように動かしたり、振付が面白かった。
「義賢最期」
葵御前は鶴松。落ち着いていて声がおばさんぽいので、もっと年配の役者のように感じる。梅丸の待宵姫は前にも観たことがある、はまり役。折平は隼人。小万は新悟。
義賢役の松也は長身で迫力がある。前半も、後半のケレンも無難にこなした。
「芋掘長者」
緑御前(新悟)の婿を決めるため、舞の宴を催して、最も優れた者を婿に迎えることにする。
連れ立ってやってきた舞の名手二人(歌昇、松也)が花道にいるときが柔らかいムードで可愛い。
緑御前に惚れて舞の名手と偽って宴に来る芋掘(巳之助)と、その連れ(橋之助)。
腰元が鶴松。踊りの演目なのに鶴松が踊らないのが残念。
橋之助の踊りはうまかった。衝立の向こうの橋之助が教えながら巳之助が真似をする趣向が面白い。
結局、緑御前は芋堀の踊りを気に入って芋掘を婿に決める。それを聞いて「えっ」と言う歌昇と松也が面白かった。
セルリアンタワー能楽堂 平成三十一年 正月公演 ― 2019/01/04 23:24
2019年1月2日 正午開演
いつもの通り、中正面の後ろの方に座った。
初めは、素囃子、大鼓は原岡一之。
休憩の後、三番叟。
三番叟は野村裕基、千歳は野村太一郎、大鼓は亀井広忠。
新年早々、十代の三番叟を観るのはエネルギーをもらえるように感じる。これで野村家三代の三番叟を観た。
いつもの通り、中正面の後ろの方に座った。
初めは、素囃子、大鼓は原岡一之。
休憩の後、三番叟。
三番叟は野村裕基、千歳は野村太一郎、大鼓は亀井広忠。
新年早々、十代の三番叟を観るのはエネルギーをもらえるように感じる。これで野村家三代の三番叟を観た。
十二月大歌舞伎 夜の部 Bプロ ― 2019/01/01 23:04
2018年12月25日 歌舞伎座 午後4時半開演 3階6列2番
「阿古屋」
この席だと、玉三郎の岩永は足が先に見える。松緑の岩永の方が動きが大きくて綺麗だったが、玉三郎の方が操られている感じが出ていた。
きょうは梅枝の阿古屋。美人オーラはないが、技術的には玉三郎より上だろう。特に、楽器の演奏の合間の重忠とのやり取りの台詞が、すごくうまいと思った。重忠役の彦三郎も台詞がいいし、この若い二人が揃うと輝いて見えた。胡弓は、玉三郎も一番得意のように感じたが、梅枝の演奏は、「玉三郎のときもこんな感じだったろうか」と感じるようなニュアンスのメリハリがあった。胡弓の演奏のときに、岩永が火箸で演奏の真似をするが、やるのが阿古屋もやる玉三郎だと余計面白く感じる。
「あんまと泥棒」
3日に観たときより、練れた感じがした。
「傾城雪吉原」
岩永も良かったが、最後に綺麗な玉三郎を見せてもらえるのは嬉しい。一年の見納めとして観るにふさわしい演目だった。
「阿古屋」
この席だと、玉三郎の岩永は足が先に見える。松緑の岩永の方が動きが大きくて綺麗だったが、玉三郎の方が操られている感じが出ていた。
きょうは梅枝の阿古屋。美人オーラはないが、技術的には玉三郎より上だろう。特に、楽器の演奏の合間の重忠とのやり取りの台詞が、すごくうまいと思った。重忠役の彦三郎も台詞がいいし、この若い二人が揃うと輝いて見えた。胡弓は、玉三郎も一番得意のように感じたが、梅枝の演奏は、「玉三郎のときもこんな感じだったろうか」と感じるようなニュアンスのメリハリがあった。胡弓の演奏のときに、岩永が火箸で演奏の真似をするが、やるのが阿古屋もやる玉三郎だと余計面白く感じる。
「あんまと泥棒」
3日に観たときより、練れた感じがした。
「傾城雪吉原」
岩永も良かったが、最後に綺麗な玉三郎を見せてもらえるのは嬉しい。一年の見納めとして観るにふさわしい演目だった。
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