浪花花形歌舞伎 初日 三部2007/04/02 09:58

2007年4月1日 松竹座 午後7時開演 1階10列8番

「夏祭浪花鑑」

いろんな意味で愛之助にぴったりの役なので期待していた。その期待を上回るすばらしい団七だった。去年のはじめから愛之助の追っかけをやってきたものの「この役だったら愛之助が一番、次も絶対愛之助で観たい」と言えるのはなかったが、団七は愛之助が一番。

堺の魚売りで、筋肉の力のいる団七の役は、堺出身で筋肉系が強い愛之助にぴったり。当たり役になるのは間違いない。

去年の福岡貢は悪くはなかったが気持ちが貢になっていなかったと見えて要所要所のつなぎ目のあたりで気が抜けてブツ切れの印象があった。「歌舞伎おもしろ講座」で本人が言っていたとおり難しい役なのだろう。今回は心から団七になっていて最後の花道のひっこみまで団七になりきっていた。

上手から囚人のなりで縄につながれて出てきたときはヒゲも伸びていて、長い眉は去年の藤十郎襲名のときの修験者を思い出させた。「おありがとうございます」という声がかなり太く、おっ、こんな太い声で行くのかと思った。声は太かったが去年の羽倉斎宮と権太のときに感じたかすかな聞き取りづらさはなかった。床屋に入り、駕籠屋とのゴタゴタを片付けるために出てくるとき「待ってました」と声がかかった。出てきたときはいい男。眉も伸びるものなのかとつっこみを入れたいが吉右衛門も藤十郎も釈放されたとき同じ顔をしていたので不問に付す。

駕籠屋と話がついて花道を引っ込もうとすると徳兵衛が「ちょっと待ってもらおうか」と声をかける。二人が飛んだり跳ねたりするケンカは去年の二つの夏祭のときと比べると役者が二人とも若く身長が揃っているので楽しい。徳兵衛は去年仁左衛門がやったときは団七より強そうだったが亀鶴は強そうには見えない。女房のお辰から判断するともう少し強いはずだと思う。

団七の女房お梶の孝太郎は姉さん女房気味だが落ち着いていていい。高い声といっしょに出るミイミイいう音さえなくなれば文句ない。徳兵衛に「下がれ下がれ」というところなどが面白い。花道で団七の髪を直してやるあたりは夫婦の間に色気がない。愛之助は琴浦役の千壽郎と並ぶ方が合う。

磯之丞の薪車は和事味を出そうとはしているが身についていない感じで硬い。助六をやったほうが似合いそう。琴浦の千壽郎とはとても綺麗なカップルだが千壽郎の方がうまい。

翫雀は曽根崎心中より釣船三婦の方が良かった。もうそんなに若くないし、老け役がぴったりくる。浴衣を着替えるところ、去年の7月の我當が、手伝ってもらわずにすごくいいかげんな着方をしているように見えるのにちゃんと格好がついていたのが印象的だったのだが、翫雀はおつぎ役の竹三郎に手伝ってもらって着ていたがなんとなくすそが開いて変な格好だった。

おつぎの竹三郎は7月と同じ。年はとっているがスラリとした美人の女房。訪ねてきたお辰を見てやきもちを妬くところがおもしろい。亭主が若くなると嬉しいかも。

お辰の扇雀はとても良い。お初も良いがお辰の方が年齢とニンに合っている。この人は綺麗だとは思うがうまいと思って観たことはなかったが今回の浪花花形ではじめてうまいと思った。

義平次の橘三郎も安定していて良かった。

殺しの場で赤褌姿になる愛之助のお尻はもう少し丸みがあった方が形が良いのではないかと思うがこれは個人的な趣味で、日本人はあれで良いのかもしれない。花道を踊りながらひっこむところは狂気を感じさせてとてもよかった。

浪花花形歌舞伎 二日目 一部2007/04/02 23:17

2007年4月2日 松竹座 午前11時開演 1階4列19番

「敵討天下茶屋聚」

主役の翫雀はとてもよかった。愛之助のことばかり考えていたが、去年は確かに愛之助が一番大変だったかもしれないが今年は翫雀の方が大変だったのではないだろうか。この演目では二役だし元右衛門はけっこう芸がいる役。

前に猿之助の公演を観たことがあるが印象が散漫だった。今回の舞台から推測するに兄弟が二組出るしその人間関係が頭に入っていないと全体の筋が理解しづらい話なのではないか。場面場面はそれなりに面白い。

変に色気のある尼の扇之丞も良かった。

愛之助は三部の最後まで出て朝もかなりはじめの方から出演で、ご苦労様なことである。去年もそうだったが、まあ若手ということでしかたないだろう。そんなことをしているうちが花。 黒い衣装に深編笠で出てきたとき愛之助にしてはほっそりしていると感じたのだが声をきくと愛之助だった。声は団七よりさらに太く、顔は仁左衛門そっくり。