東京ミッドタウン能狂言2007/09/22 01:15

2007年9月20日 午後7時開演 東京ミッドタウン 芝生広場 25列26番

六本木駅から六本木ヒルズに出てしまったのでミッドタウンがどこなのかさっぱりわからず。周辺を20分ほどさまよって最初の場所に戻ってしまい、どこかに交番でもないかと大通りに沿って歩いていたら「麻布警察」があって、その前に立っていたおまわりさんに行き方を教えてもらった。六本木の交差点を渡って右側。ミッドタウンまで行くと、そこにも地下鉄の出口がある。出口を間違えないことが大事なのだ。

ミッドタウンに入り、たぶんミッドタウンタワーという建物の端にあるガーデンに抜ける綺麗な通路を通って向こう側に行く。そこがガーデンだろうと歩き出したら間もなく、人が集まって座っているところがあったので、そこが会場だろうと思った。みんなよくたどり着けたな。

客層は、いつもの能狂言の客に、場所柄のせいかいつもはいない若い人たちが混じっているように見えた。

舞台はタワーを背にしてしつらえられている。揚幕も橋掛かりもある。観客席はその前にパイプ椅子を並べてある。私は安いほうの席で買うのも遅かったから座っている人たちの中では一番後ろに近かったが、真ん中で、亀井広忠を真正面に見られるのは良かった。

公演の最初と各演目の前に流れるアナウンスが「トップクラスの~、心躍る~」とチラシの宣伝文句みたいなことを言うのが甚だ興ざめである。

最初は能囃子の「雪月花」。 笛 一噌幸弘、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井広忠、太鼓 金春国和

最初の笛は、やはりまたアレンジが入っているんじゃないかと思った。大鼓の音が、いつもとやや違って聞こえる。木で木を打つようなカーンという乾いた音ではなくやや湿り気を感じる音だった。

車の音など遠くから聞こえる都市のざわめき以外に、上空をとぶヘリコプターの音という騒音もあった。後半、鼓の二人の声も大きくかなり頑張っていたが、南座できいたときのように心の中に夜の草原が広がってはいかなかった。

二つ目は狂言の「二人大名」。通行人 山本則直、大名甲 山本泰太郎、 大名乙 山本則孝

はじめて観た演目だがおもしろかった。鶏の表現などが上品で興味深い。

最後は観世流能「葵上 古式」。 六条御息所 観世銕之丞

この演目の途中にもヘリコプターが来る。そういうことはともかく、今回も能はよくわからないままに終わった。席が遠いせいかある台詞を誰が言っているのかわからないのも理解を妨げた。

楳茂都流舞踊の会2007/09/22 21:30

2007年9月22日 国立文楽劇場 午前十一時~午後8時10分 自由席だが13列13番に座った

楳茂都陸平二十三回忌追善

舞踊の会が最後は歌舞伎で終わったような会だった。個人的には愛之助には下手でももっと舞踊そのもので勝負してほしかった。この会をしめくくる「狐忠信再度(にど)の旅」は歌舞伎役者という特性を生かすために選んだのかもしれないが、吉野山と四の切の抜粋のような中途半端な踊り。歌舞伎ファンの目で見ると狐が下手。えびぞりで鼓をとるところやジャンプ、回転などで拍手をもらっていたが舞踊家がそんな運動神経系ばかりで受けてどうする。役者として見た場合、いつもは声の良さでだまされている部分があると気づいた。今回のように動きだけになると、動きはイマイチだとわかる。愛之助は全体のタイプが猿之助に似ていて狐もいつか見てみたかったがファンタジー系は向かないとよくわかった。顔は綺麗だが狐の衣装になってもずっと深刻な人間の顔のままだった。

国立文楽劇場はわかりやすく、迷わずに行けた。「黒髪」の最後のあたりに着いて、「葵の上」から観た。自由席だが、席はけっこう空いていた。上方舞は筋肉はそれなりに使うだろうが動きが激しくないので心肺機能への負担が少ないかもしれない。動きが小さく、衣装も派手でない分、一つ一つの動きそのものに完成度と強さがいるのではないかと思った。玉三郎がやったら綺麗だろう。あるいは、日本人より西洋人の長身で細身の女に合うかもしれない。そんなことを思いながら観ていたが「四季の山姥」の梅加さんはうまかった。

最後の方は他の流派のお師匠さんたちがゲストで踊る。梅川忠兵衛のパロディだという「ねづみの道行」の歌の文句が面白かった。まだらのトラが、とか。

愛之助の前に踊った三人は上方舞の他の流派の家元達。山村若の「都十二月」から、観客が集中して舞台を見ている気配を感じた。若さんは去年の小米朝の会のときの踊りよりきょうの方が良かった。去年は、座敷舞というのはこういう軽いものなのか、と思うだけだった。きょうは、この人は客をひきつける魅力があると思った。

そして、私がきょう最高に感動したのは井上流の「八島」の振り付け。これは踊り手よりも振り付けに感動したのだと思う。直線的で雄雄しい。この踊りは、大柄な西洋の女より小柄な日本人に合うような気がする。以前、新派の芝居で、個性的な振り付けの舞踊家の話を見たが、それが井上流だったかもしれない。