當る卯歳 吉例顔見世興行 夜の部2010/12/26 22:13

2010年12月25日 京都四條南座 午後4時15分開演 1階5列25番

「外郎売」

落とし幕の前に花四天が並ぶ。以前観たときには遅刻したので、ここは観てない。幕が落ちて最初に目に入った春猿が綺麗だ。背景には、何時間か前に本物を見た富士山。雪のかぶり具合も同じくらいだった。

春猿、笑三郎など澤瀉屋の面々が並んでいる中に、一人、誰だかわからない役者がいた。私の席の正面あたりにいた立役で、橋之助に似ているような気もするが、違う。顔立ちの良い人だけど・・・としばらくわからなかったが、閃いた。薪車だ。番付を確認したら、やはり薪車だった。

上手の柱に「歌舞伎十八番の内 外郎売」と外題が書いてあり、下手の柱には「六代目片岡愛之助 相勤め申し候」と書いてある。晴れがましいことである。

猿弥がやることになった朝比奈の役も、愛之助に合いそうな良い役だ。そのうち、愛之助で見る機会もあるだろう。

愛之助の外郎売は、最初花道の奥から声が聞こえ、花道から登場した。わりと高めの声。すっぽんのあたりに止まってあいさつをした。扇子には三升の紋。後見は千蔵。

舞台に出て、「外郎売は昭和十五年に~私が初役で勤めます。なにとぞ鷹揚の御見物を~」と口上。

早口の言い立ては、愛之助はうまいだろうと予想していたが、その予想の遥かに上を行く出来で感動した。口跡も滑舌も元々良いが、それに加えて歌い上げるような調子が素晴らしかった。これをこんなにうまくやれる人は、歌舞伎役者の中に何人もいないのではないか。愛之助の最も得意とする芸を観客に披露する機会を得て、本当にラッキーだったと思う。

その後、曽我五郎の姿になっての荒事は、愛之助は一応無難にこなしただけ。人を蹴ったり暴れたりする荒事は、海老蔵がやらないとつまらない。

「仮名手本忠臣蔵 七段目」

南座の顔見世は三年ぶりだ。経済的な理由で去年も一昨年も行かなかったが、玉三郎のおかる、仁左衛門の平右衛門は、桜姫の再演が望めそうもない今、この2人の絡みの最高の演目で、観ないわけにはいかない。

最初に花道から出てくる三人侍は歌六、歌昇、それに種太郎。その後ろに仁左衛門の平右衛門が続く。種太郎は、座敷で由良之助の言葉に憤っている様子を表情で表わしていた。

力弥役は種之助。舞踊がうまいだけあって、木戸の前で待っている姿が美しく決まっている。

きょうの席はちょっと上手すぎると思ったが、玉三郎のおかるが二階の部屋から姿を現すのが正面に見えたから嬉しい。

おかるが手紙を書いているところに平右衛門が現れてからは、すっかり2人の世界になる。三年前に観たときに比べても、容貌は2人とも老けたと思う。美しい兄妹というより、何年もつれそった夫婦のようだ。

勘平の様子を尋ねるおかるに、「達者だ」と言いながら顔を曇らせる平右衛門。

2人が花道に行っても、歌舞伎座ほど花道が遠くないので良かった。

「河庄」

この芝居は大好きだが、七段目の後には観たくなかった。

翫雀は丁稚の役が気の毒なくらいはまっている。

逆に、扇雀の小春は、合わない役のように思うし、それを補う技術もなく、ちょっと気持ち悪い。

後半は治兵衛役の藤十郎と孫右衛門の段四郎、それに扇雀の3人だけの芝居になるが、そのときは扇雀は時々泣いてればよい役なので、芝居は壊れない。

段四郎は、私が聞いていても関西弁のアクセントは怪しいが、やさしい兄らしい感じが良い。藤十郎は、いつも通り、ものすごくうまい。小春への怒りで、ほほをぴくぴくさせながら聞き取れないような文句をずっと言ってるのが面白かった。台詞のところどころで、言い方が似ているなあと玉緒を思い出す。治兵衛の着物は薄紫の裏地が超おしゃれだ。

「鳥辺山心中」

松竹座で観たのはつまらなかったが、今回は悪くなかった。半九郎は江戸の侍なので、梅玉のようなさわやか系がやった方が良いし、お染役も、芝雀のようなかわいくて女らしいタイプが向いている。

半九郎の袴の模様が懐かしかった。松竹座のときに薪車がやった源三郎の役は松江。松竹座のときは半九郎と源三郎の喧嘩だけが面白かった。

薪車は今回は半九郎若党八介という小さい役で出ているが、薪車がやった方がうまかったかもしれない。

「越後獅子」

この演目の前にもっと観客が減るかと思ったが、土曜の夜のせいかそうでもなく、九割方は残っていた。

越後獅子は最近二回くらい観たが、どちらも素踊りで、衣装をつけたのは初めて観た。主役の翫雀以外にも4人踊る。

翫雀は元々そんなに踊りはうまくないが、適当に振り通りに踊ってお茶を濁しているのではなく、うまく踊ろうと努力しているように見える。舞踊家である奥さんに細かくコーチしてもらっているのかもしれない、とも考える。

最後は全員、布を操る。それ以外に、きょうはクリスマスなので特別に、翫雀が、三番叟のときに鳴らす鈴だと思うが、その鈴を鳴らし、長唄が「ジングルベール、ジングルベール」と唄った。客席も手拍子をしたが、ジングルベルは最後までは唄わなかった。

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