男の花道2012/07/22 19:37

2012年7月22日 ルテアトル銀座 正午開演 1階15列8番

「男の花道」は子供の頃テレビで観たがストーリーは全く覚えていない。

最初、これは関西弁の芝居かと思った。しかし、歌右衛門(福助)の目が直った後、江戸に出てくると、周りが江戸弁になる。だから「ウタエモン」のイントネーションも2通り使われている。

歌右衛門が水野家の曲水の宴で舞うことをかたくなに拒否するシーンを見て、この役は藤十郎にしかできないと思った。

梅雀が一番うまいことに誰も異論はなかろう。松也が観たくて買ったチケットで全く念頭になかったが、初めて生の舞台で観て、うまさに驚いた。

梅雀の役は、歌右衛門の目を治した医師の土生玄碩(はぶ げんせき)。水野家のお抱えとなり、殿様に呼ばれた座敷で、歌右衛門の目を治したのは自分だから、自分が頼めば歌右衛門は座敷に来て踊ってくれると言い切ってしまい、中村座で公演中の歌右衛門に文を書いて呼ぶ破目になってしまう。

歌右衛門が、自分はあくまで芝居小屋に足を運んでくれるお客様相手に芸を見せるので、お座敷に呼ばれて踊ることはたとえ公方様に呼ばれてもしない、というのは現実離れしてないか? 役者にとって劇場はショーウィンドーみたいなもので、本業は金持ちの客の酒席とか間男とかではないのか。それでまとまった金をもらわなければ、特に歌右衛門のように一門を率いていたら、やっていけないのではないか。

土生玄碩のように、金のことを言うと怒るが、自分が治した患者の主義を曲げるようなことを頼んでくる人間は面倒。歌右衛門としては大金を請求されたほうがありがたいはずだ。

歌右衛門が中村座で「伊達娘恋緋鹿子」を人形ぶりで踊っている最中、裃後見に土生玄碩からの文が届き、あろうことか後見がそれを歌右衛門に渡す。踊っている歌右衛門が文を読む場面は面白い。

土生玄碩が切腹させられてはいけないと、歌右衛門は踊りの途中で幕にするが、その後座元や客とのやり取りの時間があるのなら、踊りを少しカットして、さっさと梯子を上って鐘を鳴らしちゃえば普通に幕にできるのではないかと思った。

定式幕の前で歌右衛門が客に事情を話して謝り、客も許してやり、座元の中村勘三郎(松也)も客に許しを請い、きょうは小屋の前に飾ってある酒樽も開けてふるまいますから、戻ってくるのを待ってください、という場面は座元も客も江戸っ子らしくていい。

歌右衛門が座敷にかけつけるシーンで、福助が客席の通路を走る。

座敷で切腹の用意をして待っている土生玄碩。指先を刺してみて痛がったり、歌右衛門を待つ間のジタバタは梅雀がうまいので客が笑う。

歌右衛門は座敷に駆けつけて間に合い、水野の殿様は「総見じゃーっ」と言って、皆で中村座に行くことにする。でも、チケットあるの?

けっこうつっこみどころがある芝居だった。

最初のカーテンコールの後、2度目に役者が出てきたときは、福助と梅雀がハグしたり、大きい松也に風間俊介が飛び上がって抱きついたりして面白かった。

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