六代目中村勘九郎襲名披露 九月大歌舞伎 夜の部2012/09/17 21:42

2012年9月15日 松竹座 午後4時半開演 一階5列上手

「女暫」

玉三郎の巴御前は繊細に美しく、かわいらしくて玉三郎ならではだ。花道から遠い席だが、この列からは七三にいる玉三郎がよく見える。
座布団のような四角い袖が前で重ね合わされ、その上に玉三郎の小さな顔があり、頭の左右には力紙が突き出していて可愛い。
勘九郎襲名に関連したつらねを述べる。 茶後見は吉太朗。

若菜(七之助)が花道の方に来て、もっと揚幕の方に寄ってほしいというのを断るところが面白い。

玉三郎が舞台の真ん中に行き、人が集まって玉三郎の衣装を直しているときは、揚巻を思い出した。大太刀を抜いて仕丁たちの首を斬るシーンは大きくて貫禄があった。

巴御前が花道に引き揚げて、幕が閉まる。すると、上手の方の幕の後ろから舞台番(勘九郎)が現れる。舞台番は、巴御前に六方を踏んで引き揚げるように言って、自分の真似をしろ、とやってみせる。巴御前は「恥ずかしいわいなー」と言いながらも真似をする。しかし、恥ずかしそうに去っていく。この場は本当に可愛かった。

「口上}

仕切りの玉三郎が最初に挨拶する。還暦すぎの国宝なんだから女形が仕切っても不思議はないが、玉三郎だと、まだうら若い女形が事情があって必死にやってるような錯覚に陥る。

七之助が、「大阪が大好きな父が病気のために来られなくて申し訳ない」と詫びる。胡蝶を踊ったときを思い出すと、あのチビが、こんな挨拶ができるようになったかと目頭が熱くなる。6月、7月の演舞場もそうだったが、この口上でも、一世代分、時が流れたことを感じた。

我當は今月の勘九郎の忠太郎は自分が観た中で一番と絶賛し、中村屋兄弟をよろしくと頭を下げる。親戚のおじさんが土地の人に頼んでくれているようで、心のこもった挨拶だ。

勘三郎がいた二月の口上よりも、若い2人を盛り立てる気持ちを強く感じた。

「雨乞狐」

きょう、新大阪に着いたときは大雨で、舞台上方に出てくるような太い雨が降っていた。

勘九郎が次々に狐、雨乞巫女、座頭、小野道風、提灯、狐の嫁を踊る。狐は、四の切に出てくる狐の衣装。最後の方ではポップアップでポーンと飛び出てくるし、ジャンプも多い。
雨乞巫女の振り付けが目新しくて、踊りも一番凄いと思った。

「雁のたより」

数年前の顔見世で、藤十郎の髪結で観た。テレビ放映もあった。今月は翫雀。

若殿の役は薪車。妾の司は壱太郎。若殿は顔見世のときは愛之助で、たぶん薪車よりうまいのだろうが、薪車の方が受ける印象が強い。愛之助と扇雀のコンビよりも、今月の方が年回りが殿と妾らしく、体格差も実際の男女のようにはっきりしていて、私はこちらの方が好きだ。

殿を嫌ってツンツンしている司の役が壱太郎にぴったりだった。

上方の雰囲気を楽しむだけの演目ときいていたので筋は特に気にしなかったが、これはちゃんと筋がある。今回初めてわかった。

偽の文に騙された髪結。騙されたとわかった後、司から本当に文を受け取る。 ここのところで「もうだまされへんで」で終わったほうがしゃれた終わりだったかも。

しかし、実は髪結と司は許婚者だった、という予定調和的な終わり方。
ここでしとやかで優しげな女に変わる壱太郎はうまい。

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