六代目中村勘九郎襲名披露 九月大歌舞伎 昼の部2012/09/20 20:57

2012年9月16日 松竹座 午前11時開演 1階2列上手


「妹背山婦女庭訓」 三笠山御殿

これは、正月のルテアトル銀座でイヤホンガイドを借りて観たから、よく知っている。

今月は、入鹿の屋敷に橘姫(壱太郎)が戻ってきたところから。壱太郎が花道から舞台に来て被り物をとった。そして、苧環を手にして赤い糸を追ってきた求女(新悟)。この平成生まれの二人の成長は目覚しく、今やすっかり戦力化した。

求女実は藤原淡海は、橘姫が入鹿のスパイとして自分に近づいたのではないと確信し、入鹿が盗んだ宝剣を橘姫が取り戻してくれれば夫婦になる、と言う。 橘姫はそれを承知して別れる。

舞台には誰もいなくなり、花道から、求女の後を追って、白い苧環を手にしたお三輪(七之助)が出てくる。途中で転んで苧環の糸が切れ、苧環を叩く。 前段がないので求女を必死に追いかけてきたのがわからないせいか、苧環を叩いても可愛いと思えない。

豆腐買いのおむらは翫雀。

お三輪が御殿に上がって行き、中から官女が出てきて、お三輪とすれ違う。

七之助は、一人だけの場面では玉三郎のような可愛さや哀れさを感じない。しかし、官女たちといっしょの場面では、正月のときと逆で官女が全員年上なので、いじめられている雰囲気はムリなく感じられる。

酌の仕方を教える萩の局は、正月のときと同じく功一。 馬子唄を歌ってみせる柏の局は橘太郎。 お三輪は馬子唄がうまく歌えずに泣き伏し、官女たちは奥に引き上げてしまう。

奥から聞こえる「おめでとうございます」の声に、花道七三にいるお三輪は「あれを聞いては・・・」と嫉妬に狂って髪を振り乱し、「「凝着の相」になる。 奥へ押し入ろうとするところに鱶七(橋之助)が出てきて、お三輪を刺す。

今月は鱶七がここでいきなり出てきてぶっ返り、後ろの襖が開いて奥の座敷が現れる。 鱶七は、爪黒の鹿の血と凝着の相の女の血を混ぜて笛に注いで吹けば入鹿を成敗できる、お三輪が死ぬことが求女実は藤原淡海の役に立つのだと言い聞かせ、お三輪は納得して死ぬ。

「俄獅子」

芸者(扇雀)と鳶頭(橋之助)を中心に、華やかな踊り。橋之助は踊りが下手ではないが、扇雀は下手。 技量的には次の演目の前座的な、華やかな雰囲気だけの踊り。

「団子売り」

勘九郎と七之助が団子売りの夫婦で、商売道具をかついで花道から出てくる。勘九郎の方が妻。2人で餅をついて、団子を丸める。勘九郎がおかめの面をかぶって踊るところが良かった。
途中で、2人の襲名口上が入る。七之助は夜と同じように、父不在の侘びを述べた。


「瞼の母」

去年巡業で観たときも上手の席だったので、また、ほとんど同じ角度から観た。忠太郎から顔を背けているときの玉三郎おはまの苦悩の表情が目に焼きつくことになった。

忠太郎役の勘九郎は、折り目正しい中にも修羅場をくぐって来た強面の雰囲気があって、獅童より向いている。獅童はいい男で見ているのは楽しかったが、どこか甘さがあって忠太郎には向かないと思った。

母のことを尋ねようとして夜鷹に金をやったら夜鷹が誤解して急に色気のある態度をとったシーンは、獅童はこっちを向いていて、相手の誤解に気づいて一瞬ニコッとしたのが見えたが、勘九郎は逆を向いていて表情は見えなかった。しかし、たぶんニッコリすることはなく「違うんだ」と言ったと思う。

玉三郎は、こんなところの女将ならもう少しハキハキしたしゃべり方が良いと思うが、忠太郎がいなくなってから娘(七之助)に感情をぶちまけるところでは、玉三郎らしく盛り上げていた。

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