坂東竹三郎 語りの会2016/05/24 01:01

2016年5月5日 木馬亭 午後5時半開演

「楢山節考」朗読

岡崎泰正のギターと歌が所々に入りながら、竹三郎が朗読。朗読というよりは「語り」で、地の部分もあるのだが、全体として「演じている」印象だった。「朗読」が活字だとしたら、今回のは手書きの文字のようだった。この後のトークで、竹三郎が、自分は関西の人間だから台詞はともかく地の部分はなまりが出るので、と言うようなことを言っていたが、いつもイントネーションが気になる私が、全く気にならなかった。
「楢山節考」は映画を観たことがあるが小説は読んだことがなく、こんな話だったのか、と思った。

トークは、司会の人がいた。途中で、ギターの岡崎泰正がちょっと顔を見せた。竹三郎の息子だが顔が似ているとは思わなかった。顔と髪型は少女漫画に出てくるキャラのようだった。
「楢山節考」の朗読をやりたいと思った理由や、先月は博多でやった「ワンピース」に出ていて、その間に熊本の地震があって劇場で募金をした話をした。共演者がきょうも来てくれて、と竹三郎が上手の方に目をやっていたが、帰るときに笑三郎と、先月の共演者ではないが吉弥が確認できた。
竹三郎は「男の花道」に出ていた時に具合が悪くて休演したが、自分では気づかず、周りの人がおかしいと思ったらしく、門之助が「医者を紹介します」と言った。千葉の医者で診てもらったら硬膜下血腫だった。だから、門之助と猿之助が命の恩人。「女團七」は猿之助にも良い財産になったのではないかと思っている。あの役は他の人にはできない。自分がやった役は別の人でも鍛えればできるだろう。自分は猿之助についていくつもり、という話だった。

ハンブルクバレエ「真夏の夜の夢」2016/03/13 22:45

2016年3月13日 東京文化会館 午後2時開演 1階25列39番

ジョン・ノイマイヤー振付のハンブルクバレエは30年くらい前に「マタイ受難曲」を見て以来数回見ているが、きょうが一番良かった。
妖精たちの世界のシーンに全身タイツの前衛的バレエを使っているのがすごくマッチしていて、舞台全体が絵葉書にしたいほど綺麗だった。
歌舞伎の浅黄幕が落ちるときのような感じに幕が落ちて、その後ろにあるものが現れる演出があり、幕の材質が違うのでフワフワとあーゆるやかに落ちる感じが、バレエらしいと思った。
職人たちの踊りで、男性ダンサーの一人がトウシューズで踊る趣向が面白かった。

序幕の最初にヒッポリタの部屋でヒッポリタ(エレーヌ・ブシェ)が花嫁衣装の長いトレーンを引きながら一歩一歩前に進む絵柄が美しい。
やがて、カウチの上で眠り込むヒッポリタ。

全身タイツの妖精たちは宇宙人のようでもあり、昆虫のようでもある。皆、タイツ姿に耐える美しい骨格をしている。3つの木立と、絡み合って動く妖精たちの姿が、正に別世界。

パックが赤い花を上に放り上げて暗転、としゃれた終わり方をする一幕。

二幕は結婚式で、メンデルスゾーンの結婚行進曲が鳴り響く。結婚式の、古典的なバレエの後、赤い花が舞台の真中に落ちる。やがてそこに妖精の女王タイターニア(エレーヌ・ブシェ)と王オベロン(ウラジーミル・ヤロシェンコ)が現れて二人のデュエットになり、タイターニアをリフトしてゆるやかに回っているところで幕となる。二人の姿を最後まで見せる、幕の閉まり方も素敵だ。エレーヌ・ブシェの持ち上げて後ろに回した脚が長くて綺麗だった。

きょうは後ろの方の席だったし感動したので、カーテンコールにジョン・ノイマイヤーが現れたときはスタオベをした。30年前のNHKホールで何度も律儀に現れたカーテンコールを思い出した。お互いに、あの頃は髪も黒かったが、今はすっかり白髪になった。

もとの黙阿弥2015/08/03 01:28

愛之助ごのみ弁当
2015年8月2日 新橋演舞場 午前11時半開演 1階4列13番

少し遅刻して着席。舞台では坂東飛鶴(波乃久里子)がかっぽれを教えているところで、「黄色い声を出して」と言っていた。芝居小屋が興行停止になって、「よろず稽古指南所」になっている。看板には、裁縫、洋食作法、西洋舞踏まであって面白そう。

書生の久松役の早乙女太一は前輪が大きく後輪が小さい二輪車で飛びこんでくる、という衝撃的な登場。久松の主人にあたるのが男爵家の跡取りの隆次(愛之助)。愛之助は早乙女と同じ二輪車をゆっくりこいで花道から登場。愛之助は少し前より顔がすっきりした。目鼻立ちがくっきりして、目が大きいことがよくわかるようになった。京都から来たお公家さんの役だから愛之助に合っている。

隆次と鹿鳴館で見合いをする予定の豪商の娘、お琴は貫地谷しほり。大人しい役で、特にこの人が演じる必然性がない。女中のおしげは真飛聖で、こっちの役の方が目立つ。

鹿鳴館で見合いをする前に、隆次とお琴は、「よろず稽古指南所」で洋食作法と西洋舞踏を習う。精養軒から洋食を出前に来る役が愛一郎で、けっこう目立つ。

隆次の姉役の床嶋佳子は品の良い美貌がいかにも華族さまという雰囲気ではまり役。

隆次とお琴は相手の本性を見極めるために、久松と隆次、おしげとお琴が入れ替わる。洋食作法でコーヒーを飲んでいるときに、隆次に成り切れない久松がおかしなことを言ってしまい、隆次がコーヒーを吹くシーンも。

書生と女中のふりをしている隆次とお琴の変な会話を盗み聞きしている付け焼きパン屋実はスパイ役の酒向芳が見た目も演技も良い味を出していた。

劇中劇が3つある。音楽劇では宝塚出身の真飛が水を得た魚のように生き生きと歌って踊る。共演の早乙女は歌が弱く、着物を着るわけではないので不利か。宝塚の男役だった人と、女形をやる早乙女という組み合わせが面白い。劇中劇以外の普通の芝居のところでは、二人ともメリハリがきいた演技でとても良かった。

隆次の姉は演劇改良運動に熱心で、芝居はリアルでなければいけないという考えで、床嶋は「写実劇」に出る。精養軒で貧しい母と入学試験に合格した息子が食事をするシーンで、コントのようで面白かった。

愛之助は「歌舞伎劇」に出て「おまんまの立ち廻り」というのをやるが、素人として演じなければならないので歌舞伎役者としての芸は封じられている。出てくるときの歩き方からして全く歌舞伎になっていない。せっかく愛之助が出ているのにもったいない。

最後に、隆次とお琴は互いに入れ替わっていたことに気づく。しかし、男爵と結婚すれば病気の父は順天堂に入院させられる、弟や妹といっしょに暮らせる、と夢を描いたおしげは元の自分に戻れない。苦い結末だが、隆次とお琴、久松とおしげが結ばれてめでたし、となるような予定調和的な終わりよりは気が利いている。しかし、具体的に何になりたいというわけでもないのに隆次が男爵家の跡取りになるのをやめるのは、考えが甘いとしか思えない。隆次は実は芝居狂いで芸事が好きで、歌舞伎役者になる決心をした、とか言うのなら、愛之助がこの役をやる意味があるし、歌舞伎劇のときにもう少し歌舞伎っぽく演じることもできるし、と思うのだが。

国立モスクワ音楽劇場バレエ「エスメラルダ」2015/05/22 00:45

2015年5月20日 東京文化会館 午後6時半開演 1階5列34番

日露修好160周年記念ということで、開演前に鳩山由紀夫と、ロシア国家院議長の挨拶があった。二人に花束を贈呈したのは、この後のバレエでジプシー役を踊るバレリーナ二人。ロシア国家院議長は、お礼のキスをする。おおっ、ロシア!

ブルメイステル版「エスメラルダ」

高く上げた足でタンバリンを打つ踊りを映像で見た覚えはあるが、このバレエ自体は見たことがなかった。プログラムによれば、ストーリーは「ノートルダム・ド・パリ」なのだ。

ノートルダム寺院の中から外を見ている装置は魅力的。足でタンブリンは打たないがエスメラルダ(ナターリヤ・ソーモワ)の踊りは綺麗だった。
最も魅惑的なのはジプシー役のアナスタシア・ペルシェンコワの踊り。

カーテンコールが何度もあって、隣りの席のロシア人(たぶん)が、主役に何度もブラボーと声を掛けていた。

藤間勘十郎素踊りの会2015/04/29 13:44

2015年4月28日 国立劇場小劇場 昼午後2時開始、夜午後6時半開始、昼夜1階8列18番

昼の部

「保名」
花道から出てくるのかと思っていたら舞台後方から現れた。いつものようにふんわりと柔らかい踊り。

「茶壺」
大好きな踊りなので一番楽しみにしていて、やはり一番面白かった。目代の種之助の踊りも楽しめたので。
麻胡六は廣太郎のゆるキャラが生きた。熊鷹太郎の勘十郎と二人で籠を背負って二人の顔が並ぶとユーモラス。
熊鷹太郎が麻胡六の言うことをこっそり聞きに行って戻るときに最後は少しすべるのが面白かった。

「娘道成寺」
大阪で観たときと同じで、所化ではなく強力が出る。米吉が「きいたかきいたか」と先頭で鷹之資、玉太郎、梅丸が「きいたぞきいたぞ」と続く。
花のほかには松ばかり~、のところ、傳左衛門の小鼓をはじめ、演奏がすごく良かった。


夜の部

「藤娘」
はじめ真っ暗なのは歌舞伎のときと同じ。明りがつくと、いつものように藤の花が下がっていて、視界がパッと華やぐ。 真ん中の木はなかった。あれはやはり衣装替えのためにあるのか。勘十郎は藤の花をかついで、黒い笠を持っていた。
素踊りなので衣装の引き抜きのような視覚的楽しみはないが、その分じっくり勘十郎の踊りを見られた。最後はすっぽんからせり下がる。

「鳥羽絵」
たぶん初めて観る踊りだ。玉太郎がネズミの役。そこに出てくる升六役の勘十郎。藤娘との間には休憩はないのに、もう着物を着替えている。
玉太郎のネズミが柄に合ってとても可愛く、勘十郎と顔の大きさがかなり違っていて、二人のコンビネーションが楽しかった。

「鏡獅子」
鏡獅子の最初、御殿に4人座っているが素踊りなので袴姿。袴歌舞伎と思えば良いのだが、男の役の廣太郎と種之助の方はともかく、飛鳥井の米吉と吉野の梅丸は、男子の姿で女形なのが可愛くて笑ってしまう。後見は鷹之資。弥生に扇を渡したり、けっこう大変そうだが頑張っていた。
胡蝶は渡邊愛子ちゃんと林ももこちゃん。
獅子が出てくる前は、傳左衛門に傳次郎も加わって久しぶりに獅子の咆哮を聴いて嬉しかった。勘十郎は袴姿で鬣つけてくるのかと予想していたが、頭はそのままで、上半身に衣装をつけていた。

K-Ballet Youth 「トム・ソーヤの冒険」2015/04/07 23:33

2015年4月5日 オーチャードホール 12時半開演 1階20列10番

一幕目と二幕目の初めに、男の子と女の子がベルを鳴らしながら客席を歩く。
これも一幕目と二幕目の開幕直前に、熊川哲也が中央下手の扉から入ってきて席についた。座って足を組む様子が熊川だった。

「トム・ソーヤの冒険」、話はよく知っているが、バレエにする場合、音楽はどうするのか、と考えていたが、幕開きはデキシー。リパブリック讃歌、Johnny, get your gun、ヤンキードゥードルなどアメリカの曲がところどころに流れ、最後の場面はマイオールドケンタッキーホームだった。

最初は、村の人たちの中でトムだけが動いている。やがてみんなが動き出す。

ポリーおばさんの娘のメアリーの踊りが綺麗だった。
ベッキーはもっと美少女をイメージしていたが、踊りは安定していた。

ハック役の矢野政弥は小柄だが芝居志向の踊りで目についた。
リゼットの三好梨生が超絶可愛く、スタイルも良く、色っぽくて華があった。
黒ぶた役の酒匂麗が個性的でうまい。

二幕目のこうもりの群れは、マシューボーンの「白鳥の湖」で王子を襲う白鳥たちのように怖いイメージだろうと思うので、外人の女のような脚のダンサーたちをそろえて迫力を出してほしかった。と考えてしまうほど、ユースといってもレベルが高かった。

次のウィリの場面はジゼルやシルフィードのような雰囲気。ウィリの女王の吉田このみがほっそりと綺麗で、この人がこうもりの女王をやったらどうなのかと思った。

最後は「血の婚礼」の冒頭のように村の人たちが記念写真のように並ぶシーンがあった。そして、またトムだけが動いて他のみんなは止まる。

冗長なところはなく、踊りの見せ場をうまくつなげて、よくまとまっている。音楽と美術も悪くない。

きょうはカーテンコールに熊川も出た。

シンデレラ2015/04/01 00:01

2015年3月21日 オーチャードホール 午後四時半開演 2階4列22番

「シンデレラ」はずいぶん前にボリショイ(?)のを観たときにあまり面白いと思わなかったので、期待していなかったが、けっこう良かった。

4人の妖精が一人一人個性があってレベルが高かった。馬車は「かぼちゃの馬車」のイメージとは違って、曳くのは4頭の牡鹿だし、クリスマスカードに出て来そうな北の国っぽい雰囲気だが、夢のような雰囲気ときらびやかさがあった。全体に美術が素晴らしい。

個人的には、王子様が王子様に見えたのが一番だ。井澤諒は顔立ちも良く、足も長く、シンデレラの王子ではないかもしれないが、東南アジアの王子には十分見えた。

海外のバレエ団をいくらでも見られる今の日本で、人気を保っているだけのことはあると思った。

三月大歌舞伎 夜の部2015/03/16 22:15

2015年3月8日 歌舞伎座 午後4時半開演 1階2列22番

「車引」

愛之助の梅王丸を観るのは3回目だが、菊之助の桜丸、染五郎の松王丸だと、なんか一人違う感じがする。美声だが低い声と高い声が混じっている愛之助の声より、杉王丸をやっている萬太郎の声の方が今月の梅王丸としてはしっくりくるような気がした。
最後に決まる形は、愛之助だと苦しい。今月の座組だったら松緑が梅王丸、愛之助が源蔵をやった方が二人とも楽だろう。勉強しなさいということだろうか。

染五郎の松王丸は貫禄があった。「車引」は梅王丸の方が大きな役だと思っていたが、染五郎が主役だと感じてしまう。

「賀の祝」

愛之助はこっちの方が良い。台詞が多く、それも上方弁なのでアドバンテージがある。兄弟喧嘩で米俵を持ち上げたりする姿が似合う。それでも途中でいなくなる染五郎の松王丸の方がやっぱり主役だと感じる。

この幕は嫁たちが出てくるのが好きだ。松王女房の孝太郎はこの座組みだともうベテランで、梅王女房の新悟とは嫁姑くらいの年齢差があるが、新悟はしっとりしっかりしているので、年齢差は感じない。舅の白太夫と連れ立って花道から出てくる、桜丸女房の梅枝。「加茂堤」に続いて梅枝が一人で見せる場面があるが、危なげがなく、華やかさもある。

「寺子屋」

涎くりは廣太郎。いつもながらの緩い雰囲気でかわいい。寺入りで千代の所作を真似るところは、種之助のようなうまさはないが、かわいくて面白い。

涎くりを叱る戸浪は若い壱太郎だが、貫録がある。源蔵に菅秀才を守る計画を打ち明けられて同調する。昼の部と配役は違っているが、昼の部の「筆法伝授」で背負って来た子供を守ろうとしている。瑞々しいが一本芯の通った、良い戸浪だったと思う。孝太郎の千代は、お仕置きを受けている涎くりを戸浪に許してもらおうと面倒を見るところが、おばさんらしくていい。

松緑の源蔵は花道を歩いてくるところは良いが、子供たちの顔を見回して言う最初の台詞から下手。台詞はずーっと下手で、松王丸が来て動きが主体になると、所作はやたらに綺麗。首実検の松王丸を見据えてつま先を立てている足の裏が目についた。

松王丸の染五郎は、駕籠から降りて来て咳込むところが下手だと思った。あとは普通で、一度帰った後に再び源蔵宅を訪れて、大泣きする前に千代に「家でさんざん吠えたではないか」と言うあたりが気持ちが伝わって来て染五郎らしいと思った。

明治座花形舞踊公演 11/27 昼の部2014/11/28 02:12

2014年11月27日 午後1時開演 2階1列10番

「種蒔三番叟」

後見の國矢と蔦之助が上手、下手でお辞儀をしているところに、千歳の勘十郎、三番叟の猿之助の順で下手揚幕から出てくる。素踊り。
勘十郎の三番叟の踊りが好きなので、役を逆にしたバージョンも観たいと思ったが、勘十郎のやわらかい動きは見ていてとても心地よい。触ったらふわふわしていそう。
猿之助の踊りは全体的に良かったが、特に、身支度の一連の所作が凄いと思った。袴をはいて、次に刀を一本ずつ差して、のような踊りは前に見たことがなかった。

「汐汲」

海女の役の市川ぼたんは拵えをして桶をかついですっぽんから上がって来る。
私が観る舞踊はほとんど歌舞伎なので男性が踊る。肩から二の腕にかけて非力な感じがしたのはぼたんが女だからかもしれない。

「阿古屋三曲筝責め」

「趣向の華」でも勘十郎がこれをやったことがあるが、今回は着物の上に紫の薄物を羽織って出てきて、より阿古屋らしい雰囲気を出し、曲と曲の間に後見の國矢に紫の薄物を広げて持たせて踊ったりした。
玉三郎の阿古屋のときでも胡弓の演奏が一番好きだが、勘十郎のときも同じだ。

「鯉つかみ」

去年の五月に明治座で観た愛之助の「鯉つかみ」。今回は一階前方席にビニールが配られている様子はなく、水を使う気配はない。どうするのかと思っていたら、鯉つかみの場では、後ろに置いた屏風や横に伸ばした水色の布、何人もの踊り手が布晒しをすることで水を表現していた。

傅次郎の打つ、船弁慶の知盛の引っ込みのときのようなテンポの速い太鼓にのって、鯉の精(菊之丞)がさっと現れる。銀色のうろこ模様の着物と、両手に持った銀色の扇。踊っているうちに、他の人たちの影に隠れて茶色い着物の滝窓志賀之助に早変わりする。

最後は、鯉をやっつけた志賀之助が花道から六方で引っ込んだ。

休憩時間にロビーにいたら、「趣向の華」のときにお母さんに抱かれていた勘十郎の息子さんが、きょうは立っていた。つかまり立ちの時期なのかもしれない。

舟木一夫特別公演2014/09/19 03:22

2014年9月18日 新橋演舞場 午後4時開演 1階20列16番

スカイツリー歌舞伎のときに松也が、今度天一坊の役をやると言っていたので、観ることにした。

「八百万石に挑む男」

天一坊役の松也は初め、山伏姿で出てくる。金剛杖を振り回して活躍。自分は吉宗の落胤だと言い放つ。証拠の短刀と書き付けも持っている。天一坊を連れて江戸に行く伊賀之亮が舟木一夫。大岡越前が林与一、吉宗は田村亮。
松也の一門の徳松は天一坊を育てた寺の僧、松五郎、隆松は天一坊の家来の役で出る。

品川の八つ山御殿で、若様のような綺麗な着物を着た天一坊が気取った声で「苦しゅうない」と言うのが面白くて笑いを誘っていた。そして、急に雑な話し方に変わるメリハリがついていた。

100分以上ある芝居で、最後のシーンは舟木一夫の大屋根の立ち回りで、松也の最後のシーンは吉宗の鷹狩の場で親子の対面をするところ。頬かむりを被って出てくる松也に「音羽屋!」と声が掛かった。そして、花道の引っ込み。

大きくて見栄えがするし、若様風の容貌で、天一坊役はぴったりだった。

「シアターコンサート」

コンサートの最初に舟木が松也のことに触れた。「背はあるし、肩幅はあるし、胸板は厚いし。運動が行き届いてるんでしょう。許せないのはむこうは29で、こっちは69。40年の齢の差はどうにもならない。近くで見ると、若いから化粧の乗りがすごくいい」

舟木一夫は私が小学校の高学年の頃にデビューした。特にファンだったわけではないが、記憶力の良い時代にはやった歌なので、そらで歌える歌が多い。

きょうは、日本の名曲シリーズで「この世の花」と「涙の渡り鳥」をうたった。島倉千代子の「この世の花」はすごく懐かしかった。

「銭形平次」では客がスタンディングで、舟木が手ぬぐいを撒いた。

着物から洋服に着替えて出て来て、昔のヒットソングを歌いながら、ファンから花束やプレゼントを受け取り、抱えきれないくらいになると後ろのテーブルに置きに行く。上手、下手、と動きながらそれを何回も繰り返して、全員から受け取る。自分も年取って来たので、物を受け取ってそれをどこかに置きに行って、また戻って・・・を繰り返すのは疲れるだろうなと思うが、律儀にやっている。受け取るために膝を折ったりもしている。ファンも舟木もいつものことで淡々とやっているが、昭和のアイドルだなあ、と感動した。

昼と夜は曲目が違うそうで、映画の主題歌でテレビで聴く機会は少なかったのだがとても好きだった「その人は昔」が聞けて嬉しかった。

きょうは「みんなde舟木」というイベントがある日で、コンサートの後、少し客席で待ってから、舟木一夫と客席のみんながいっしょに写真に納まった。

帰りには、楽屋口で待つ出待ちのファンが、道路を渡った向こう側にまでいた。青春の思い出の一部になっている人は強い。