昭和62年2月の歌舞伎座と演舞場 ― 2007/02/11 22:24
昭和62年(1987年)2月、片岡孝夫は歌舞伎座の昼の部の「勧進帳」と新橋演舞場の夜の部「日本橋」に出た。
2月1日(日) 新橋演舞場 昼の部 午前11時半開演 3階3列39番
日記より。 「きょうは新派の昼の部を観に行った。遊女夕霧、十三夜、佃の渡し、の三本に、初日だから特別に口上がつく。遊女夕霧は波野久里子が主役で新潟出身の女郎の役だが生活感があっておもしろかった。十三夜に玉三郎が出るのだが話の内容は全く古い。玉三郎のできは悪くない。あの人が何を考えてあの役をやっているのだろうと思う。佃の渡しでは良重が二役だが、おさきの役は柄にはまっている。きょうは初日だから勘三郎も観に来ていたし、NHKの桜井アナウンサーも見た。口上では玉三郎が芸者の格好で踊ってとても美しかったし、孝夫も口上だけのために来たので、きょうはとても得をした気分だ。」
この日、演舞場を出るときに見た勘三郎を覚えている。同じ出口に向かう大勢の客たちの中から「おじいさんになったね」という声が聞こえた。自分が知っているかぎりの勘三郎は既におじいさんだったが、若い頃を知る客がいたのだろう。玉三郎が芸者姿で踊ったのは記憶に残っていない。残念。
2月8日(日) 新橋演舞場 夜の部 午後4時半開演 1階6列40番
日記より。 「最初に口上があって、それはこの前の口上と基本的には同じだった。日本橋は、玉三郎が出るところはとても楽しめたが全体的にはそれほど面白くない。気風のいい芸者の役は玉三郎にとても向いていて、おかるの役にも匹敵するような気持の良さだった。気が狂った後の役も良かった。紅をぬっていないのに美人に見えた。孝夫の役はしどころがなくてつまらなかった。」
2月15日(日) 歌舞伎座 昼の部 午前11時開演 3階は列28番
日記より。「勧進帳はとても良かった。言っていることはわからないが視覚的に楽しめた。孝夫は背が高くて立派な弁慶で、ひきつけられて見てしまう。孝夫の富樫で、孝夫の弁慶で観たい。」
ずっと観たかった孝夫の富樫をやっと観られたのは3年前の7月、海老蔵襲名の松竹座においてだった。
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