2008年 新春浅草歌舞伎 鏡開き2008/01/03 02:21

浅草公会堂の前は黒山の人だかりだったので、もう鏡開きは始まってしまったのかと思ったが、まだだった。去年よりマスコミも一般人も明らかに多い。写真は腕を伸ばして撮影したもの。

覚えている挨拶の内容は・・・・

亀治郎 そろそろ引き際を考えています。

獅童 亀治郎さんが引き際だったら俺はどうするんだ。

愛之助 大阪から来ましたが関が原で雪が降っていて鏡割りに間に合うかと思った。

七之助 よければ博多にもいらっしゃってください。

今年から、坂東巳之助も加わった。最後に挨拶した男女蔵の求めにより、いつもお年玉挨拶でやっていたようにみんなで声を合わせて「オメちゃん、オメちゃん」と叫んだ。

2008年 新春浅草歌舞伎 初日 第一部2008/01/03 02:51

2008年1月2日 浅草公会堂 午前11時開演 1階い列27

初日は、プログラムを買ったりイヤホンガイドを借りたりプロマイドの申込みをしたりと開演前に忙しい。

初日の年始挨拶は獅童だった。今年も、舞台で挨拶した後花道に立って「1階の皆さん、用意はいいですかー、はくしゅー」パチパチパチパチ、というのをやった。花道に立ったとき、袴の裾が少しまくれているな、と見ていたら最前列のおばさんがスタスタと出て行って、手を伸ばして直していた。

「傾城反魂香」

虎が可愛かった。坂東功一が百姓の一人で出ていて眼福。修理之助役の巳之助はときどき声が裏返る。素顔だとあまり似てないが、拵えをした顔が三津五郎をごつくした感じ。

愛之助の雅楽之助は「渡海屋・大物浦」の相模五郎とかぶる。

舞台がぐっと良くなったのは勘太郎が声を出してから。それまでは滔々としゃべるおとくにも感動しなかった。勘太郎は徳川家重やマイレフトフットの主人公の役もうまそうだ。後半の踊りはもう、吉右衛門の吃又を観たときからずーーーーっと、勘太郎の踊りが見たかった。亀治郎はうまいが、優しい奥さんにも色気のある奥さんにも見えなかった。又平は勘太郎で、おとくは芝雀タイプの女形がやると私の好みの芝居になるだろうと思う。

「弁天娘女男白浪」

七之助は綺麗だがお嬢さまの格好をしていてもあまりお嬢さまぽくない。不良少女に見える。だから浜松屋に入ってきたときと出て行くときとで雰囲気があまり変わらない。正体がばれてからの台詞は全体的には良いが、もう少し発音が明瞭だと良いと思う部分があった。

獅童の南郷力丸は今までに観た南郷の中で一番好みだ。この人はいい男で、一歩下がって相手を包み込むような男らしさがあって、良い相手役だと思う。

愛之助は日本駄右衛門は前にもやったことがあり、ネット上の評判も良かったので期待していたが、それほど感動しなかった。浜松屋店先のところは顔がたるんで太っているように見えたし、勢揃いのところももう少し引き締まった力強さがあると良いと思った。しかしこれは私の勝手な願望で、日本駄右衛門は私が期待しているようなキャラではないのかもしれない。幕切れは、足を見せて決まる南郷役の獅童がかっこよかった。

2008年 新春浅草歌舞伎 初日 第二部2008/01/03 04:12

2008年1月2日 浅草公会堂 午後3時開演 1階き列15

年始挨拶は愛之助だった。去年と違って羽織袴に素顔。舞台で挨拶した後、獅童と同じく花道に立ってしばらく話した後、客席に降りて客の質問を募った。

「金閣寺」

去年の1月に観た歌舞伎座の同演目は眠ってしまったが、今回も今にも眠りそうだった。勘太郎の此下東吉は品があって動きが美しくてよい。亀治郎の動きを見ているとあれを玉三郎がやったらさぞ美しかろうと思うが、去年観たときはあまり感動しなかった。

「与話情浮名横櫛」

七之助のお富は小山三に傘をさしかけられながら花道から登場した。七之助はすごくうまい上に、すごくニン。玉三郎に教わったそうで玉三郎の名残を感じるが、玉三郎より良いかもしれない。大人びた女が向いてる七之助は弁天小僧よりお富の方がずっと良い。

愛之助の与三郎は下手ではないが非常に違和感のある与三郎だった。イントネーションが違うとかいう個別の問題ではなく、身体の中に与三郎がない感じ。関西出身の仁左衛門が当代の与三郎役者で、愛之助も多少イントネーションがおかしくて仁左衛門のようにかっこよくはなくてもそこそこの与三郎はやるだろうと予想していたので、びっくりした。

見染の場の冒頭には長身イケメンの功一が出るし、金五郎役の獅童の方がすっきりした江戸前の二枚目なので、背が低い愛之助の与三郎が出てきても二枚目が目立たない。それでも、見染の場はつっころばし風にやるのか、源氏店ではどう変わるのかと観ていた。

注目の羽織落としは、まず、客席の散歩から戻った花道で酔っ払いとぶつかったときに酔っ払いが与三郎の羽織のひもをひっぱってほどく。仁左衛門はそのまま何もしない(ように客からは見える)で最後の羽織落としまで行くのだが、愛之助は舞台に戻ったときに客席から見えない方の肩から羽織を落とし気味にした。そして、私が花道を去るお富を見ている間にもう一方の肩からも落ちていて、そのまま下に落とした。明日は、もう一方の肩からどうやって落としたのかしっかり見とどけるつもり。

源氏店の七之助は化粧している姿が若い娘らしくて綺麗だし囲い者らしい色っぽさもある。蝙蝠安がお富と掛け合っている間後ろ向きで座っていた与三郎がお富の顔を見てお富と気づき大きく息を弾ませるところは仁左衛門と同じ。「立派な亭主もいる身体」というお富の台詞に反応して口をきっと結んでにらみつけるようにお富の方に顔を動かす仁左衛門の仕草が好きだったが、愛之助はこれはやらないようだ。「ご新造さんへ」の台詞を始める体勢に入ると、いつも通りに客席が静まり返る。そして「待ってました」の声もかかった。台詞はうまく言えていた。幕切れは「生涯おめぇをはなさねえぜ」バージョン。

蝙蝠安の亀鶴は予想通りうまかった。松之助の藤八の顔を見て驚くところはちょっと大げさかとも思ったが。男女蔵の多左衛門は台詞まわしが左団次によく似ている。

愛之助の与三郎だけが不合格。「ニンでない」と言ってしまうとそれまでなのだが、声、顔、着物の着方をもう少し研究して改良することはできないだろうか。声は愛之助の一番の美点だと思うのだが、きょうは与三郎だけでなくどの役の声も気に入らなかった。挨拶のときの普通の声が一番良い。愛之助は高音の方が楽に出せるようだが、孝太郎が出すような耳ざわりな音が時折出ていた。愛之助の高音はネットリした感じがするし、女形っぽい感じもするので、与三郎のときにそれが聞こえるとひどく違和感を感じる。声をすこし低めにして女形っぽい耳ざわりな音が混じらないようにしたらどうか。顔も、かさねの与右衛門を思い出すような哀愁をおびた美貌に仕上げてあったが、女っぽい。どうにかしてもっと男らしさが出るようにしてほしい。

着物のことは全くわからない私が言うのもなんだけれどズルズルした感じでちっともかっこよくない。愛之助はチビだけど歴代の与三郎役者だってほとんど愛之助より背が低かったはずなので、もっとかっこよく見える着方があると思うのだが。