2008年 新春浅草歌舞伎 第二部 4回目2008/01/14 21:57

2008年1月14日 浅草公会堂 午後3時開演 1階い列21番

年始挨拶は亀鶴。去年はこしらえをして挨拶したので、素顔をこんなに近くで見るのは初めてだ。獅童と並んで現代青年というしゃべり方の人。こんなに普通の東京圏のしゃべり方の人がよく浪花花形に出てるものだ。舞台は、お客様に足を運んでもらわなければならない、お客様といっしょに作り上げるもの、という話をし、拍手のタイミングがよくわからないと質問を受けることがあるがそれはいつでも良い、ただ最良と思うのは見得のとき、と言って羽織袴でトンボを切って客席に降り、最前列の女性に見得の真似をさせた。 花道の説明、附け打ちさんの紹介など、歌舞伎鑑賞教室風。

「金閣寺」

きょうは舞台に近い席なので細部がよく見えた。そのせいかきょうも眠らないで見通した。前回の愛之助の挨拶のときの演目紹介で、「碁を打って」と言って指を碁石を持って打つ形にしたので歌舞伎ではこれも型としてあるのかと興味深かったが、大膳役の獅童と東吉役の勘太郎が碁を打っているとき、獅童は指を真っ直ぐのばして石をもって打ち、勘太郎は指を丸め気味にしているのが面白かったのでずっと見ていた。何手も打っているが、決まっているのだろうか。

勘太郎はきょうも良かったが、碁盤の見得が終わって座敷に戻ったあたりで、右側の額の上の羽二重が浮いて、額に横線が入って見えた。一度引っ込み、戻ってきたときは直っていたが、じっと顔を見てしまった。

大膳が刀を掲げたときに滝に出る竜は棒にぶら下がっている小さいのだが、昨日の鳴神の大きな竜を見た後では、これも大きな竜にしてほしいという気になる。

雪姫の亀治郎を桜の木につなぐのは東吉の勘太郎だが、実際には綱を持って桜の木のところに行くと黒衣さんが待っていて綱を木につなぐ。この黒衣さんは桜の木の前にうずくまった亀治郎の簪や着物を直していた。

雪姫の夫役の七之助は上半身を縛られた状態で歩いてくるが、別れを惜しもうにも雪姫のように首を振って悲しみを表現できるわけでもなく、難しいだろうと思った。

桜の花びらが降りはじめ、その中で雪姫が動きだす。金閣寺の前に桜の花びらが降り、その中で美しい(という設定の)姫が踊っている。なんと贅沢な美しさだろう。桜の花びらがあんな風に降ることはないが不問とする。桜の花びらは、やはり前に歌舞伎座で見たときよりも長い時間降って、最後はこれでもかと多量の花びらが降った。亀治郎の鬘や着物の上に積もり、特に首の後ろの襟のところにたくさんたまっていた。後で亀治郎が動くとき、その花びらが散って綺麗だった。

足元に積もった花びらは見えないが、白くて赤い目のハツカネズミはよく見えた。黒衣さん2人が棒につけたのを持っていて、最後に、亀治郎の身体の左右でネズミの背中が割れ、中から桜の花びらが散って、黒衣さんたちは左右に刷けた。

亀治郎は近くで見ると踊りも台詞もうまい。今度玉三郎の雪姫を観るときは近くで見たいな。良い席が買えれば。

獅童は容姿も台詞も良いが、やっぱりまださわやかお兄さんの役が似合う。去年の知盛は良かった。大膳は迫力不足。大膳は、わけのわからないエネルギーを感じる海老蔵で見たい。

「与話情浮名横櫛」

愛之助の与三郎が良くなっていて嬉しかった。見染の場は、あのつっころばし路線でかまわないのだろう。個人的にはあそこはどうでもいい。問題は源氏店である。

源氏店の与三郎はキャンキャンした感じが消えて、大分男らしくなっていた。低い声の部分が増えたように思う。私の好きな高さの声が多くなって、そうなると台詞はうまいので気持ちよく聞ける。

安といっしょに花道を出てくるときは、前から見るのはきょうが最後と首を回して顔をしっかり見たが、ほっかむりの顔が良くなった。玄関先に後ろ向きに座っているとき、きょうの席からは4日の席から見えた綺麗な斜め後ろ姿が見られなくて残念だった。

お富であることに気づき、「立派な亭主のある体」と聞いて、「ただではすまさない」みたいな決心を固めるところが身体の動きに現れていて、とても良かった。安とのやり取りの声もとても良くて、「よしイケ!」という感じだった。

イントネーションが微妙なところはあるが、そんなところが気になるほど全体が良くなっていた。着物の着方と顔にはまだ改良の余地はあるが。片方の裾をまくって片方の足が見えているときの、まくってない方の裾の位置が気に入らないのだが、あれで良いのだろうか。わからない。

愛之助は「比べないでください」と言っていたが、きょう仁左衛門と比べて愛之助の勝ちと思ったことが一つあった。腕の太さ。傷を見せるために袖をまくって腕を見せるが、その腕が筋肉質で太く、男らしい。

きょうはロビーで舞台写真を売っていて、勢揃いの時の日本駄右衛門の顔が気に入って買った。あの顔で与三郎ができたら男らしい中に若々しさがあって良いのだが。役毎に顔は決まってるんだろうなあ。そういえば、「久しぶりだなあ」の辺りで、何かの拍子に愛之助から白粉の粉がパッと散るのが見えた。

愛之助が今月の終わりまでには江戸の与三郎になることを期待している。