天日坊 ― 2012/07/05 00:05
2012年7月4日 シアターコクーン 午後1時開演 2階D列3番
「天日坊」
通路際で、前の列と重ならないので舞台がよく見えた。2階と言っても、角度的には歌舞伎座や演舞場の3階と同じだ。最後の立ち回りは舞台全体が見て取れて綺麗だった。
獅童が見たいからチケットを買った。その獅童がおかしなところも、ドスをきかせるところも十分で、凄くかっこよかったから大満足。歌舞伎で大きな役をたくさんやって自信がついたのだろうか。あるいは元々、時代劇にぴったりな人だからか。歌舞伎の古典だと歌舞伎味が薄いのに、普通の歌舞伎とは違うこんな芝居だと、誰よりも歌舞伎役者風なのが不思議。
七之助は、突然上手から現れるのが面白い。声に魅力がある。新悟もずいぶん色っぽくなった。最初に観たのがコクーンの四谷怪談のときで、ほんの数年前なのに、今や正統派の良い役者だ。こういう歌舞伎役者に「信じられない」みたいな現代の台詞を言わせるのが面白いのかも。亀蔵も、老婆と赤星の両方が面白かった。巳之助も良かった。
歌舞伎役者以外も出ている。私が知っているのは近藤公園だけだが。
きょうは会社を半休して行ったので、昼食後の初めの方は眠くなり、けっこう眠ってしまった。だから、話を理解していないのかもしれないが、歌舞伎とか喜劇とかの味付けなくサスペンスとして観たい芝居だと思った。サスペンスとしては好みの話。そこに「僕って誰」みたいなテーマ(?)が絡むと、イマイチよくわからない。特に、木曾義仲の息子の義高であることの、本人の中での位置づけがよく理解できなかった。
お客さんはよく笑っていたが、いちいち笑うのが面倒と感じる人間なので、笑ったのは、法策が百両持っていると知った赤星が急に態度を変えて「泊まってけ」と言ったときだけ。
最初の方で、背後に大きな猫の顔が現れたときは、「ニャオンの恐怖」という言葉が頭に浮かんだ。わかる人にしかわからないが。
最後の立ち回りは綺麗だった。勘九郎ももちろん良いが、七之助は衣装の色取りが相手方の黒い衣装との組み合わせで引き立って綺麗だった。獅童もやっぱり見た目はかっこいい。
休憩時間にロビーに行ったら演出の串田和美がいた。ゆうべテレビでで見た「はつ恋」のお父さんの演技がまだ頭の中で新鮮な記憶だったので感動した。串田はカーテンコールのとき、舞台から呼ばれて通路から舞台に歩いて行った。
「天日坊」
通路際で、前の列と重ならないので舞台がよく見えた。2階と言っても、角度的には歌舞伎座や演舞場の3階と同じだ。最後の立ち回りは舞台全体が見て取れて綺麗だった。
獅童が見たいからチケットを買った。その獅童がおかしなところも、ドスをきかせるところも十分で、凄くかっこよかったから大満足。歌舞伎で大きな役をたくさんやって自信がついたのだろうか。あるいは元々、時代劇にぴったりな人だからか。歌舞伎の古典だと歌舞伎味が薄いのに、普通の歌舞伎とは違うこんな芝居だと、誰よりも歌舞伎役者風なのが不思議。
七之助は、突然上手から現れるのが面白い。声に魅力がある。新悟もずいぶん色っぽくなった。最初に観たのがコクーンの四谷怪談のときで、ほんの数年前なのに、今や正統派の良い役者だ。こういう歌舞伎役者に「信じられない」みたいな現代の台詞を言わせるのが面白いのかも。亀蔵も、老婆と赤星の両方が面白かった。巳之助も良かった。
歌舞伎役者以外も出ている。私が知っているのは近藤公園だけだが。
きょうは会社を半休して行ったので、昼食後の初めの方は眠くなり、けっこう眠ってしまった。だから、話を理解していないのかもしれないが、歌舞伎とか喜劇とかの味付けなくサスペンスとして観たい芝居だと思った。サスペンスとしては好みの話。そこに「僕って誰」みたいなテーマ(?)が絡むと、イマイチよくわからない。特に、木曾義仲の息子の義高であることの、本人の中での位置づけがよく理解できなかった。
お客さんはよく笑っていたが、いちいち笑うのが面倒と感じる人間なので、笑ったのは、法策が百両持っていると知った赤星が急に態度を変えて「泊まってけ」と言ったときだけ。
最初の方で、背後に大きな猫の顔が現れたときは、「ニャオンの恐怖」という言葉が頭に浮かんだ。わかる人にしかわからないが。
最後の立ち回りは綺麗だった。勘九郎ももちろん良いが、七之助は衣装の色取りが相手方の黒い衣装との組み合わせで引き立って綺麗だった。獅童もやっぱり見た目はかっこいい。
休憩時間にロビーに行ったら演出の串田和美がいた。ゆうべテレビでで見た「はつ恋」のお父さんの演技がまだ頭の中で新鮮な記憶だったので感動した。串田はカーテンコールのとき、舞台から呼ばれて通路から舞台に歩いて行った。
国立劇場歌舞伎鑑賞教室とアフタートーク ― 2012/07/05 16:33
2012年7月5日 国立劇場大劇場 午前11時開演 2階1列
よみうりカルチャーの観劇入門講座に申し込んで、チケットは入り口ではがきと引き換えた。開演の15分くらい前で良席は期待してなかったが、ラッキーなことに2階1列目だった。上から見ると、1階の最前列は一般のお客さんがいたが、その後ろは中学か高校の生徒達で、開演前は若い声が轟いていた。
解説「歌舞伎のみかた」
花道のフットライトがついて、宗之助が登場。七三で見得。その後、自分の名前を言って、花道、上手、下手、定式幕、黒御簾などの基本的なことを説明。宗之助が黒御簾の方を向いているときに後ろの幕から国立劇場のキャラのくろごちゃんが出てきて、「そうのすけさんっ」と呼びかける。宗之助が、歌舞伎では黒は見えないという約束になっていると言い、黒衣の仕事を説明。裃後見というのがあると言うと、愛一郎が登場。差し金の蝶をくろごちゃんのまわりに飛ばす。くろごちゃんが、自分でも蝶を動かしてみたいと言って、愛一郎が「練習しようか」と受け、上手にはける。
その後、女形の拵えを実際に見せてくれた。モデルはりき弥。「片岡りき弥でございます」と言い、お化粧を開始。舞台のスクリーンにりき弥の顔が映ると、客席からおーーーっという声が。最初にびんつけ油を塗り、次に刷毛で白粉を大胆に塗って顔を真っ白にした後、スポンジで叩いて水分を取り、またスポンジで粉白粉をはたく。瞼にピンクをぼかしをいれ、目張りをいれる。顔を真っ白に塗ったので、後でまつげを拭くのが面白かった。眉をかくときが一番緊張するそうだが、そう言われる前に客席が息を飲むように静まりかえった。りき弥は自分の眉を剃っている。眉をそってない人は最初にびんつけ油で固めるのだそうだ。唇に紅をさすのは指で、わりと大雑把な感じ。
化粧が済んで舞台の真ん中に出てきた。男のままでも優男なので、そんなに変ってないと私は思う。
松竹衣装の人が出てきて、腰元の衣装を着せた。でも、りき弥はただ立ってるわけではなく、自分でひもをしばったり、前の方で自分ができることはしていた。宗之助が横で、「役柄によって襟の抜き方が違うんですよね。抜くというのは~」と説明。帯の後ろのところは、すでに形ができていて、差し込むようになっている。蝶結びの大きいのみたいなのは、宗之助が顔の前で持つとかなり大きい。
その後は、床山の人が出てきて、鬘をかぶせた。
宗之助が「これで完成ですか」というと、りき弥は「あとは手だけです」という。手の白粉は最後になるわけだ。白粉を塗るりき弥の袖を、後ろで宗之助がひっぱって持っていたのが、個人的に萌えシーンだった。「白粉はどうやって落とすんですか」「普通にクレンジングと石鹸で落ちます」みたいな会話をしていた。
舞台の真ん中に歩いていくりき弥は、見た目は腰元だが、歩き方はおにいさん。私はそれも好きだが、歌舞伎はそれでは困るので、宗之助が女形の身のこなしを説明。上半身は、両方の肩甲骨をくっつけて、肩を落とす。歩くときは膝と膝をくっつけ、内股に。女形の修行のはじめのときは股の間に紙をはさんで、それが落ちないように歩いた、という話をしたが実演はしなかった。
最後は、りき弥が腰元若菜になって、「毛抜」の家の事情を説明し宗之助に助けを請うた。2人がはけた後はスクリーンで、漫画のキャラのような絵で「毛抜」の登場人物や事件を簡単に説明。スクリーンの中の宗之助の言葉で、解説が終了した。
「毛抜」
最初は数馬(廣太郎)と秀太郎(高麗蔵)の喧嘩のシーン。廣太郎はまだ声が若い。高麗蔵は小柄だが綺麗で若衆にぴったり。2人の間に割って入るのが、腰元若菜のりき弥。りき弥、今月はすごく目立つ良い役をもらっている。
錦の前は廣松。初めて女形を見たが、思ったより台詞がうまかった。芝雀に教わるのだろうか。
愛之助の粂寺弾正が花道から登場。顔が衣装にもぐり気味だが、そういう衣装なのだろうか。
秀太郎に馬の指南をするところ、腰元巻絹に言い寄るところは、役者もよくて、面白かった。
弾正がいろいろ考えているところで、愛一郎と千蔵の裃後見が、それぞれ差し金につけた小柄と毛抜を動かした。
市蔵の万兵衛も良かった。
コンパスを持って天井から降りてくる忍びの者は千志郎。
愛之助の粂寺弾正は、きびきび、すっきりしていて、良かった。「これは」とか「参上いたしてゴザル」等、随所に、團十郎の台詞まわしを感じた。團十郎のようにとぼけた可愛さはない。しかし愛之助には台詞のうまさという武器がある。毛抜は、愛之助の美点を発揮できる作品なのだと思う。一番出しやすい高さの声をずっと出していて、ききとりやすい歯切れの良い台詞。所作も正確にこなしている。愛之助のつやのある声が、歌舞伎十八番の華やかさを出すのに役立っている。それに、教わったばっかりで、まだどこも崩れていない端正さがあるような気がする。本人も、かなり満足のいくできなのではないだろうか。
弾正の引っ込みのとき、七三で立ち止まって、刀を両手で持ち上げる。きょうはそれを正面から見ることができた。
この演目を観て歌舞伎にはまるとは思わないのだが、明るくて、わかりやすく、鑑賞教室向きの演目だと思った。
「アフタートーク」
終演後30分、アフタートークをきくために伝統芸能情報館の3階に行った。椅子席で、すでに数十人いたので驚いた。
愛之助が来たのは1時40分くらいで、トークは30分。進行役は河村常雄さん。
愛之助が来る前に、河村さんが、「皆さん何か愛之助さんに質問したいことはありますか。最近話題になっている結婚のことは私が聞きますから、それ以外で」と聞いた。永楽館の歌舞伎をこれからも続けるのか聞きたい、という人がいた。
愛之助は薄い藤色の羽織袴だった。トークは、ざっと次のような感じ。
・「毛抜」は松竹が決めた。自分の選択肢になかった。片岡家の人間は一人も弾正をやってない。自分はよく知らない演目で、皆さんの方がよくご存知じゃないかと思うくらい。松竹座で、獅童君が弾正をやったとき、春道の役だった。今月は友右衛門さんがやってるお父さんの役。春風ならともかくなぜ春道? 春道は最初と最後しか出てこない。裏で聞いてると、獅童君がずっとしゃべってて台詞が多くて大変そうだから聞いたら「大変だよ。一人でしゃべってて」と言ったので、やりたくない役だと思った。今回は「ついに来てしまったか」と思った。でも今月の国立は一日二回公演なので、二か月分勉強できるのは良い。
・何もわからないときにポスターをとった。ああいう格好してください、こういう格好してください、と言われながら。成田屋さんに挨拶に行ったのはその後。
・毛抜は役が多いのに、今月はいろんなところで歌舞伎をやっていて、残っている役者が少ない。お弟子さん達でやるしかないかと思った。そんな話を父にしたら「僕出てもいいよ?」と言った。自分が7月の松竹座に出ないことも考えにくかったのに、父の方はもっと。しかし、出ることになった。
・河村「台詞まわしが團十郎さんによく似てる」愛之助「普通に台詞言ってると歌舞伎十八番にならない」
河村「団十郎さんに一番強く言われたことは?」 愛之助「(声色風に)ひょうきんにやってください」 弾正の登場シーンも、愉快な感じで、常にニコニコしているように。 秀太郎に言い寄るところは「できるだけいやらしくやってください」と。
・河村「本当の秀太郎さんのやる腰元に言い寄るシーンは、やりにくいでしょ?」愛之助「いえ、そんなことないですよ。びびびびびー、のところで、客席の学生さんが、可愛いと言ってるのが聞こえた。芸の力」
・河村「最近、国立に出ること、東京に出ることが多くなったが、上方に住居をおきたいか」愛之助「上方に居をかまえて一生住みたい。演目については、上方も江戸も両方できればと思っている」河村「愛之助さんの勧進帳なんか観たいですね」愛之助「ありがとうございます」
・一般家庭から歌舞伎界に入ったことについて。子供のときは単純に衣装、装置にひかれた。顔を真っ白に塗るのが面白かった。養子になったのは、お嫁に行くような感じ? 実の父は、スタートラインに立たせてもらえるならそうしなさいといった。あっさり認めてくれた。今は、父の判断は凄かったと思う。
・上方歌舞伎の現状について。昔、十三世仁左衛門は財産をなげうつような覚悟で興行をしたが、今の盛り上がりの元になったのは澤村藤十郎さんが上方歌舞伎を愛する会を立ち上げたこと。今の勘三郎さんが、「今宵は勘九郎」というテレビなどで、盛り上げてくれたりして、今の松竹座の7月公演に至る。はっきり言って東京の人の力。
・歌舞伎以外の仕事もやって名前をしってもらって、歌舞伎を見に来てほしいと思う。テレビで見た人が歌舞伎もやってるみたいだから観に行こう、みたいなきっかけ作りが大事だと思う。自分も、何もやってなかったら歌舞伎は一生見なかったろうと思う。
・10月にエグザイルと共演する。エグザイルはファン層がひろい。リーダーのひろさんは頭が良い。芝居みても面白かったので声をかけさせていただいた。松竹は、こういう仕事には大反対。
・結婚について。余裕がない。生きていくので精一杯。しかし、最近ファンクラブで聞くと、結婚してほしいという人が圧倒的に多い。年のせいか?
・質問のあった永楽館について。「良い質問をありがとうございます」。出石に行くと皿蕎麦が食べられ、こうのとりがみられ、永楽館で歌舞伎も観られる、といわれるようになりたい。初役で、そこでしか観られないものをやりたい。
システィナ歌舞伎にも出る。主催者からは、5年連続で出て欲しいといわれているので身体が続く限りでる。
よみうりカルチャーの観劇入門講座に申し込んで、チケットは入り口ではがきと引き換えた。開演の15分くらい前で良席は期待してなかったが、ラッキーなことに2階1列目だった。上から見ると、1階の最前列は一般のお客さんがいたが、その後ろは中学か高校の生徒達で、開演前は若い声が轟いていた。
解説「歌舞伎のみかた」
花道のフットライトがついて、宗之助が登場。七三で見得。その後、自分の名前を言って、花道、上手、下手、定式幕、黒御簾などの基本的なことを説明。宗之助が黒御簾の方を向いているときに後ろの幕から国立劇場のキャラのくろごちゃんが出てきて、「そうのすけさんっ」と呼びかける。宗之助が、歌舞伎では黒は見えないという約束になっていると言い、黒衣の仕事を説明。裃後見というのがあると言うと、愛一郎が登場。差し金の蝶をくろごちゃんのまわりに飛ばす。くろごちゃんが、自分でも蝶を動かしてみたいと言って、愛一郎が「練習しようか」と受け、上手にはける。
その後、女形の拵えを実際に見せてくれた。モデルはりき弥。「片岡りき弥でございます」と言い、お化粧を開始。舞台のスクリーンにりき弥の顔が映ると、客席からおーーーっという声が。最初にびんつけ油を塗り、次に刷毛で白粉を大胆に塗って顔を真っ白にした後、スポンジで叩いて水分を取り、またスポンジで粉白粉をはたく。瞼にピンクをぼかしをいれ、目張りをいれる。顔を真っ白に塗ったので、後でまつげを拭くのが面白かった。眉をかくときが一番緊張するそうだが、そう言われる前に客席が息を飲むように静まりかえった。りき弥は自分の眉を剃っている。眉をそってない人は最初にびんつけ油で固めるのだそうだ。唇に紅をさすのは指で、わりと大雑把な感じ。
化粧が済んで舞台の真ん中に出てきた。男のままでも優男なので、そんなに変ってないと私は思う。
松竹衣装の人が出てきて、腰元の衣装を着せた。でも、りき弥はただ立ってるわけではなく、自分でひもをしばったり、前の方で自分ができることはしていた。宗之助が横で、「役柄によって襟の抜き方が違うんですよね。抜くというのは~」と説明。帯の後ろのところは、すでに形ができていて、差し込むようになっている。蝶結びの大きいのみたいなのは、宗之助が顔の前で持つとかなり大きい。
その後は、床山の人が出てきて、鬘をかぶせた。
宗之助が「これで完成ですか」というと、りき弥は「あとは手だけです」という。手の白粉は最後になるわけだ。白粉を塗るりき弥の袖を、後ろで宗之助がひっぱって持っていたのが、個人的に萌えシーンだった。「白粉はどうやって落とすんですか」「普通にクレンジングと石鹸で落ちます」みたいな会話をしていた。
舞台の真ん中に歩いていくりき弥は、見た目は腰元だが、歩き方はおにいさん。私はそれも好きだが、歌舞伎はそれでは困るので、宗之助が女形の身のこなしを説明。上半身は、両方の肩甲骨をくっつけて、肩を落とす。歩くときは膝と膝をくっつけ、内股に。女形の修行のはじめのときは股の間に紙をはさんで、それが落ちないように歩いた、という話をしたが実演はしなかった。
最後は、りき弥が腰元若菜になって、「毛抜」の家の事情を説明し宗之助に助けを請うた。2人がはけた後はスクリーンで、漫画のキャラのような絵で「毛抜」の登場人物や事件を簡単に説明。スクリーンの中の宗之助の言葉で、解説が終了した。
「毛抜」
最初は数馬(廣太郎)と秀太郎(高麗蔵)の喧嘩のシーン。廣太郎はまだ声が若い。高麗蔵は小柄だが綺麗で若衆にぴったり。2人の間に割って入るのが、腰元若菜のりき弥。りき弥、今月はすごく目立つ良い役をもらっている。
錦の前は廣松。初めて女形を見たが、思ったより台詞がうまかった。芝雀に教わるのだろうか。
愛之助の粂寺弾正が花道から登場。顔が衣装にもぐり気味だが、そういう衣装なのだろうか。
秀太郎に馬の指南をするところ、腰元巻絹に言い寄るところは、役者もよくて、面白かった。
弾正がいろいろ考えているところで、愛一郎と千蔵の裃後見が、それぞれ差し金につけた小柄と毛抜を動かした。
市蔵の万兵衛も良かった。
コンパスを持って天井から降りてくる忍びの者は千志郎。
愛之助の粂寺弾正は、きびきび、すっきりしていて、良かった。「これは」とか「参上いたしてゴザル」等、随所に、團十郎の台詞まわしを感じた。團十郎のようにとぼけた可愛さはない。しかし愛之助には台詞のうまさという武器がある。毛抜は、愛之助の美点を発揮できる作品なのだと思う。一番出しやすい高さの声をずっと出していて、ききとりやすい歯切れの良い台詞。所作も正確にこなしている。愛之助のつやのある声が、歌舞伎十八番の華やかさを出すのに役立っている。それに、教わったばっかりで、まだどこも崩れていない端正さがあるような気がする。本人も、かなり満足のいくできなのではないだろうか。
弾正の引っ込みのとき、七三で立ち止まって、刀を両手で持ち上げる。きょうはそれを正面から見ることができた。
この演目を観て歌舞伎にはまるとは思わないのだが、明るくて、わかりやすく、鑑賞教室向きの演目だと思った。
「アフタートーク」
終演後30分、アフタートークをきくために伝統芸能情報館の3階に行った。椅子席で、すでに数十人いたので驚いた。
愛之助が来たのは1時40分くらいで、トークは30分。進行役は河村常雄さん。
愛之助が来る前に、河村さんが、「皆さん何か愛之助さんに質問したいことはありますか。最近話題になっている結婚のことは私が聞きますから、それ以外で」と聞いた。永楽館の歌舞伎をこれからも続けるのか聞きたい、という人がいた。
愛之助は薄い藤色の羽織袴だった。トークは、ざっと次のような感じ。
・「毛抜」は松竹が決めた。自分の選択肢になかった。片岡家の人間は一人も弾正をやってない。自分はよく知らない演目で、皆さんの方がよくご存知じゃないかと思うくらい。松竹座で、獅童君が弾正をやったとき、春道の役だった。今月は友右衛門さんがやってるお父さんの役。春風ならともかくなぜ春道? 春道は最初と最後しか出てこない。裏で聞いてると、獅童君がずっとしゃべってて台詞が多くて大変そうだから聞いたら「大変だよ。一人でしゃべってて」と言ったので、やりたくない役だと思った。今回は「ついに来てしまったか」と思った。でも今月の国立は一日二回公演なので、二か月分勉強できるのは良い。
・何もわからないときにポスターをとった。ああいう格好してください、こういう格好してください、と言われながら。成田屋さんに挨拶に行ったのはその後。
・毛抜は役が多いのに、今月はいろんなところで歌舞伎をやっていて、残っている役者が少ない。お弟子さん達でやるしかないかと思った。そんな話を父にしたら「僕出てもいいよ?」と言った。自分が7月の松竹座に出ないことも考えにくかったのに、父の方はもっと。しかし、出ることになった。
・河村「台詞まわしが團十郎さんによく似てる」愛之助「普通に台詞言ってると歌舞伎十八番にならない」
河村「団十郎さんに一番強く言われたことは?」 愛之助「(声色風に)ひょうきんにやってください」 弾正の登場シーンも、愉快な感じで、常にニコニコしているように。 秀太郎に言い寄るところは「できるだけいやらしくやってください」と。
・河村「本当の秀太郎さんのやる腰元に言い寄るシーンは、やりにくいでしょ?」愛之助「いえ、そんなことないですよ。びびびびびー、のところで、客席の学生さんが、可愛いと言ってるのが聞こえた。芸の力」
・河村「最近、国立に出ること、東京に出ることが多くなったが、上方に住居をおきたいか」愛之助「上方に居をかまえて一生住みたい。演目については、上方も江戸も両方できればと思っている」河村「愛之助さんの勧進帳なんか観たいですね」愛之助「ありがとうございます」
・一般家庭から歌舞伎界に入ったことについて。子供のときは単純に衣装、装置にひかれた。顔を真っ白に塗るのが面白かった。養子になったのは、お嫁に行くような感じ? 実の父は、スタートラインに立たせてもらえるならそうしなさいといった。あっさり認めてくれた。今は、父の判断は凄かったと思う。
・上方歌舞伎の現状について。昔、十三世仁左衛門は財産をなげうつような覚悟で興行をしたが、今の盛り上がりの元になったのは澤村藤十郎さんが上方歌舞伎を愛する会を立ち上げたこと。今の勘三郎さんが、「今宵は勘九郎」というテレビなどで、盛り上げてくれたりして、今の松竹座の7月公演に至る。はっきり言って東京の人の力。
・歌舞伎以外の仕事もやって名前をしってもらって、歌舞伎を見に来てほしいと思う。テレビで見た人が歌舞伎もやってるみたいだから観に行こう、みたいなきっかけ作りが大事だと思う。自分も、何もやってなかったら歌舞伎は一生見なかったろうと思う。
・10月にエグザイルと共演する。エグザイルはファン層がひろい。リーダーのひろさんは頭が良い。芝居みても面白かったので声をかけさせていただいた。松竹は、こういう仕事には大反対。
・結婚について。余裕がない。生きていくので精一杯。しかし、最近ファンクラブで聞くと、結婚してほしいという人が圧倒的に多い。年のせいか?
・質問のあった永楽館について。「良い質問をありがとうございます」。出石に行くと皿蕎麦が食べられ、こうのとりがみられ、永楽館で歌舞伎も観られる、といわれるようになりたい。初役で、そこでしか観られないものをやりたい。
システィナ歌舞伎にも出る。主催者からは、5年連続で出て欲しいといわれているので身体が続く限りでる。
赤坂ACTシアター 坂東玉三郎 コンサート 世界の旅 ― 2012/07/07 12:37
2012年7月6日 赤坂ACTシアター 午後3時開演 1階W列7番
今年はプログラムがあって、中に歌詞が書いてある。
赤坂ACTシアターの1階に初めて座ったが、後ろの方は傾斜があり、席も千鳥になっているので、前の人の頭に邪魔されることなく舞台が見える。
第1部、バイオリンが「アラウンドザワールド」を演奏し始めると、下手から玉三郎が登場して歌いだした。今年はスリーピースではなく、ゆったりした黒っぽいスーツ。いつもの玉三郎ぽい。去年はバックに女性がいたが、今年は男性のみ。 歌い終わって、「緊張しております」。
自分が歌うとしたらシャンソンのようなものだろうと思われているので、去年はあえてアメリカの歌中心にした、と言った。
ルート66
テレビで「ルート66」をやっていたのは覚えているが、男性向きの番組だったようで、見た記憶がない。
ナットキングコールの歌唱が有名らしいが、ずいぶん前にラジオで、テレビで主役をやったジョージ・マハリスが歌うのを聞いた。向こうの俳優は歌もうまいんだと感心したが、Wikipediaを読むとジョージ・マハリスは歌手としても活動していた人だった。youtubeで探したら彼のルート66があった。今は便利。
http://www.youtube.com/watch?v=inQULg13AFE
踊りあかそう
ミュージカル「マイフェアレディ」から。玉三郎が「あなたの手に抱かれながら夢を見たい」と歌うのは素敵だった。
君住む街角
これも「マイ・フェア・レディ」の中の歌で、映画では、後年テレビでシャーロック・ホームズをやったジェレミー・ブレットが歌っていた。
Someone to watch over me
これは去年も歌った。「王様と私」の舞台で最初にアンナ役をやったGertrude Lawrence の話をミュージカルにしたのが「スター!」。その中でジュリー・アンドリュースが歌う曲で、玉三郎は二十歳前後の頃に聞いたものだそうだ。今年も歌うということは、何か当時の思い出があるのだろうか。
ス・ワンダフル
ガーシュイン作曲のスタンダード。最近はトミー・チューンがマイワンアンドオンリーの中で歌ったそうだ。初演はツイッギーといっしょに。
懐かしい、トミー・チューン。玉三郎のことを「心の友」と言っていた。あれは「徹子の部屋」だったか?
追憶
これは、ディレクターが、歌ってはどうかと言ったものだそうだ。
「追憶」は映画自体はそんなに好きではないのだが、The Way We Were の英語の歌詞とバーブラ・ストレイサンドの歌唱に思い入れがあって、玉三郎の歌でも、それは覆らなかった。
恋のバカンス
先日、伊藤エミが亡くなったが、新幹線ができて間もない頃、玉三郎が新幹線に乗ったらザ・ピーナツが乗っていて、「あー、新幹線に乗るんだな」と思ったそうだ。
玉三郎が「ためーいきのーでるよーな あなーたのくーちづけーに」と岩谷時子の歌詞のままで歌う「恋のバカンス」は最高。声は出さないがいっしょに口を動かした。
あいつが死んだ晩
これはプログラムには載ってない。アリスの「君の瞳は10000ボルト」の中に入っている曲だそうだ。玉三郎が、「知っている人は手を叩いてください」というと、叩く人がいて、「ああ良かった」。同世代の制作の仲間の死を悼む玉三郎。最後まで聴いて、ああ、これはうまい、と思った。本日一番の歌唱。
つめたい部屋の世界地図
陽水は好きだが、この歌は知らなかった。
夏の終わりのハーモニー
最後に「ハーモニー」と歌うときはギターの人と声を合わせていた。
日本の歌が4曲続いて、第1部は終了。
第2部は、白に銀の入ったスーツ。
最初は「セシボン」。越路吹雪は、行った日に越路が背中を傷めて休演だった「メイム」以外は見逃したことがないほどファンだったという話をして、この後の二曲はシャンソンの「明日は月の上で」と「水に流して」。
フランスが終わり、次はイタリア。歌の前に玉三郎はイタリアという国をほめたたえた。
アルディラ
「恋愛専科」というアメリカ映画に使われている。イタリアの美しい風景、この歌、当時輝くように美しかった金髪のトロイ・ドナヒュー。
ほほにかかる涙
私が小学校の頃、カンツォーネがはやった。日本の歌手が日本語の歌詞で歌っていた。「あなたを思って このほほの涙」というのとは、きょうは違う歌詞。
そして、旅の舞台はブラジルへ。
Wave
去年は、この歌を知らなかった。youtubeで調べて改めて聴いたが、素敵な曲。でも歌うのは難しそう。
いそしぎ
ボサノバで歌った人がいるからブラジルのところにあるのだろうが、私がアンディ・ウィリアムズ・ショーで聴いたようなのは、ボサノバではなかった。エリザベス・テーラーとリチャード・バートン共演の映画「いそしぎ」のテーマ曲。
ワンノートサンバ~イパネマの娘
Waveと同じアントニオ・カルロス・ジョビンの作曲。「イパネマの娘」の方はアンディ・ウィリアムズ・ショーで聴いた覚えがある。
次は最後の歌で、「ムーンライトセレナード」。去年のアンコール曲の1つだった。
玉三郎は、歌い終わって一度引っ込んだが、客席の拍手にこたえて出てきて、「用意しております」とニッコリした。
アンコールの最初は、ルイ・アームストロングの歌で有名な「What a wondeful world」。
アンコールの最後は 「LOVE」 。
「Lと書いたらLook at me 」と歌ってほしかったが、別の歌詞だった。
去年のコンサートは曲目が自分の中学高校時代にはやっていたものが多くて気持ちが燃え上がったが、今年は選曲がスタンダードすぎて玉三郎と同世代であることをあまり感じなかった。だから去年より感動が薄い。
きょうはコンサートの初日で玉三郎も本当に緊張していたのだろう。歌の出だしのタイミングを間違えたり、「上着を脱がしていただきます」と下手に歩き出したところで何かに躓いたのかつんのめりそうになったり。そういうときに客席に向ける苦笑した顔がチャーミング。何曲目かのとき、玉三郎の左手が動くのを見て、あの美しい手の動きもコンサートの魅力の1つなのだと思った。その頃から玉三郎の緊張もとけてきたのかもしれない。
第1部の最後の日本の歌は、自然に気持ちが盛り上がった。
玉三郎が歌いたい歌を何でも良いから入れたDVDを出してくれないかと思った。自分の葬式のときに流してほしいから。
今年はプログラムがあって、中に歌詞が書いてある。
赤坂ACTシアターの1階に初めて座ったが、後ろの方は傾斜があり、席も千鳥になっているので、前の人の頭に邪魔されることなく舞台が見える。
第1部、バイオリンが「アラウンドザワールド」を演奏し始めると、下手から玉三郎が登場して歌いだした。今年はスリーピースではなく、ゆったりした黒っぽいスーツ。いつもの玉三郎ぽい。去年はバックに女性がいたが、今年は男性のみ。 歌い終わって、「緊張しております」。
自分が歌うとしたらシャンソンのようなものだろうと思われているので、去年はあえてアメリカの歌中心にした、と言った。
ルート66
テレビで「ルート66」をやっていたのは覚えているが、男性向きの番組だったようで、見た記憶がない。
ナットキングコールの歌唱が有名らしいが、ずいぶん前にラジオで、テレビで主役をやったジョージ・マハリスが歌うのを聞いた。向こうの俳優は歌もうまいんだと感心したが、Wikipediaを読むとジョージ・マハリスは歌手としても活動していた人だった。youtubeで探したら彼のルート66があった。今は便利。
http://www.youtube.com/watch?v=inQULg13AFE
踊りあかそう
ミュージカル「マイフェアレディ」から。玉三郎が「あなたの手に抱かれながら夢を見たい」と歌うのは素敵だった。
君住む街角
これも「マイ・フェア・レディ」の中の歌で、映画では、後年テレビでシャーロック・ホームズをやったジェレミー・ブレットが歌っていた。
Someone to watch over me
これは去年も歌った。「王様と私」の舞台で最初にアンナ役をやったGertrude Lawrence の話をミュージカルにしたのが「スター!」。その中でジュリー・アンドリュースが歌う曲で、玉三郎は二十歳前後の頃に聞いたものだそうだ。今年も歌うということは、何か当時の思い出があるのだろうか。
ス・ワンダフル
ガーシュイン作曲のスタンダード。最近はトミー・チューンがマイワンアンドオンリーの中で歌ったそうだ。初演はツイッギーといっしょに。
懐かしい、トミー・チューン。玉三郎のことを「心の友」と言っていた。あれは「徹子の部屋」だったか?
追憶
これは、ディレクターが、歌ってはどうかと言ったものだそうだ。
「追憶」は映画自体はそんなに好きではないのだが、The Way We Were の英語の歌詞とバーブラ・ストレイサンドの歌唱に思い入れがあって、玉三郎の歌でも、それは覆らなかった。
恋のバカンス
先日、伊藤エミが亡くなったが、新幹線ができて間もない頃、玉三郎が新幹線に乗ったらザ・ピーナツが乗っていて、「あー、新幹線に乗るんだな」と思ったそうだ。
玉三郎が「ためーいきのーでるよーな あなーたのくーちづけーに」と岩谷時子の歌詞のままで歌う「恋のバカンス」は最高。声は出さないがいっしょに口を動かした。
あいつが死んだ晩
これはプログラムには載ってない。アリスの「君の瞳は10000ボルト」の中に入っている曲だそうだ。玉三郎が、「知っている人は手を叩いてください」というと、叩く人がいて、「ああ良かった」。同世代の制作の仲間の死を悼む玉三郎。最後まで聴いて、ああ、これはうまい、と思った。本日一番の歌唱。
つめたい部屋の世界地図
陽水は好きだが、この歌は知らなかった。
夏の終わりのハーモニー
最後に「ハーモニー」と歌うときはギターの人と声を合わせていた。
日本の歌が4曲続いて、第1部は終了。
第2部は、白に銀の入ったスーツ。
最初は「セシボン」。越路吹雪は、行った日に越路が背中を傷めて休演だった「メイム」以外は見逃したことがないほどファンだったという話をして、この後の二曲はシャンソンの「明日は月の上で」と「水に流して」。
フランスが終わり、次はイタリア。歌の前に玉三郎はイタリアという国をほめたたえた。
アルディラ
「恋愛専科」というアメリカ映画に使われている。イタリアの美しい風景、この歌、当時輝くように美しかった金髪のトロイ・ドナヒュー。
ほほにかかる涙
私が小学校の頃、カンツォーネがはやった。日本の歌手が日本語の歌詞で歌っていた。「あなたを思って このほほの涙」というのとは、きょうは違う歌詞。
そして、旅の舞台はブラジルへ。
Wave
去年は、この歌を知らなかった。youtubeで調べて改めて聴いたが、素敵な曲。でも歌うのは難しそう。
いそしぎ
ボサノバで歌った人がいるからブラジルのところにあるのだろうが、私がアンディ・ウィリアムズ・ショーで聴いたようなのは、ボサノバではなかった。エリザベス・テーラーとリチャード・バートン共演の映画「いそしぎ」のテーマ曲。
ワンノートサンバ~イパネマの娘
Waveと同じアントニオ・カルロス・ジョビンの作曲。「イパネマの娘」の方はアンディ・ウィリアムズ・ショーで聴いた覚えがある。
次は最後の歌で、「ムーンライトセレナード」。去年のアンコール曲の1つだった。
玉三郎は、歌い終わって一度引っ込んだが、客席の拍手にこたえて出てきて、「用意しております」とニッコリした。
アンコールの最初は、ルイ・アームストロングの歌で有名な「What a wondeful world」。
アンコールの最後は 「LOVE」 。
「Lと書いたらLook at me 」と歌ってほしかったが、別の歌詞だった。
去年のコンサートは曲目が自分の中学高校時代にはやっていたものが多くて気持ちが燃え上がったが、今年は選曲がスタンダードすぎて玉三郎と同世代であることをあまり感じなかった。だから去年より感動が薄い。
きょうはコンサートの初日で玉三郎も本当に緊張していたのだろう。歌の出だしのタイミングを間違えたり、「上着を脱がしていただきます」と下手に歩き出したところで何かに躓いたのかつんのめりそうになったり。そういうときに客席に向ける苦笑した顔がチャーミング。何曲目かのとき、玉三郎の左手が動くのを見て、あの美しい手の動きもコンサートの魅力の1つなのだと思った。その頃から玉三郎の緊張もとけてきたのかもしれない。
第1部の最後の日本の歌は、自然に気持ちが盛り上がった。
玉三郎が歌いたい歌を何でも良いから入れたDVDを出してくれないかと思った。自分の葬式のときに流してほしいから。
四代目市川猿之助襲名 七月大歌舞伎 夜の部 ― 2012/07/18 12:33
2012,年7月14日 新橋演舞場 午後4時45分開演 1階6列31番
「将軍江戸を去る」
彰義隊の隊士たちが集まってしゃべっているところに来る山岡鉄太郎。山岡役の中車は声が嗄れている。しかし台詞ははっきりと聞き取れた。舞台後方から現れる高橋伊勢守役の海老蔵は、顔も声も別世界の人のように美しい。
書院の場に出てくる慶喜役の團十郎は、頭脳明晰な人に見えない。中車との共演シーンは良かった。中車の台詞まわしは時おり、歌舞伎というには中途半端で普通の劇としては不自然と感じることもあった。 しかし、その必死さが山岡の必死さと重なって胸に迫った。
「上様、おなごりおしゅうございます」と人々が言う千住大橋の場は好きだ。
「口上」
口上の少し前に、福山雅治の祝い幕が引かれる。こんな近くで見たのは初めてだ。3階から観たときに感じたが、幕が動くにつれて顔の表情が微妙に変化して面白い。
今月の口上は5人。真ん中が新猿之助。下手側に中車親子、上手に團十郎親子。
團十郎が口火を切り、かつて猿翁と共演したこと、新猿之助とパリオペラ座の公演にいっしょに行って、自分はフランス語はわけもわからずカタカナを覚えて口上を述べただけだが、猿之助はオペラ座の怪人の話もしていたという話、中車との共演は初めて、團子は自分の娘のぼたんに5歳のときから日本舞踊をならっている、おじいさんより立派な役者になりたいと大それたことを言ったようだが・・・という話をした。
海老蔵は少しくだけた内容。猿翁は、憧れ。猿之助とはパリだけでなく、ロンドン、アムステルダムでもいっしょに公演した。累などをやって大変勉強になった。(この2人の累は好きだ。) ライオンキングに誘われ、断る理由もなかったのでいっしょに行った。猿之助はもう二十数回観てるはずなのに、初めて観たように喜んでいた。「芸術は爆発だ」という本を3冊もらった。中車とは「出口のない海」で共演したときから歌舞伎俳優になりたいという話をきいていた。
おもだか屋の方は、先月の口上と大体同じ。團子の口上は「おじいさまのように立派な役者に~」にトーンダウンしたが、最後の「よろしくお願いもうしあげます」のところに抑揚がつき、それが一部裏声になったりするので笑いを誘っていた。
「黒塚」
黒塚は暗くて地味な演目だと思い込んでいて、先代の猿之助でも観たことはなく、今回が初見。意外に派手な演目で面白かったので、先代でも観ておけばよかったと思った。
祐慶の役の團十郎は、大和坊(門之助)と讃岐坊(右近)を従えていると勧進帳の弁慶を思い出す。位の高さが自然に感じられて良かった。
猿之助の岩手の踊りは良かった。手の綺麗さを見て、そういえば最近、猿之助の女形を観ていなかったなと思った。小さなことだが、杖の投げ捨て方がかっこいい。腰の落とし方とか技巧的にも高度。
鬼女になってからは派手な動き。花道七三で、平らな場所ではあるが義賢ばりにまっすぐバッタリ倒れ。一瞬ライトが落ちる。直後に立ち上がり向き直ってまた戦う。舞台の方へ後ろ向きにジャンプして行くのが凄い。こんな動きは初めて観た。
猿弥の強力も活躍で、海老反りまで見せてくれた。最後に花道を逃げ去っていくのも良かった。
「楼門五三桐」
弥十郎を先頭に門之助と門弟たちが家臣の役で花道に登場。久吉(猿翁)が8年ぶりに出てくる、ような台詞があって客席が沸く。
南禅寺山門の上の、五右衛門役の海老蔵は、派手さがこの演目にぴったり。
やがて、久吉(猿翁)がせり上がって来ると、万来の拍手。歌舞伎を見始めた頃はずいぶん楽しませてもらったのに、一通り観た後は熱が冷め、その間に猿翁が倒れてしまったので、最後に見た演目が何だったか確かな記憶もないまま別れるのが心残りだった。今回、以前のような元気な姿ではなくても、舞台上の姿を見られたのが本当に嬉しい。
家臣たちのほか、利家役の段四郎と、侍女役の笑也、笑三郎、春猿が出てきた。
猿翁は「石川や浜の真砂は~」の歌は所々発音がおかしいが、最後の「さらば 五右衛門」はおかしくない。発音のしやすさが音によって違うのだろうか。
猿翁を後ろで支えていた黒衣が中車。カーテンコールのときに、顔の前の布を持ち上げて、顔を出して挨拶した。最後には頭巾を全部とって頭を下げた。
「将軍江戸を去る」
彰義隊の隊士たちが集まってしゃべっているところに来る山岡鉄太郎。山岡役の中車は声が嗄れている。しかし台詞ははっきりと聞き取れた。舞台後方から現れる高橋伊勢守役の海老蔵は、顔も声も別世界の人のように美しい。
書院の場に出てくる慶喜役の團十郎は、頭脳明晰な人に見えない。中車との共演シーンは良かった。中車の台詞まわしは時おり、歌舞伎というには中途半端で普通の劇としては不自然と感じることもあった。 しかし、その必死さが山岡の必死さと重なって胸に迫った。
「上様、おなごりおしゅうございます」と人々が言う千住大橋の場は好きだ。
「口上」
口上の少し前に、福山雅治の祝い幕が引かれる。こんな近くで見たのは初めてだ。3階から観たときに感じたが、幕が動くにつれて顔の表情が微妙に変化して面白い。
今月の口上は5人。真ん中が新猿之助。下手側に中車親子、上手に團十郎親子。
團十郎が口火を切り、かつて猿翁と共演したこと、新猿之助とパリオペラ座の公演にいっしょに行って、自分はフランス語はわけもわからずカタカナを覚えて口上を述べただけだが、猿之助はオペラ座の怪人の話もしていたという話、中車との共演は初めて、團子は自分の娘のぼたんに5歳のときから日本舞踊をならっている、おじいさんより立派な役者になりたいと大それたことを言ったようだが・・・という話をした。
海老蔵は少しくだけた内容。猿翁は、憧れ。猿之助とはパリだけでなく、ロンドン、アムステルダムでもいっしょに公演した。累などをやって大変勉強になった。(この2人の累は好きだ。) ライオンキングに誘われ、断る理由もなかったのでいっしょに行った。猿之助はもう二十数回観てるはずなのに、初めて観たように喜んでいた。「芸術は爆発だ」という本を3冊もらった。中車とは「出口のない海」で共演したときから歌舞伎俳優になりたいという話をきいていた。
おもだか屋の方は、先月の口上と大体同じ。團子の口上は「おじいさまのように立派な役者に~」にトーンダウンしたが、最後の「よろしくお願いもうしあげます」のところに抑揚がつき、それが一部裏声になったりするので笑いを誘っていた。
「黒塚」
黒塚は暗くて地味な演目だと思い込んでいて、先代の猿之助でも観たことはなく、今回が初見。意外に派手な演目で面白かったので、先代でも観ておけばよかったと思った。
祐慶の役の團十郎は、大和坊(門之助)と讃岐坊(右近)を従えていると勧進帳の弁慶を思い出す。位の高さが自然に感じられて良かった。
猿之助の岩手の踊りは良かった。手の綺麗さを見て、そういえば最近、猿之助の女形を観ていなかったなと思った。小さなことだが、杖の投げ捨て方がかっこいい。腰の落とし方とか技巧的にも高度。
鬼女になってからは派手な動き。花道七三で、平らな場所ではあるが義賢ばりにまっすぐバッタリ倒れ。一瞬ライトが落ちる。直後に立ち上がり向き直ってまた戦う。舞台の方へ後ろ向きにジャンプして行くのが凄い。こんな動きは初めて観た。
猿弥の強力も活躍で、海老反りまで見せてくれた。最後に花道を逃げ去っていくのも良かった。
「楼門五三桐」
弥十郎を先頭に門之助と門弟たちが家臣の役で花道に登場。久吉(猿翁)が8年ぶりに出てくる、ような台詞があって客席が沸く。
南禅寺山門の上の、五右衛門役の海老蔵は、派手さがこの演目にぴったり。
やがて、久吉(猿翁)がせり上がって来ると、万来の拍手。歌舞伎を見始めた頃はずいぶん楽しませてもらったのに、一通り観た後は熱が冷め、その間に猿翁が倒れてしまったので、最後に見た演目が何だったか確かな記憶もないまま別れるのが心残りだった。今回、以前のような元気な姿ではなくても、舞台上の姿を見られたのが本当に嬉しい。
家臣たちのほか、利家役の段四郎と、侍女役の笑也、笑三郎、春猿が出てきた。
猿翁は「石川や浜の真砂は~」の歌は所々発音がおかしいが、最後の「さらば 五右衛門」はおかしくない。発音のしやすさが音によって違うのだろうか。
猿翁を後ろで支えていた黒衣が中車。カーテンコールのときに、顔の前の布を持ち上げて、顔を出して挨拶した。最後には頭巾を全部とって頭を下げた。
アクロス福岡 坂東玉三郎 コンサート 世界の旅 ― 2012/07/19 01:19
2012年7月15日 アクロス福岡 午後5時半開演
第1部
アラウンドザワールド
途中で挨拶した後の「あのアイルランドの町 あのニューヨーク あのパリ そしてロンドンタウン」という歌詞が好きだ。
ルート66
これはノリが難しそうなので、玉三郎を見ているときにはついぞないことだが、「ガンバレ」と心の中で叫んだ。しかし、赤坂のときより明らかに上達して、案外良かった。
踊り明かそう、君住む街角
この2曲のバースの部分は玉三郎の訳詞だそうだ。「踊り明かそう」の「夢がひろがるのよ」は曲に合っていて女の子らしくて良いフレーズだ。
Someone to watch over me
玉三郎によると、この歌は、King and I のアンナの役をやったイギリス人の女優ガートルード・ローレンスが主役になるまでを描いた「ザ・スター」というミュージカルでジュリー・アンドリュースが歌っていたものだそうだ。 ガートルード・ローレンスはKing and I をミュージカルにしてアメリカで上演してもらいたかったが興行主は反対。アメリカではない、主人公が死ぬ、ラブストーリーではない、という理由。でもハマースタインの奥さんと友達だったので、頼んで作ってもらった。そして、大ヒット。
ス・ワンダフル
ガーシュインの作曲。トミー・チューンが出たミュージカルMy One and Onlyの中でも歌われた。玉三郎はニューヨークで観たそうだ。
追憶
私の個人的好みでは、この歌はどうしてもMemories~ではじまってほしい。
恋のバカンス
この曲は実はアンコールで歌おうと思ったのだそうだ。
伊藤エミが先月の16日に亡くなった。新幹線ができたばかりの頃、新幹線に乗っていて、名古屋で降りた。名古屋に住んでるんだな、と思った。ザピーナツは昔、「ザヒットパレード」で魅惑の宵とかスターダストを歌っていた思い出がある。きょうは、悼むというより、昔の楽しい思い出の歌として歌いたい。
あいつが死んだ晩
これはアリスの「君の瞳は10000ボルト」というアルバムに入っていて、玉三郎はこの中の「家を出てゆきたい」と、この歌が好きなのだという。
つめたい部屋の世界地図
はるかな、はるかな、見知らぬ国へーーーと歌う玉三郎が素敵。
私は桜姫を観て歌舞伎にはまった日に、玉三郎にもはまったんだ、と今更ながらしみじみと思う。
夏の終わりのハーモニー
これは玉三郎のテレビでの歌手デビューとなった曲。
第2部
セ・シ・ボン、明日は月の上で、水に流して
この3曲は岩谷時子の訳詞だそうだ。岩谷時子は玉三郎に「あなたは豪華な衣装着るんでしょう? 高いものを身につけなきゃダメ」と言って、毛皮を2着も3着も買ってくれた。それが癖になって、「今年くらしていけるかしら」みたいな値段のを買ったことがある。(冗談ですけど、と付け加えてはいたが・・・・)
アル・ディラ、ほほにかかる涙
最近はあまり話題をきかないが、昔はサン・レモ音楽祭というのがあった、という話をした。この2曲は玉三郎の訳詞だそうだ。
Wave、いそしぎ
去年も聞いたが、若者たちが毎晩安アパートに集まって歌の練習をしていたら、周りの住人から文句を言われたので、ささやくようなボサノバの歌唱法ができた、というのは本当の話だそうだ。
いそしぎは元々はボサノバの曲ではないが、今回はボサノバとして歌う。
ワンノートサンバ~イパネマの娘
この曲にのせて伴奏のメンバーを紹介。バイオリンのお兄さんは遠目には松山ケンイチ風。玉三郎はこのお兄さんを愛しているから「平清盛」を擁護しているのかな、と勝手な妄想をした。
最後の曲「ムーンライト・セレナーデ」、そしてアンコールの2曲「What a Wonderful World」と「LOVE」。
終わると、客席から歓声が上がり、スタンディングオベーションをしている人も多かった。
第1部で気持ちが盛り上がったわりには第2部で盛り上がるところがなかったのが残念。
第1部
アラウンドザワールド
途中で挨拶した後の「あのアイルランドの町 あのニューヨーク あのパリ そしてロンドンタウン」という歌詞が好きだ。
ルート66
これはノリが難しそうなので、玉三郎を見ているときにはついぞないことだが、「ガンバレ」と心の中で叫んだ。しかし、赤坂のときより明らかに上達して、案外良かった。
踊り明かそう、君住む街角
この2曲のバースの部分は玉三郎の訳詞だそうだ。「踊り明かそう」の「夢がひろがるのよ」は曲に合っていて女の子らしくて良いフレーズだ。
Someone to watch over me
玉三郎によると、この歌は、King and I のアンナの役をやったイギリス人の女優ガートルード・ローレンスが主役になるまでを描いた「ザ・スター」というミュージカルでジュリー・アンドリュースが歌っていたものだそうだ。 ガートルード・ローレンスはKing and I をミュージカルにしてアメリカで上演してもらいたかったが興行主は反対。アメリカではない、主人公が死ぬ、ラブストーリーではない、という理由。でもハマースタインの奥さんと友達だったので、頼んで作ってもらった。そして、大ヒット。
ス・ワンダフル
ガーシュインの作曲。トミー・チューンが出たミュージカルMy One and Onlyの中でも歌われた。玉三郎はニューヨークで観たそうだ。
追憶
私の個人的好みでは、この歌はどうしてもMemories~ではじまってほしい。
恋のバカンス
この曲は実はアンコールで歌おうと思ったのだそうだ。
伊藤エミが先月の16日に亡くなった。新幹線ができたばかりの頃、新幹線に乗っていて、名古屋で降りた。名古屋に住んでるんだな、と思った。ザピーナツは昔、「ザヒットパレード」で魅惑の宵とかスターダストを歌っていた思い出がある。きょうは、悼むというより、昔の楽しい思い出の歌として歌いたい。
あいつが死んだ晩
これはアリスの「君の瞳は10000ボルト」というアルバムに入っていて、玉三郎はこの中の「家を出てゆきたい」と、この歌が好きなのだという。
つめたい部屋の世界地図
はるかな、はるかな、見知らぬ国へーーーと歌う玉三郎が素敵。
私は桜姫を観て歌舞伎にはまった日に、玉三郎にもはまったんだ、と今更ながらしみじみと思う。
夏の終わりのハーモニー
これは玉三郎のテレビでの歌手デビューとなった曲。
第2部
セ・シ・ボン、明日は月の上で、水に流して
この3曲は岩谷時子の訳詞だそうだ。岩谷時子は玉三郎に「あなたは豪華な衣装着るんでしょう? 高いものを身につけなきゃダメ」と言って、毛皮を2着も3着も買ってくれた。それが癖になって、「今年くらしていけるかしら」みたいな値段のを買ったことがある。(冗談ですけど、と付け加えてはいたが・・・・)
アル・ディラ、ほほにかかる涙
最近はあまり話題をきかないが、昔はサン・レモ音楽祭というのがあった、という話をした。この2曲は玉三郎の訳詞だそうだ。
Wave、いそしぎ
去年も聞いたが、若者たちが毎晩安アパートに集まって歌の練習をしていたら、周りの住人から文句を言われたので、ささやくようなボサノバの歌唱法ができた、というのは本当の話だそうだ。
いそしぎは元々はボサノバの曲ではないが、今回はボサノバとして歌う。
ワンノートサンバ~イパネマの娘
この曲にのせて伴奏のメンバーを紹介。バイオリンのお兄さんは遠目には松山ケンイチ風。玉三郎はこのお兄さんを愛しているから「平清盛」を擁護しているのかな、と勝手な妄想をした。
最後の曲「ムーンライト・セレナーデ」、そしてアンコールの2曲「What a Wonderful World」と「LOVE」。
終わると、客席から歓声が上がり、スタンディングオベーションをしている人も多かった。
第1部で気持ちが盛り上がったわりには第2部で盛り上がるところがなかったのが残念。
宝山ホール 坂東玉三郎 コンサート 世界の旅 ― 2012/07/19 15:26
2012年7月16日 宝山ホール 午後5時半開演 2列17番
第1部
アラウンドザワールド
バイオリンの演奏にのって出てきて舞台中央まで歩き一礼して、置いてあったマイクを手にとって歌いだした。
ルート66
これは福岡のときの方が出来が良かった。
お兄さんがナットキングコールが好きで、玉三郎は8歳とかその頃、当時はカセット(?)でいっしょに聞いていた。
踊り明かそう、君住む街角
最後の「夜の明けるまで」の「まで」は高音だが、玉三郎はがんばって出す。
玉三郎はムダにコンサートの回を重ねているのではなく、自分の声が魅力的に聞こえる部分を把握したり、演出に工夫をしたりしている。流石だと思う。
Someone to watch over me
良い訳詞だと思う。何度も聞いているうちに、「広い世界のどこか 誰かに私を」と鼻歌を歌いたくなってくる。
ス・ワンダフル
My One and Only の中ではトミー・チューンと、私達の世代の小枝ちゃん、ツイッギーが歌って踊る。水の上のタップダンス、という話。
玉三郎はこういう歌を歌うとき、越路吹雪のステージを無意識的にでも参考にしているのだろうか。私は越路吹雪のステージを観たことないので、テレビで得たイメージからの憶測だが。
追憶
演出家が、バーブラ・ストライザンドの歌を歌ってみないかと言ったそうだ。訳詞は玉三郎。一生懸命歌っていた。
恋のバカンス
アンコールで、自分が歌いそうもないものを、ということでこの曲を考えていたら6月16日に伊藤エミさんが亡くなったので、正式な曲目に入れた。岩谷時子作詞、宮川泰作曲。岩谷さんは「(周りから)あんた達は舶来の歌作ってるね、と言われてるの」と言っていたそうだ。
きょうは、ザピーナツが新幹線に乗っていたエピソードはなかった。
あいつが死んだ晩、つめたい部屋の世界地図、夏の終わりのハーモニー
アリスの歌で「君の瞳は百万ボルト(ママ)」というのがあります、それは歌いませんが、その中の「みんなに不足はないけれど~おれは家を出たいんだ」という歌と、「あいつが死んだ晩」が好きだった、と玉三郎。
「世界の旅」というタイトルではあるが、この日本の歌のときが、玉三郎の歌唱が一番冴えて客も聞き惚れる。日本語の素晴らしい詞を、玉三郎の表現力で聞かせる。特に「あいつが死んだ晩」では、歌手玉三郎の素晴らしさを実感する。「ともに地獄の鬼になり 稲妻走る雨の中」の説得力。
第2部
きょうは前から2列目なので、靴もよく見えた。第2部は白いスーツに合わせた白い靴。底が黒くて前後が巻き上がってるみたいなのが面白い。
セ・シ・ボン、明日月の上で、水に流して
いずれも岩谷時子の訳詞。35年くらい前に亡くなった越路吹雪が好きだった、という話。
岩谷時子が好きで親交もあるのだから「玉三郎、岩谷時子を歌う」というコンサートもやってほしいものだ。
アル・ディラ、ほほにかかる涙
悪くはないが印象が薄い。
Wave
きょうは頑張ったと思う。
いそしぎ
これは良かった。ボサノバとして歌っているとは言っても、メロディラインが緩やかで、玉三郎が感情を乗せやすいのだろう。第2部の方で初めて盛り上がる曲を見つけられたと思った。
玉三郎はアンディ・ウィリアムズ、スティーブ・ローレンス、トニー・ベネットの名前を上げた。私はスティーブ・ローレンスは知らなかった。
ワンノートサンバ~イパネマの娘
ワンノートサンバとイパネマの娘は、コンサートやリサイタル用に訳詞して歌うのはかまわないが、CD等に録音するためには訳詞が許されていないそうだ。作った人の思い入れがあるのだろうが、自分としてはあくまでも母国語で歌いたい、という玉三郎。
伴奏のメンバーを紹介するとき、なんとなく動いているのではなく、メンバー毎に玉三郎がはっきりと違う動きをするようになった。
イパネマの娘は、歌い方と動きに工夫のあとがみられる。表現の方向性が出てきた。
ムーンライト・セレナーデ
伴奏の平原さんが時おり腕を動かしていたせいもあるのか、客席で腕を左右に動かしている人が多かった。このホールではミラーボールがないからその代わりかと思ったが、ミラーボールはLOVEのときには出てきた。
アンコールになり、いつものように震災のことにも触れたメッセージの後、What a Wonderful World。
最後の曲LOVEが始まると立ち上がる人がいて、最前列の男性で立ち上がれというように手を動かしていた人がいたこともあって、全員スタンディングで手拍子。
きょうは自分の中で第2部がきのうより面白かったし、玉三郎の顔が近くで見られて嬉しかった。
帰りのタクシーで運転手さんに、「福岡では歌が終わってから立ち上がったのに、きょうは歌の始めからみんな立ち上がった」と話したら、「鹿児島の人間は無愛想なのが多いのに意外です。福岡の方がノリが良さそうなのに」と言っていた。
第1部
アラウンドザワールド
バイオリンの演奏にのって出てきて舞台中央まで歩き一礼して、置いてあったマイクを手にとって歌いだした。
ルート66
これは福岡のときの方が出来が良かった。
お兄さんがナットキングコールが好きで、玉三郎は8歳とかその頃、当時はカセット(?)でいっしょに聞いていた。
踊り明かそう、君住む街角
最後の「夜の明けるまで」の「まで」は高音だが、玉三郎はがんばって出す。
玉三郎はムダにコンサートの回を重ねているのではなく、自分の声が魅力的に聞こえる部分を把握したり、演出に工夫をしたりしている。流石だと思う。
Someone to watch over me
良い訳詞だと思う。何度も聞いているうちに、「広い世界のどこか 誰かに私を」と鼻歌を歌いたくなってくる。
ス・ワンダフル
My One and Only の中ではトミー・チューンと、私達の世代の小枝ちゃん、ツイッギーが歌って踊る。水の上のタップダンス、という話。
玉三郎はこういう歌を歌うとき、越路吹雪のステージを無意識的にでも参考にしているのだろうか。私は越路吹雪のステージを観たことないので、テレビで得たイメージからの憶測だが。
追憶
演出家が、バーブラ・ストライザンドの歌を歌ってみないかと言ったそうだ。訳詞は玉三郎。一生懸命歌っていた。
恋のバカンス
アンコールで、自分が歌いそうもないものを、ということでこの曲を考えていたら6月16日に伊藤エミさんが亡くなったので、正式な曲目に入れた。岩谷時子作詞、宮川泰作曲。岩谷さんは「(周りから)あんた達は舶来の歌作ってるね、と言われてるの」と言っていたそうだ。
きょうは、ザピーナツが新幹線に乗っていたエピソードはなかった。
あいつが死んだ晩、つめたい部屋の世界地図、夏の終わりのハーモニー
アリスの歌で「君の瞳は百万ボルト(ママ)」というのがあります、それは歌いませんが、その中の「みんなに不足はないけれど~おれは家を出たいんだ」という歌と、「あいつが死んだ晩」が好きだった、と玉三郎。
「世界の旅」というタイトルではあるが、この日本の歌のときが、玉三郎の歌唱が一番冴えて客も聞き惚れる。日本語の素晴らしい詞を、玉三郎の表現力で聞かせる。特に「あいつが死んだ晩」では、歌手玉三郎の素晴らしさを実感する。「ともに地獄の鬼になり 稲妻走る雨の中」の説得力。
第2部
きょうは前から2列目なので、靴もよく見えた。第2部は白いスーツに合わせた白い靴。底が黒くて前後が巻き上がってるみたいなのが面白い。
セ・シ・ボン、明日月の上で、水に流して
いずれも岩谷時子の訳詞。35年くらい前に亡くなった越路吹雪が好きだった、という話。
岩谷時子が好きで親交もあるのだから「玉三郎、岩谷時子を歌う」というコンサートもやってほしいものだ。
アル・ディラ、ほほにかかる涙
悪くはないが印象が薄い。
Wave
きょうは頑張ったと思う。
いそしぎ
これは良かった。ボサノバとして歌っているとは言っても、メロディラインが緩やかで、玉三郎が感情を乗せやすいのだろう。第2部の方で初めて盛り上がる曲を見つけられたと思った。
玉三郎はアンディ・ウィリアムズ、スティーブ・ローレンス、トニー・ベネットの名前を上げた。私はスティーブ・ローレンスは知らなかった。
ワンノートサンバ~イパネマの娘
ワンノートサンバとイパネマの娘は、コンサートやリサイタル用に訳詞して歌うのはかまわないが、CD等に録音するためには訳詞が許されていないそうだ。作った人の思い入れがあるのだろうが、自分としてはあくまでも母国語で歌いたい、という玉三郎。
伴奏のメンバーを紹介するとき、なんとなく動いているのではなく、メンバー毎に玉三郎がはっきりと違う動きをするようになった。
イパネマの娘は、歌い方と動きに工夫のあとがみられる。表現の方向性が出てきた。
ムーンライト・セレナーデ
伴奏の平原さんが時おり腕を動かしていたせいもあるのか、客席で腕を左右に動かしている人が多かった。このホールではミラーボールがないからその代わりかと思ったが、ミラーボールはLOVEのときには出てきた。
アンコールになり、いつものように震災のことにも触れたメッセージの後、What a Wonderful World。
最後の曲LOVEが始まると立ち上がる人がいて、最前列の男性で立ち上がれというように手を動かしていた人がいたこともあって、全員スタンディングで手拍子。
きょうは自分の中で第2部がきのうより面白かったし、玉三郎の顔が近くで見られて嬉しかった。
帰りのタクシーで運転手さんに、「福岡では歌が終わってから立ち上がったのに、きょうは歌の始めからみんな立ち上がった」と話したら、「鹿児島の人間は無愛想なのが多いのに意外です。福岡の方がノリが良さそうなのに」と言っていた。
社会人のための歌舞伎鑑賞教室 毛抜 ― 2012/07/21 19:06
2012年7月20日 国立劇場大劇場 午後7時開演 2階9列
「歌舞伎のみかた」
基本は5日に観たのと同じ。
「練習しようか」とくろごちゃんを連れて引っ込む裃後見の愛一郎に、宗之助が「きょうはダンティーですね」と言った。
りき弥のお化粧、瞼にのばしたのはピンク砥の粉というものだそうな。
「毛抜」
「社会人のための歌舞伎鑑賞教室」だと上演台本ももらえる。台本だけ読んでもちっとも面白くない。役者が演じてはじめて面白い。
愛之助は相変わらず絶好調。弾正の役は本当に合ってる。役によっては男らしさをそこなう高めの声も、この役にはプラスに働いている。声の高さに幅があって、高さが変わるのは台詞にメリハリがつく。セクハラ場面などは特に、うわずった気持ちをよく表現できている。「面目しだいもござりませぬーー」と客席に向かって謝るのも、この声が効果的。
万兵衛に、地獄へ行って閻魔にこの手紙を見せろというあたりの畳み掛ける台詞が聞いていて気持ち良い。
最後の幕外の引っ込みでは大きな拍手をもらっていた。
金曜日の午後7時から9時の時間帯で、一演目だけ歌舞伎を観るのはいいもんだ。こういう公演が増えると勤め人は嬉しい。
「歌舞伎のみかた」
基本は5日に観たのと同じ。
「練習しようか」とくろごちゃんを連れて引っ込む裃後見の愛一郎に、宗之助が「きょうはダンティーですね」と言った。
りき弥のお化粧、瞼にのばしたのはピンク砥の粉というものだそうな。
「毛抜」
「社会人のための歌舞伎鑑賞教室」だと上演台本ももらえる。台本だけ読んでもちっとも面白くない。役者が演じてはじめて面白い。
愛之助は相変わらず絶好調。弾正の役は本当に合ってる。役によっては男らしさをそこなう高めの声も、この役にはプラスに働いている。声の高さに幅があって、高さが変わるのは台詞にメリハリがつく。セクハラ場面などは特に、うわずった気持ちをよく表現できている。「面目しだいもござりませぬーー」と客席に向かって謝るのも、この声が効果的。
万兵衛に、地獄へ行って閻魔にこの手紙を見せろというあたりの畳み掛ける台詞が聞いていて気持ち良い。
最後の幕外の引っ込みでは大きな拍手をもらっていた。
金曜日の午後7時から9時の時間帯で、一演目だけ歌舞伎を観るのはいいもんだ。こういう公演が増えると勤め人は嬉しい。
男の花道 ― 2012/07/22 19:37
2012年7月22日 ルテアトル銀座 正午開演 1階15列8番
「男の花道」は子供の頃テレビで観たがストーリーは全く覚えていない。
最初、これは関西弁の芝居かと思った。しかし、歌右衛門(福助)の目が直った後、江戸に出てくると、周りが江戸弁になる。だから「ウタエモン」のイントネーションも2通り使われている。
歌右衛門が水野家の曲水の宴で舞うことをかたくなに拒否するシーンを見て、この役は藤十郎にしかできないと思った。
梅雀が一番うまいことに誰も異論はなかろう。松也が観たくて買ったチケットで全く念頭になかったが、初めて生の舞台で観て、うまさに驚いた。
梅雀の役は、歌右衛門の目を治した医師の土生玄碩(はぶ げんせき)。水野家のお抱えとなり、殿様に呼ばれた座敷で、歌右衛門の目を治したのは自分だから、自分が頼めば歌右衛門は座敷に来て踊ってくれると言い切ってしまい、中村座で公演中の歌右衛門に文を書いて呼ぶ破目になってしまう。
歌右衛門が、自分はあくまで芝居小屋に足を運んでくれるお客様相手に芸を見せるので、お座敷に呼ばれて踊ることはたとえ公方様に呼ばれてもしない、というのは現実離れしてないか? 役者にとって劇場はショーウィンドーみたいなもので、本業は金持ちの客の酒席とか間男とかではないのか。それでまとまった金をもらわなければ、特に歌右衛門のように一門を率いていたら、やっていけないのではないか。
土生玄碩のように、金のことを言うと怒るが、自分が治した患者の主義を曲げるようなことを頼んでくる人間は面倒。歌右衛門としては大金を請求されたほうがありがたいはずだ。
歌右衛門が中村座で「伊達娘恋緋鹿子」を人形ぶりで踊っている最中、裃後見に土生玄碩からの文が届き、あろうことか後見がそれを歌右衛門に渡す。踊っている歌右衛門が文を読む場面は面白い。
土生玄碩が切腹させられてはいけないと、歌右衛門は踊りの途中で幕にするが、その後座元や客とのやり取りの時間があるのなら、踊りを少しカットして、さっさと梯子を上って鐘を鳴らしちゃえば普通に幕にできるのではないかと思った。
定式幕の前で歌右衛門が客に事情を話して謝り、客も許してやり、座元の中村勘三郎(松也)も客に許しを請い、きょうは小屋の前に飾ってある酒樽も開けてふるまいますから、戻ってくるのを待ってください、という場面は座元も客も江戸っ子らしくていい。
歌右衛門が座敷にかけつけるシーンで、福助が客席の通路を走る。
座敷で切腹の用意をして待っている土生玄碩。指先を刺してみて痛がったり、歌右衛門を待つ間のジタバタは梅雀がうまいので客が笑う。
歌右衛門は座敷に駆けつけて間に合い、水野の殿様は「総見じゃーっ」と言って、皆で中村座に行くことにする。でも、チケットあるの?
けっこうつっこみどころがある芝居だった。
最初のカーテンコールの後、2度目に役者が出てきたときは、福助と梅雀がハグしたり、大きい松也に風間俊介が飛び上がって抱きついたりして面白かった。
「男の花道」は子供の頃テレビで観たがストーリーは全く覚えていない。
最初、これは関西弁の芝居かと思った。しかし、歌右衛門(福助)の目が直った後、江戸に出てくると、周りが江戸弁になる。だから「ウタエモン」のイントネーションも2通り使われている。
歌右衛門が水野家の曲水の宴で舞うことをかたくなに拒否するシーンを見て、この役は藤十郎にしかできないと思った。
梅雀が一番うまいことに誰も異論はなかろう。松也が観たくて買ったチケットで全く念頭になかったが、初めて生の舞台で観て、うまさに驚いた。
梅雀の役は、歌右衛門の目を治した医師の土生玄碩(はぶ げんせき)。水野家のお抱えとなり、殿様に呼ばれた座敷で、歌右衛門の目を治したのは自分だから、自分が頼めば歌右衛門は座敷に来て踊ってくれると言い切ってしまい、中村座で公演中の歌右衛門に文を書いて呼ぶ破目になってしまう。
歌右衛門が、自分はあくまで芝居小屋に足を運んでくれるお客様相手に芸を見せるので、お座敷に呼ばれて踊ることはたとえ公方様に呼ばれてもしない、というのは現実離れしてないか? 役者にとって劇場はショーウィンドーみたいなもので、本業は金持ちの客の酒席とか間男とかではないのか。それでまとまった金をもらわなければ、特に歌右衛門のように一門を率いていたら、やっていけないのではないか。
土生玄碩のように、金のことを言うと怒るが、自分が治した患者の主義を曲げるようなことを頼んでくる人間は面倒。歌右衛門としては大金を請求されたほうがありがたいはずだ。
歌右衛門が中村座で「伊達娘恋緋鹿子」を人形ぶりで踊っている最中、裃後見に土生玄碩からの文が届き、あろうことか後見がそれを歌右衛門に渡す。踊っている歌右衛門が文を読む場面は面白い。
土生玄碩が切腹させられてはいけないと、歌右衛門は踊りの途中で幕にするが、その後座元や客とのやり取りの時間があるのなら、踊りを少しカットして、さっさと梯子を上って鐘を鳴らしちゃえば普通に幕にできるのではないかと思った。
定式幕の前で歌右衛門が客に事情を話して謝り、客も許してやり、座元の中村勘三郎(松也)も客に許しを請い、きょうは小屋の前に飾ってある酒樽も開けてふるまいますから、戻ってくるのを待ってください、という場面は座元も客も江戸っ子らしくていい。
歌右衛門が座敷にかけつけるシーンで、福助が客席の通路を走る。
座敷で切腹の用意をして待っている土生玄碩。指先を刺してみて痛がったり、歌右衛門を待つ間のジタバタは梅雀がうまいので客が笑う。
歌右衛門は座敷に駆けつけて間に合い、水野の殿様は「総見じゃーっ」と言って、皆で中村座に行くことにする。でも、チケットあるの?
けっこうつっこみどころがある芝居だった。
最初のカーテンコールの後、2度目に役者が出てきたときは、福助と梅雀がハグしたり、大きい松也に風間俊介が飛び上がって抱きついたりして面白かった。
平成二十四年度 巡業 中央コース ― 2012/07/29 03:33
2012年7月28日 鎌倉芸術館 午後12時半開演 1階17列5番
「ご挨拶」
1、2分遅れて行ったら、藤十郎が舞台の真ん中にすわって口上をしていた。
この巡業は近松座三十周年記念ということだ。私ははじめの方の女殺油地獄、心中天網島、百合若大臣を観た。
「夕霧名残の正月」
夕霧が死んだ後、伊左衛門が夕霧の墓参りをして、眠っているときに夕霧が現れ、いっしょに楽しく踊る、「二人椀久」と似たような話の舞踊。
禿役が虎之助。一人で踊るのをはじめて観た。台詞を聞くと、芝居がすきそうな子に思える。お父さんと同じで頭が良さそう。うまい役者になりそうな気がする。
太鼓持役の亀鶴は、このメンバーだと背が高く見える。踊りがうまい。
夕霧役の扇雀は顔が華やか。
藤十郎は、若旦那の伊左衛門の雰囲気にぴったり。幕切れの形も綺麗だった。
「曽根崎心中」
壱太郎のお初、翫雀の徳兵衛。
壱太郎はずいぶん落ち着いた。ひたすら可愛かった梅川のときとは違う。
2人とも下手じゃないが、つまらない。たぶん話としてはそんなに面白くないので、人気があったのは藤十郎のエキセントリックな恋する女に魅力があったからだろう。壱太郎と翫雀は2人ともクールすぎる。最後の心中の幕が長く感じる。
亀鶴は、持ち役(?)の九平次。悪役だが、この一座の中ではスラリとした二枚目。翫雀と役を取り替えたらどうだ。
久右衛門役は嵐橘三郎。この役は我當が良かった。
國矢と芝のぶが出ていて嬉しかった。國矢はイケメンだが、踊りがうまいせいか女形もかなり良い。
「ご挨拶」
1、2分遅れて行ったら、藤十郎が舞台の真ん中にすわって口上をしていた。
この巡業は近松座三十周年記念ということだ。私ははじめの方の女殺油地獄、心中天網島、百合若大臣を観た。
「夕霧名残の正月」
夕霧が死んだ後、伊左衛門が夕霧の墓参りをして、眠っているときに夕霧が現れ、いっしょに楽しく踊る、「二人椀久」と似たような話の舞踊。
禿役が虎之助。一人で踊るのをはじめて観た。台詞を聞くと、芝居がすきそうな子に思える。お父さんと同じで頭が良さそう。うまい役者になりそうな気がする。
太鼓持役の亀鶴は、このメンバーだと背が高く見える。踊りがうまい。
夕霧役の扇雀は顔が華やか。
藤十郎は、若旦那の伊左衛門の雰囲気にぴったり。幕切れの形も綺麗だった。
「曽根崎心中」
壱太郎のお初、翫雀の徳兵衛。
壱太郎はずいぶん落ち着いた。ひたすら可愛かった梅川のときとは違う。
2人とも下手じゃないが、つまらない。たぶん話としてはそんなに面白くないので、人気があったのは藤十郎のエキセントリックな恋する女に魅力があったからだろう。壱太郎と翫雀は2人ともクールすぎる。最後の心中の幕が長く感じる。
亀鶴は、持ち役(?)の九平次。悪役だが、この一座の中ではスラリとした二枚目。翫雀と役を取り替えたらどうだ。
久右衛門役は嵐橘三郎。この役は我當が良かった。
國矢と芝のぶが出ていて嬉しかった。國矢はイケメンだが、踊りがうまいせいか女形もかなり良い。
新潟県民会館 坂東玉三郎 コンサート 世界の旅 ― 2012/07/30 02:10
2012年7月29日 新潟県民会館 午後5時半開演 1階5列目下手
第1部
アラウンドザワールド
鹿児島のときのように、バイオリンの演奏にのって出てきて舞台中央まで歩き一礼してから、後ろに置いてあったマイクをとって歌いだした。
前半が終わって、「ずいぶん緊張もほぐれて、と思ったらもう千秋楽でございます」。そして、「あのアイルランドのまち~」と続く。きょうはとっても声がよく出ていると感じた。
ルート66
玉三郎によると、1950年代、玉三郎が子供の頃、ナットキングコールが人気だった。娘のナタリー・コールは、お父さんの音源とデュエットした曲も出した。お父さんは早死にだったので、大人になってから共演したかったんでしょう、と言う。その曲が出たのが、ちょうど玉三郎のロンドン公演の頃だったそうだ。
ルート66はナットキングコールが歌った曲で、玉三郎の訳詞。地名が次々に出てくるあたり、とても難しいと思うのだが、玉三郎は果敢に挑戦して、自分の世界を形成したのが凄い。
踊り明かそう、君住む街角
60年代、オリンピックの年に封切られたマイフェアレディ。シネマスコープの大画面で見た、という。
最後の「夜の明けるまで」の「まで」の高音を歌うとき、玉三郎は身体の前に左手を広げ、目も大きく見開いていた。
Someone to watch over me、ス・ワンダフル
どちらもガーシュインの作曲で、玉三郎の訳詞。
「王様と私」でアンナ先生の役をやったガートルード・ローレンスがスターになるまでを描いたミュージカル「ザ・スター」の中で、主役のジュリー・アンドリュースが歌った曲。玉三郎は、二十代はじめに聴いた。「まだろくに恋も知らない年齢だったのに、なぜかこの歌が気に入った」(その後、十分に恋を知ったということだなっ)
「ス・ワンダフル 」は、最初O Kay というミュージカルの中で歌われ、最近ではMy One and Only の中でトミー・チューンと、ツイッギーが歌って踊った。水の上のタップダンス。
追憶
同世代の歌手 バーブラ・ストライザンド、と玉三郎は言ったが、同世代というには向こうがちょっと年上すぎる。玉三郎の訳詞。バーブラ・ストライザンドは大歌手だが、芸術家として玉三郎に遜色があるわけではなく、堂々と歌い上げる。
玉三郎はいつも、ここで上着を脱ぐ。
恋のバカンス
アンコールで、自分が歌いそうもないものを、ということで考えていたら先日伊藤エミさんが亡くなった。ザピーナッツは「モスラ~」とか歌って、人気だった。「ザヒットパレード」という番組があり、その中で「魅惑の宵」や「スターダスト」を歌っていた。ああいう人たちはいるのが当たり前と思っていたが、今まで長く生きてきても、ああいうすばらしいコンビは出てこないことを考えると2人が素晴らしかったと思う。岩谷時子作詞、宮川泰作曲。岩谷さんは玉三郎に「(周りから)おまえ達は舶来の歌作ってるね、と言われてるのよ」と言っていたそうだ。伊藤ユミさんは存じ上げないのでお慰めすることもできませんが・・・。追悼というと暗くなるので、楽しい気持ちで歌いますと、最後に曲名を言った。
きょうもいっしょに口を動かした。
あいつが死んだ晩、つめたい部屋の世界地図、夏の終わりのハーモニー
盛り上がった後、しんみりとして、日本の歌が3曲続く。
自分の年になると仲間が死ぬこともある。役者は親の死に目に会えない、と言い聞かされて、この世界に入った。義理の父は見送ったが、実の両親は見送れなかった。自分が三十になった頃「君の瞳は百万ボルト(ママ)」というアルバムが出て、そのなかの「あいつが死んだ晩」が好きだった。
この、日本の歌のところが、歌手玉三郎を最も堪能できるが、特に「あいつが死んだ晩」はいつも素晴らしい。間奏で、バイオリンの演奏を聴きながら後ろ向きに立っている玉三郎の姿も美しい。今夜は歌い方に特に感情がこもっているような気がした。
第2部
白いスーツに白い靴。鹿児島のときと同じ靴だ。
セ・シ・ボン、明日月の上で、水に流して
岩谷時子は越路吹雪のマネージャーでありながら作詞家だった。宝塚の事務員をやっていたときに、18歳の越路が入学してきた。絶対スターになると思ったそうだ。越路が「愛の讃歌」を歌うことになって、訳詞をする人を探しているときに、「あの事務員が物を書く」ということで、訳詞することになった。されが作詞家になったはじめ。シャンソンはほとんど訳詞している。
越路は日生劇場で年に三ヶ月も興行をした大女優。舞台で良いコンディションを保つためにどうしていたか、岩谷さんにきいたら、「こうこうこう」といろいろ教えてくれたが、その中にスポーツのトレーナーに身体をケアしてもらうというのがあって自分もとりいれた。
「明日月の上で」のときだったか、一瞬、喉に痰がからんでいるんじゃないかと思った。その後、何もないように声が出ていたので、さすがに発声練習した人は違うと思った。この後のしゃべりのとき、横を向いて咳払いするような様子が見えたので、やはり少し喉の状態が悪かったのだと思う。
Wave
パリからブラジルに飛んで、ボサノバの曲が続く。
玉三郎は、ボサノバには海と波と夕陽がよく似合う、と言う。「ビバボサノバ」というドキュメンタリーの中で、歌唱法の話を知ったのだそうだ。若者達が海辺の安アパートで毎夜毎夜、自分達の歌を作ろうと練習している。周りの住人に煩いといわれたので、「いかした娘だよ」(と「イパネマの娘」を歌って見せて)のようにささやくような歌い方になった。自分はそうは歌いませんけど・・・と言う玉三郎。
ボサノバは本当は訳詞してはいけないそうだ。著作権に関係するのはいけないが、リサイタルでこっそりやるのはかまわないらしい。
Wave は、「あなたと渚でさまよい~ゆれてゆられて やがて永遠になる そして永遠になる」と、素敵な詞。
いそしぎ
エリザベステーラーが映画にした「いそしぎ」。今夜はボサノバの曲として歌う。
名曲だし、回を重ねるごとに玉三郎の歌の完成度が増している。
ワンノートサンバ~イパネマの娘
「ワンノートサンバ」の詞の中に、DoReMiFaSoLaSiDoという部分が2ヶ所あり、いつもは最初は「ドレミファソラスィド」、2回目は「ドレミファソラティド」と歌っていたが、きょうは両方とも「スィ」だった。「イパネマの娘」のところで演奏者の紹介。
アル・ディラ、ほほにかかる涙
自分がカンツォーネを歌うことになるとは思わなかった、という玉三郎。
きょうはいつもより声を張っているように感じた。特に「アル・ディラ」を歌っているときの声は、知らなかったら誰だかわからないだろう。
ムーンライト・セレナーデ
玉三郎は「セレナード」と言っていたが、「ムーンライトセレネイド」と英語風に歌っているからだろう。私も、時々混同するからわかる。
一度、引っ込んでから客席の拍手に応えて戻ってきた。
What a Wonderful World。
「そして死ぬだろう」という歌詞が心にしみる。
LOVE
きょうはどうかな、と思ったが演奏が始まると前の方から立ち上がり始めたので、待ってましたとばかりに私も立った。全員スタンディングで手拍子。きょうはちょっと身体も動かしてみた。
盛り上がった客席に応えて、きょうは最後の方を2回歌った。玉三郎は上手中央下手にお辞儀をして感謝の気持ちを表した後、下手に消えた。
楽しかった。玉三郎の歌、左手の動き、マイクコードの扱い、後姿、その他すべてを堪能した。玉三郎の訳詞の中では、「アラウンドザワールド」と「Someone to watch over me」が特に気に入った。鼻歌で歌いそう。「あいつが死んだ晩」、「つめたい部屋の世界地図」はこのコンサートで知った曲だが、大好きになった。
次はいつ歌ってくれるんだろう。
第1部
アラウンドザワールド
鹿児島のときのように、バイオリンの演奏にのって出てきて舞台中央まで歩き一礼してから、後ろに置いてあったマイクをとって歌いだした。
前半が終わって、「ずいぶん緊張もほぐれて、と思ったらもう千秋楽でございます」。そして、「あのアイルランドのまち~」と続く。きょうはとっても声がよく出ていると感じた。
ルート66
玉三郎によると、1950年代、玉三郎が子供の頃、ナットキングコールが人気だった。娘のナタリー・コールは、お父さんの音源とデュエットした曲も出した。お父さんは早死にだったので、大人になってから共演したかったんでしょう、と言う。その曲が出たのが、ちょうど玉三郎のロンドン公演の頃だったそうだ。
ルート66はナットキングコールが歌った曲で、玉三郎の訳詞。地名が次々に出てくるあたり、とても難しいと思うのだが、玉三郎は果敢に挑戦して、自分の世界を形成したのが凄い。
踊り明かそう、君住む街角
60年代、オリンピックの年に封切られたマイフェアレディ。シネマスコープの大画面で見た、という。
最後の「夜の明けるまで」の「まで」の高音を歌うとき、玉三郎は身体の前に左手を広げ、目も大きく見開いていた。
Someone to watch over me、ス・ワンダフル
どちらもガーシュインの作曲で、玉三郎の訳詞。
「王様と私」でアンナ先生の役をやったガートルード・ローレンスがスターになるまでを描いたミュージカル「ザ・スター」の中で、主役のジュリー・アンドリュースが歌った曲。玉三郎は、二十代はじめに聴いた。「まだろくに恋も知らない年齢だったのに、なぜかこの歌が気に入った」(その後、十分に恋を知ったということだなっ)
「ス・ワンダフル 」は、最初O Kay というミュージカルの中で歌われ、最近ではMy One and Only の中でトミー・チューンと、ツイッギーが歌って踊った。水の上のタップダンス。
追憶
同世代の歌手 バーブラ・ストライザンド、と玉三郎は言ったが、同世代というには向こうがちょっと年上すぎる。玉三郎の訳詞。バーブラ・ストライザンドは大歌手だが、芸術家として玉三郎に遜色があるわけではなく、堂々と歌い上げる。
玉三郎はいつも、ここで上着を脱ぐ。
恋のバカンス
アンコールで、自分が歌いそうもないものを、ということで考えていたら先日伊藤エミさんが亡くなった。ザピーナッツは「モスラ~」とか歌って、人気だった。「ザヒットパレード」という番組があり、その中で「魅惑の宵」や「スターダスト」を歌っていた。ああいう人たちはいるのが当たり前と思っていたが、今まで長く生きてきても、ああいうすばらしいコンビは出てこないことを考えると2人が素晴らしかったと思う。岩谷時子作詞、宮川泰作曲。岩谷さんは玉三郎に「(周りから)おまえ達は舶来の歌作ってるね、と言われてるのよ」と言っていたそうだ。伊藤ユミさんは存じ上げないのでお慰めすることもできませんが・・・。追悼というと暗くなるので、楽しい気持ちで歌いますと、最後に曲名を言った。
きょうもいっしょに口を動かした。
あいつが死んだ晩、つめたい部屋の世界地図、夏の終わりのハーモニー
盛り上がった後、しんみりとして、日本の歌が3曲続く。
自分の年になると仲間が死ぬこともある。役者は親の死に目に会えない、と言い聞かされて、この世界に入った。義理の父は見送ったが、実の両親は見送れなかった。自分が三十になった頃「君の瞳は百万ボルト(ママ)」というアルバムが出て、そのなかの「あいつが死んだ晩」が好きだった。
この、日本の歌のところが、歌手玉三郎を最も堪能できるが、特に「あいつが死んだ晩」はいつも素晴らしい。間奏で、バイオリンの演奏を聴きながら後ろ向きに立っている玉三郎の姿も美しい。今夜は歌い方に特に感情がこもっているような気がした。
第2部
白いスーツに白い靴。鹿児島のときと同じ靴だ。
セ・シ・ボン、明日月の上で、水に流して
岩谷時子は越路吹雪のマネージャーでありながら作詞家だった。宝塚の事務員をやっていたときに、18歳の越路が入学してきた。絶対スターになると思ったそうだ。越路が「愛の讃歌」を歌うことになって、訳詞をする人を探しているときに、「あの事務員が物を書く」ということで、訳詞することになった。されが作詞家になったはじめ。シャンソンはほとんど訳詞している。
越路は日生劇場で年に三ヶ月も興行をした大女優。舞台で良いコンディションを保つためにどうしていたか、岩谷さんにきいたら、「こうこうこう」といろいろ教えてくれたが、その中にスポーツのトレーナーに身体をケアしてもらうというのがあって自分もとりいれた。
「明日月の上で」のときだったか、一瞬、喉に痰がからんでいるんじゃないかと思った。その後、何もないように声が出ていたので、さすがに発声練習した人は違うと思った。この後のしゃべりのとき、横を向いて咳払いするような様子が見えたので、やはり少し喉の状態が悪かったのだと思う。
Wave
パリからブラジルに飛んで、ボサノバの曲が続く。
玉三郎は、ボサノバには海と波と夕陽がよく似合う、と言う。「ビバボサノバ」というドキュメンタリーの中で、歌唱法の話を知ったのだそうだ。若者達が海辺の安アパートで毎夜毎夜、自分達の歌を作ろうと練習している。周りの住人に煩いといわれたので、「いかした娘だよ」(と「イパネマの娘」を歌って見せて)のようにささやくような歌い方になった。自分はそうは歌いませんけど・・・と言う玉三郎。
ボサノバは本当は訳詞してはいけないそうだ。著作権に関係するのはいけないが、リサイタルでこっそりやるのはかまわないらしい。
Wave は、「あなたと渚でさまよい~ゆれてゆられて やがて永遠になる そして永遠になる」と、素敵な詞。
いそしぎ
エリザベステーラーが映画にした「いそしぎ」。今夜はボサノバの曲として歌う。
名曲だし、回を重ねるごとに玉三郎の歌の完成度が増している。
ワンノートサンバ~イパネマの娘
「ワンノートサンバ」の詞の中に、DoReMiFaSoLaSiDoという部分が2ヶ所あり、いつもは最初は「ドレミファソラスィド」、2回目は「ドレミファソラティド」と歌っていたが、きょうは両方とも「スィ」だった。「イパネマの娘」のところで演奏者の紹介。
アル・ディラ、ほほにかかる涙
自分がカンツォーネを歌うことになるとは思わなかった、という玉三郎。
きょうはいつもより声を張っているように感じた。特に「アル・ディラ」を歌っているときの声は、知らなかったら誰だかわからないだろう。
ムーンライト・セレナーデ
玉三郎は「セレナード」と言っていたが、「ムーンライトセレネイド」と英語風に歌っているからだろう。私も、時々混同するからわかる。
一度、引っ込んでから客席の拍手に応えて戻ってきた。
What a Wonderful World。
「そして死ぬだろう」という歌詞が心にしみる。
LOVE
きょうはどうかな、と思ったが演奏が始まると前の方から立ち上がり始めたので、待ってましたとばかりに私も立った。全員スタンディングで手拍子。きょうはちょっと身体も動かしてみた。
盛り上がった客席に応えて、きょうは最後の方を2回歌った。玉三郎は上手中央下手にお辞儀をして感謝の気持ちを表した後、下手に消えた。
楽しかった。玉三郎の歌、左手の動き、マイクコードの扱い、後姿、その他すべてを堪能した。玉三郎の訳詞の中では、「アラウンドザワールド」と「Someone to watch over me」が特に気に入った。鼻歌で歌いそう。「あいつが死んだ晩」、「つめたい部屋の世界地図」はこのコンサートで知った曲だが、大好きになった。
次はいつ歌ってくれるんだろう。
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