獅子虎傳阿吽堂 VOL. 6 ― 2011/11/28 22:22
7月の「伝統芸能の今」は土壇場で仕事が入って行けなくなったので、三兄弟を見るのは久しぶり。きょうは、萬斎と染五郎という「2大スター」がゲストのせいか、1階の後ろ半分の脇に、立ち見客までいた。そんな中で、ものすごく見やすい席で見ることができたのは三響会さまのおかげです。
壱 歌舞伎囃子『「勧進帳」より延年ノ舞・滝流し』
歌舞伎囃子なので、広忠は出ない。大鼓は、田中傳八郎。歌舞伎用の、黄色っぽい皮の大鼓だ。笛は福原寛。そして、 三味線が今藤長龍郎、龍市郎、杵屋勝正雄。
弐 一調『八島 後』
萬斎と広忠。最初に南座で観た三響会のときにも聴いた。きのう愛之助が踊った「屋島」にも、これにも「思いぞいずる壇ノ浦」という言葉が出る。
久しぶりに聴く広忠の大鼓の音が心地よかった。
参 レクチャー
前に張り出した正方形の舞台に椅子が五脚置かれ、二と三に分かれているようだった。先に三兄弟が出てきて自己紹介した後、萬斎と染五郎が出てきた。二人ともきれいな男だが、染五郎は背が高くて等身が違い、色男だ。染五郎が好きな広忠は「やっぱり近くでみるとかっこいいですね」と言っていた。
この後の演目「二人三番叟」に関連して、三番叟についての話題が多かった。操り三番叟の中で、三番叟が後見の引く糸に操られているように見えるシーンは、二人とも音楽に合わせているのだと思っていたが、染五郎の話では、後見が糸を引く動きをする前に、三番叟の後ろで足を一歩踏み入れてトンと音を出すのが合図で、伏せている三番叟が腕を動かすという。染五郎は、三番叟が操られているように歩いてくるところとか、片足を滑らして足を開いて閉じる動きなどを見せてくれた。足の動きがよく見える席だったので、よくわかった。操り三番叟のときは、足が見えるように普段より短か目に袴をはくのだそうだ。「ムーンウォーク風ですね」と言われ、ムーンウォークもして見せた。
四 三響會版『二人三番叟』
レクチャーのときに傳次郎が、この劇場の照明のすばらしさに触れていたが、それを意識して観ると、確かに照明が効果的に使われている。
お囃子、三味線、長唄は舞台後方にいる。
最初、萬斎が下手、染五郎が上手に控えていて、その二人のいる場所だけが明るくなっている。萬斎が先に踊った。萬斎の三番叟を観るのは四回目だが、今回が一番良かった。近すぎず遠すぎずの、一番条件の良い席で観たからそう感じるのかもしれないが。気が入っていて、強さがあった。
萬斎が下手に戻った後、染五郎が踊りだした。レクチャーのときに、初めて二人で踊りを教わりに行ったとき、振り付けの勘十郎が全部踊って見せてくれて拍手した、という話をしていた。やはり勘十郎の振り付けなのだ。「大入」という字を書くように手を動かしているらしい。
鈴の段の前に、二人で舞台で鈴を手にとった。染五郎は上手に戻り、鈴と扇をもって座った。先に萬斎が踊り出し、途中から染五郎も正方形の舞台に出てきて踊りだした。神事である能の三番叟の純粋で素朴なな動きと、娯楽用にアレンジされた歌舞伎の三番叟の華やかな動きが、ひとつの舞台の上に見えた。
終わった一瞬、ライトが落ちて二人の姿がうっすら見える程度の暗さになり、次の瞬間真っ暗になった。
南座のときは下手と上手で踊っている別々の踊りを見たという印象だったが、今回はガチンコ勝負という感じだった。狭い空間と照明をうまく使って、一体感のある完成度の高い舞台になっていた。
亀井忠雄の会 ― 2011/07/02 05:01
「三番叟」
萬斎の三番叟を観るのは3度目。しかし能楽堂で観るのは初めてだ。萬斎はなぜか口ひげをたくわえていた。それでもやっぱり綺麗な顔立ち、華奢な体つきもあって、後でお花畑ができそうな三番叟だった。
お囃子は大鼓が広忠、笛が一噌幸弘。暑いときに聞く大鼓のカーンという音は涼しげで良い。お囃子が凄く良かった。
能「関寺小町」
115分の大曲。 亀井忠雄が大鼓で、広忠は後見。小鼓は大倉源次郎。地謡が錚々たる顔ぶれ。私が確認できたのは、坂口貴信、観世喜正、梅若玄祥。
シテの観世清和の老女が素晴らしかった。子方で三郎太が出ていた。
この後、20分休憩。
「連調」
大鼓の人がたくさんいて、小鼓は1人。こういうの、嫌いじゃないぞ、と聴いていたら、あっという間に終わってしまった。
一調「笠之段」、「花筺」
「石橋」
これも、忠雄が大鼓で、広忠が後見だった。
牡丹の木がついた台を運んできて、舞台正面前方に並べる。歌舞伎の牡丹より大きい花。そのわりに、なんかクシャッとしている。歌舞伎だと、台と木は別々に運んで来るが、能の場合は、はじめから台についている。赤と白も、歌舞伎のように対角に置くのではなく、両方とも舞台際に近い方にある。
白獅子が2頭出てきて、次に赤獅子が2頭。2組の親子か?
歌舞伎の連獅子は好きでも嫌いでもないが、能の獅子は最高。歌舞伎より面白い。面をつけているせいでフィギュアのようで、人間離れしている。
お囃子の、「キャー」という叫びにのって、獅子が上体を反り気味に顔を上げる所作が良い。ライオンが吠えてる姿だろう。かっこいい。
もうひとつ、南座の三響会で、能と歌舞伎競演の石橋のときに
観世喜正が見せてくれた、クルッと半回転。 この二つの動きが、繰り返し出る。
幽玄の世界というより、子供に見せたら喜びそうなショウに見えた。
能を知る会 鎌倉公演 ― 2011/05/02 22:46
鎌倉能舞台は長谷駅から歩いて七、八分。案内表示や看板があるので迷うことはないが、民家に埋没している。 自由席で、行ったときはかなり席が埋まっていた。正面後ろの座敷の座イスの席が空いていたが上がっていく通路があるわけでもなく、その前のイス席を踏ましてもらって席についた。舞台は、私が今まで観た能楽堂と違って客席より階段一段分くらいしか高くなく、客席に近い感じがした。
最初に舞台に正座して挨拶された方(中森貫太さん?)によると、震災の後、お客さんからの電話はパッタリ止まってしまい、中止にした方が赤字にならないのではと思ったほどだそうだが、きょうの客席はぎゅうぎゅう詰めと言っても良いほど満席だった。鎌倉も一時はずいぶん観光客が減ってしまったようで、渡されたチラシの中に「鎌倉を元気にしよう!キャンペーン」というタイトルのが1枚入っていて、チケットの半券を見せると割引が受けられたりドリンクサービスが受けられたりする店が紹介されていた。来たついでにお金使って帰ってほしいような話だった。
きょうの演目は狂言の「柿山伏」と能「吉野静」。その前にけっこう長い解説がつき、カルチャーセンターのようだった。尾島政雄さんの「静御前」についての話は、なかなか面白かった。頼朝に追われた義経一行は吉野を越えて熊野に入り、その後は、山伏のネットワークで逃げて行った。静は吉野で舞を舞って追手の気を引き、義経が逃げるのを助けた。そしてつかまり、頼朝のいる鎌倉に連行された。ここ鎌倉でそういう話を聞くのも面白い。その後は、子供の頃からよく知っている、男の子が生まれて殺され、静は鶴岡八幡宮で「しずやしず~」と舞う話になる。静が踊ったのは、史実では舞殿ではなく、本殿の方だったそうだ。平家物語には静御前についての記述はほんの一か所しかなく、細かく記述しているは源平盛衰記、義経記だそうだ。静がどこで死んだかについては3つの説があるそうだが、どの説でも、死んだ年は21。
狂言の「柿山伏」は、柿をとろうとして木に登った山伏が人にみつかり、その人が「あれはカラスか」「いや、サルか?」と言うのに応じて「コー、コー」と啼いたりサルのように尻を掻いたりするのが面白い。
能「吉野静」は、大鼓が亀井広忠。シテは中森貫太。
佐藤忠信の衣装や雰囲気が歌舞伎とまるで違う。シテの静御前の舞の中には「しずやしず~」の歌も入っていて親しみやすかったが、いつも通り眠くなった。
終わったのは十一時四十分頃。衣装を着替えた後、客の質問に答えるコーナーがあるということだったが、それは見なかった。
亀井広忠プロデュース 能楽舞台 略式五番立 神・男・女・狂・鬼 ― 2010/12/10 23:03
能の見どころや聴きどころを抜粋して上演する「略式」。
神 素囃子 「神楽~急々之舞」
笛 杉信太郎、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井広忠、太鼓 大川典良
神楽というのはそういうものなのか、今まで聞いた素囃子のような緊張感がなく、ちょっとゆるめ(?)の印象。舞が入るとしっくりするのかもしれない。
これの後、広忠が出てきて、演目の解説はパンフレットにまかせるとして、簡単に各演目を紹介した。
男 舞囃子「清経」 シテ 坂口貴信
坂口貴信は、夏の「伝統芸能の今」で気に入った人。あの時は謡だけだったが、きょうは舞いも見せてくれて、堪能した。
女 一調 「芭蕉」 謡 山崎正道 大鼓 亀井忠雄
狂 居囃子・舞囃子 「融 舞返」 シテ 角当直隆
これも、大鼓は亀井忠雄。
鬼 半能 「石橋 大獅子」 シテ(白獅子) 片山清司 ツレ(赤獅子)
これの大鼓は亀井広忠。歌舞伎の連獅子はしょっちゅう見てるような気がするが、能の「石橋」を見るのははじめてだ。前に三響会で、歌舞伎と能の獅子が一つの舞台で踊るのを見たことはあるが。面をつけるせいか、能の獅子の方がキャラクターぽいというか、フィギュアのような感じがする。アニメが好きな人は、絶対こちらの方が好きだろうと思う。
勤め帰りだし、直前に夕食をとったので、絶対に寝るだろうと思って、確かに少しウトウトしたところはあったのだが、予想よりも面白くて目をパッチリ開いてみてるときが多かった。
逸青会 ― 2010/10/23 21:33
狂言の茂山逸平と、舞踊の尾上青楓の会。
今回は尾上流の名取の同僚にチケットをとってもらった。能楽堂に入ったら、チケットに書いてある席に別の人が座っていて、会場係も見つからないし、同僚も見つからないので、とりあえず一番後ろの空席に座って見た。舞台からはやや遠いが、橋懸りのすぐ横なので、歌舞伎でいうと花横の気分で、悪くなかった。
舞踊「賤機帯(しずはたおび)」
狂女が青楓、渡し守の舟長が菊紫郎。赤ん坊を抱いた狂女で隅田川を連想したが、やはり隅田川を題材にしたものだそうだ。
次は狂言の「濯ぎ川」
最初の舞踊との間には休憩がなく、席はそのまま。
逸平が入り婿で、たすき掛けをして川で洗濯をする。必殺の原型みたいに、怖い奥さんや「婿殿」と言っていびる姑も出てくる。婿は、きたない物を洗濯させる、と憤慨しているが、男を女に置き換えれば、女は普通にやらされてきたことなので、男だからと言って何をそんなに怒る必要があるのか。 用事を次々に言いつけられるので、すべきことを全て書きだし、それ以外のことはやらなくても良い、という約束になる。ここで、「ベニスの商人」的展開になるのだろう、と見当がつく。書いているときも「一番鶏が鳴いたら起き、誰よりも遅く寝る」ことに憤慨しているが、農家の嫁というのは、そういうのをやらされてたわけじゃないか、と少し鼻白んだ。ジャブジャブ、ゴシゴシ、という擬音語がそんなに大昔からあったのか、と驚いたが、昭和28年初演の新作だそうだ。 新作だから、逆に古さを感じるのだと思う。
この後、休憩。同僚が来て、やっと本来の席に座った。私の席は脇正面だったが、私の席に座っていた人の本来の席は正面だった。
「茶壷」
逸平と青楓の共演で、青楓の茶壷を自分のものだと言い張る逸平。青楓の、あっけにとられたような顔が良い。どちらの言い分が正しいか判断しようとする第三者が、菊紫郎。 菊紫郎は踊りはもちろんうまいが、台詞も歌舞伎役者のようにうまい人だ。 逸平は、自分の正当性を主張するときに、青楓を真似する。言葉もそうだが、青楓の踊りを逸平が真似し、しかも同時に踊る、というのが面白い。青楓はきちんとした日本舞踊で、逸平の方はその特徴をとらえて真似する、という趣向。もちろんアドリブでできるわけないので、振りが決まってるのだろうが、適当に真似した、なんとなく似ている動き、というのはとても面白い。
珠響(たまゆら) 2010 8/28 サントリーホール ― 2010/08/28 23:16
「オープニング」はヒューマンビートボックスのMALと英哲風雲の会のはせみきたの共演だった。
本当は今回は外国からスペシャルゲストが来るという話だったがそれは実現しなかったということで、最初に傳次郎がスーツ姿で現れて謝った。私は傳次郎の方が好きなので外国人のゲストはどうでも良い。
「ピアノ 稲本響」
最初は「魔性の鍵盤」。その後、トーク。大阪の堺出身で、大阪のおばちゃんの先生にピアノを習った話だった。間違えると、鍵盤の蓋を閉める。手をどけたら、「どうしてどけるの!」と怒る。次に閉めようとした時に、鍵盤の上に手を置いたままにしていたら「どうしてどけないの」と怒る。
次は「新曲」。目をつぶって聴いていると瞼の裏に森の自然が浮かんでくる。その後は、またMALが登場し、稲本は、舞台の前方でおもちゃのピアノを弾いた後、それを持って客席の真ん中の通路に行き、そこで弾いていた。
「ギター 村治佳織」
去年は赤いドレスだったが、今年は着物風ドレス。パンフレットの中の写真は白いドレスの上に着物柄の上着を着ているようだが、今回は黒いドレスと組み合わせている。
最初はショパンの夜想曲。次は、エリック・クラプトンが幼い息子を亡くしたときに作った「ティアーズ・イン・ヘヴン」。
その後は尺八の藤原道山と共演のピアソラの曲「Night Club 1960」。
最後はディアンスの「フォーコ」。
ギターの演奏が終ったら、洋服姿の亀治郎が出て来た。「洋のチームが終って、後半は僕たち和のチームです」と言った。
ここで、休憩。
「尺八 藤原道山」
山本邦山の「甲乙」、武満徹の「小さな空」。
「和太鼓 英哲風雲の会」
今回は去年より和太鼓の数が少ないから大丈夫かと思ったが、最後の方はやはり大音響で逃げたくなった。
最後は、三兄弟プラス笛の福原寛のお囃子で、亀治郎の舞踊「獅子」。
普段と違い囃子方が前方に座った。イヨーッ、オー、ワッと三兄弟の咆哮が気持ち良かった。私は、この曲が好きだから満足なのだが、舞踊としては少し短くて中途半端だったかもしれない。
「フィナーレ」
村治佳織と藤原道山の2人はパイプオルガンの前で共演。上手前方で、傳次郎が、鉦(?)と太鼓で、英哲風雲の会の一人とセッション。その後で、稲本響が「剣の舞」を弾き、イケメンの弟の渡がクラリネットで合わせる。その間から傳左衛門が顔を出して鼓で合わせる。これは、なかなかの見ものだった。
今までの珠響は、別の分野のアーティストを単に並べたにすぎないものだったが、今年はアーティスト同士のコラボがあり、それがとても良かった。レベルが1つ上がったと思う。三響会は、歌舞伎と能のコラボを考える前に、打楽器奏者としての自分たちの可能性をもっと追究すべきではないかとも思った。
出演者が揃ったところに、獅子のこしらえのままの亀治郎が出て来て、当然のように真ん中に出て来て挨拶する。その得意気な顔が可愛くて、笑いたくなる。お辞儀をして、サッと最初に引き上げる。客席の求めに応じて、もう一度皆がカーテンコールに出て来た。亀治郎の顔を見ると、また笑いたくなる。獅子の拵えでも、顔が亀治郎のままだ。
伝統芸能の今 ― 2010/07/24 03:59
最初の演目は大好きな「道成寺組曲」。しかし、今回は素囃子ではなく舞囃子。謡と踊りがついた。三兄弟の掛け声を聞くのは気持ちが良かった。謡の坂口貴信は初めの方は暗い舞台の正面後方にうっすらと背後霊のように見えていたが、声がさわやかで力強く、よく見えるようになったら顔もなかなか端正だった。踊りの亀治郎が前にいても声は遮られずに聞こえていた。亀治郎は下手から、座っている囃子方の間を縫うように動いていた。自分の好みとしては素囃子の方が良かった。
次は「座談会」。上手と下手に分かれて床几に座っていて、雰囲気は勘太郎と七之助の公演の「芸談」風。しかし、内容は最初に広忠がいったように「演説会」だった。今回も前回同様「がんの子供を守る会」のためのチャリティー公演なので、一人一人、この基金が必要な理由や、会の活動に対する思いを語った。亀治郎はタテ板に水のしゃべりで、、「選挙に出るなよ」と心配になるほどだった。大河ドラマに出演していた時、銀座で赤い羽根の募金をしたら、道行く人が一斉に目をそらすので頭に来た話が面白かった。4人の話の後、「がんの子供を守る会」の人が出て来て話をした。この人は去年紀尾井ホールで話をされた時は書いたものを読んでいたが、今回は何も見ないで話をしていた。去年は、三兄弟の雰囲気に亀治郎が馴染んでないと思ったが、今年は、既に何回も公演をやって今日が千秋楽のせいか、まとまった雰囲気だった。
昼の部と夜の部の休憩時間にそれぞれ15枚、広忠が使用した大鼓の皮に皆のサインが入ったものを1枚20000円で売る、と言っていたが、さばけただろうか。
次は一調「屋島」。広忠の大鼓と坂口貴信の謡。きょうはこれが一番良かった。力強く、すっきりしている。
最後は舞踊「藤娘」。亀治郎は藤姐さんという感じ。顔から受ける印象は雀右衛門系だが、女らしさが不足している。技術的には高いが、ギスギスした女という印象を受ける。うまいとは言えても、綺麗とは言えない藤娘だった。
第二回 藝夢 (げいむ) ― 2010/05/20 22:21
能楽師の梅若玄祥と、息子の藤間勘十郎主催の催しである。勘十郎の「鷺娘」を楽しみに行った。
びっくりしたのは、私か座った中正面席がスカスカだったこと。私の列は12席に3人しか座ってないし、目の前の4席連続で空いていた。それなのに、正面席は満席。着物の人がほとんどで、休憩時間に気づいたのだがスーツ姿の富十郎もいた。中正面には某有名評論家がいた。
仕舞「藤戸」は10分。
次が「鷺娘」で23分。素踊り。帝国ホテルのトークショーの時に玉三郎が、「鷺娘」は先代の勘十郎が若き日の紫さんのために振りつけたものだと言っていたので、祖父が祖母のために振りつけたものを孫が踊るのかと期待したが、パンフレットによると、別の演出だそうだ。後半の傷を負った鷺が苦しみながら息絶えるところがない。細かい振付はわからないが、袖を羽のように動かす所作は同じ。勘十郎は正確に踊っていると思うが、体型がころっとしているので、鷺までは行かず、千鳥くらい。
この後、15分の休憩。 目当ての鷺娘は終わったので、後半は気楽に、と思っていたら、次の新作能「茨木童子」が、なんと70分。これが本日のメインイベントだったわけか。
久しぶりの亀井広忠の大鼓と掛け声が嬉しかった。シテは、叔母と茨木役の観世喜正。渡辺綱役の福王和幸はとても背が高い。
花柳流の襲名披露舞踊会で観た「茨木」と話は同じなのでわかりやすかったし、台詞も非常にわかりやすかった。襲名披露舞踊会のときは、叔母は、門を開けてもらうために幼いころの綱を可愛がった様子を踊ったのだが、今回の能では、それはなかったようだ。舞踊では、綱の館の中での叔母の踊りが゜、左腕を切られた鬼なので片腕だけ動かして踊るもので、一番の見ものだった。今回も、シテの一番の見せどころだったと思うし、長く舞っていたが、いつも「シテが出てくると眠ってしまう」自分の癖が出て、うつらうつらしてしまった。叔母が鬼の腕を持って橋懸りを逃げるところは、動く歩道を移動するような上下動のないツツーとした能の動きが、鬼神らしくてぴったりだった。
続けて、最後の番組は清元・筝曲「花月」。三味線と琴が出て来て、それも奏者が女の人で、不思議な気がした。生き別れの親子の再開の話で、梅若玄祥は能楽師らしく台詞を言い、勘十郎の方は歌舞伎風に台詞を言う。パンフレットの勘十郎の挨拶によると、彼が子供の頃に、父の梅若が、いつか共演したいと勘十郎の母に語っていたものだそうだ。子供が父の前でいろいろ踊って見せるという話で、勘十郎の踊りがたっぷり見られて私は大満足だった。そばで座って見ている父役の梅若は、嬉しそうな顔で勘十郎の方をじっと見ていれば良いのにと思ったが、能はそういうものではないのだろうか。
獅子虎傳阿吽堂 vol 5 とスペシャルトークセッション ― 2010/02/02 00:02
客席に入ったら、きょうは舞台が正方形。ここは時によって舞台の形が変わるのだが、正方形は初めて見た。左右にできた空間に、脇正面のような席ができていた。
レクチャー
舞台に残っていた観世喜正による「高砂」の歌唱指導。
舞台の後ろのスクリーンに「高砂や~」の歌詞が出て、観世喜正が高砂の松と住吉の松が相生の松で・・・・と説明。半世紀以上生きて来て、この「高砂」が地名だということを初めて知った。「高砂や~」は、何か「やれめでたい」みたいな意味だとしか思っていなかった。観世喜正は話がうまくて面白い。この人の能で寝たことは何回もあるが、講演会だったら絶対眠らない自信がある。
大太鼓 林英哲、笛 竹井誠
シテ 観世喜正、笛 栗林祐輔、小鼓 田邉恭資、大鼓 亀井広忠、太鼓 林雄一郎
立方 片岡愛之助、小鼓 田中傳左衛門、太鼓 田中傳次郎、笛 福原寛、長唄 杵屋利光、三味線 今藤長龍郎
「スペシャルトークセッション」
終演後、次の回との間にトークセッションがあった。本当はみずほプレミアムクラブの会員様用だが三響会倶楽部の会員も特別に2階の自由席で見ることができた。
獅子虎傳阿吽堂 夜の部
午後7時開演の夜の部は、昼の部とトークセッションを踏まえて、段どりの悪いところを直したり、間違っていたことの訂正などをしていた。
「老松」は上手から見ると、最後に扇を開いて決まるところが下手から見るより綺麗に見えるような気がした。
亀井広忠プロデュース能楽囃子舞台 「三番叟」 ― 2009/10/07 23:18
2006年10月6日 日経ホール 午後7時開演 О列3番
はじめて日経ホールに行った。昔からあったところに自分が初めて行くのだと思いこんでいたが、ここは4月に開場したのだそうだ。
傾斜があって前の人の頭があまり邪魔にならなくて、椅子が立派なのは最近の劇場のトレンドか。その上にここは、前の椅子の背から、テーブルを引っ張り出せる。まるで桟敷みたい楽ちん~と喜んでいたら、「通行の邪魔になるのでテーブルはお使いにならないように」というアナウンスがあった。あれは講演会のようなものの時しか使えないのか。
きょうは広忠の大鼓で萬斎の三番叟を観るつもりでいたが、それは昨日で、きょうは両方とも、その親だった。不意をつかれた。
三番叟ではない音が聞こえてきて、アレと思ったが、広忠によれば、これは「おしらべ」というものだそうだ。知らなかった。
「三番叟」
三番叟 野村万作、千歳 野村萬斎
笛 杉信太朗、小鼓頭取 大蔵源次郎、脇鼓 古賀裕己、田邉恭資、大鼓 亀井忠雄
広忠は後見だった。
亀井忠雄は息子よりも声がかん高く、咆哮というより悲鳴のようだった。萬斎は遠くから見ても小綺麗で、とても40すぎのオッサンには見えない。萬歳の三番叟は綺麗すぎて好みに合わないが、若々しい雰囲気が千歳にはぴったりだ。狂言にもやっぱり「ニン」というものがあるのか。
野村万作の三番叟は、70代という年齢もあって、動きに萬斎のような正確さはない。その年期の入り具合が有難味だ。
この後、休憩の後に広忠がMCで出てきた。
休憩中のロビーで、普段着姿の傳左衛門、傳次郎が入ってきたのを見かけた。真中の通路より少し後ろの席に着いたようだった。佐太郎さんもいたようで、広忠は彼らを意識しながら話していた。
プログラムにはさみこんであったお知らせの中に、東京芸術劇場でやる「歌舞伎の未来」というのがあった。千之助と傳左衛門が中心のようで、ちらしには書いてないけれども仁左衛門が出るのも決まったそうた゜。11/23にやるので、「いいにざの日、と覚えてください」と言っていた。
舞囃子「猩々乱」
シテ 観世銕之丞、笛 杉信太朗、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井広忠 太鼓 助川治
観世銕之丞はふつうの袴姿。謡の声が良い。猩々の動きを表す所作よりも普通の能の動きが良かった。
狂言 「末廣かり」
シテ 野村萬斎、アド 野村万之介、石田幸雄 笛 杉信太朗、小鼓 田邊恭資、大鼓 亀井広忠、太鼓 助川治
狂言は言葉が現代に近くてわかり易いと思いながら観ているわりに、最初の方は、太郎冠者は「すえひろがり」という抽象的なものを買ってくるように主人に言いつけられたんだと思っていた。「末廣かり」とは扇のことなのだ。
萬斎は、このシテも良かった。 きょうの萬斎は今まで観た中で一番良かった。
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